混じり
その後は誰一人として絡んでくるものはおらずに放課後となった。今晩は慧理と駅前で会う約束をしているので足早に家に帰る。
午後19時に現地集合だ。魔法少女の足であれば10分とかからないが余裕を持って少し早めに家を出ることにした。
夕食を済ませて自室に入る。部屋の近くに家族がいない事を確認した後に魔法少女へと変身をする。
「そんで、変わり身を作るんだっけ」
やり方は簡単。自分自身を想像して魔力で念じて作り出すだけだ。聞いた当初はちんぷんかんぷんだったが、同化が進んだ影響でそのやり方は理解できた。魔法少女関連の基礎はほぼ熟知したと言っても過言ではないだろう。
両の掌を虚空に向けてゆっくりと魔力の放出をする。
何もなかった空間に淡い光がぽつぽつと溢れ出し、光の糸を紡いだ。糸は人の形を編み、贖幹人そっくりの魔力人形を作り出した。
「こんなものかな。俺は出かけてくるから後は頼んだよ」
「任せとけ」
人形は元気に返事をし、窓から飛び出たゴールドラッシュを見送った後に鍵を閉めた。
*
「よ、昨日ぶりだな」
「あら、思ったよりはやいわね。変わり身は作れたの?」
「問題なく作れたさ、少し手こずるかと思ったけどね」
「それなら良かった。さてと、今日のターゲットについてだけど...」
「任せてよ、昨日みたいな失態は犯さない。俺はこれ以上僕の顔に泥を塗る気はないよ」
(...昨日とは雰囲気が変わってる。別人...というか元のゴールドラッシュに近づいている)
昨晩の夢をキッカケに更に同化が進んだ幹人と香織の人格はゴールドラッシュ、香織の姿になると言動が元の性質に引っ張られるようになっていた。現にブルーレインに対する受け答えが昨日とは少し異なっていた。
(同化が進んだ?...だから変わり身がすんなり行ったのかしら)
割とざっくばらんに教えたつもりなので上手く行かないと考えていたが同化が進んでいるのならブルーレインも合点がつく。金剛寺香織であれば変わり身の方法を契約の時に刻まれているので間違えようがないのだ。
一先ずは同化の事に関しては保留にして、本題に入る事にした。
「今日の目標は『スパーク』。私たちが昨日鳥人と戦っている間に産まれた怪人よ」
「...そんなに早く産まれた奴を捕捉できるの?」
「ええ、『情報屋』が仕事してくれたわ。時刻としては深夜3時頃。解散した後に生み出されたみたい。発生箇所は南地区、ネオン街の路地周辺で感電死させてるみたいだから理性は強くないと思う」
「なるほど、じゃあ鳥よりは見つけやすいってわけね」
基本的に理性の無い怪人は行き当たりばったりで行動をする為に魔法少女を避けるような習性はないが、今回は少し事情が違う。
「ま、そうなる訳だけど...まだ目撃情報がそこだけだから地域の特定ができてないのよね。特にネオン街なんて遊びに回る場所だし深夜帯ってなったら住処や職場からかけ離れてるのよ。もう一度行動を取ってくれれば割り出せるんだけどね」
「じゃあそいつのテリトリーを探す所から始めるってわけか」
「正解。だから今日は二手に別れる。私は東から、ゴールドラッシュは西側から街を徘徊して見つけるわよ。それが今日の目標よ」




