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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
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「レイモンド...だったけか。居座る気満々だな」


「ほのほおりはネ」


 牛丼を食いながら返事をするその姿は予想外だった。爽やかイケメンなイメージがあったのでこんなにがっついて食事をするような人柄だとは思わなかった。

 サイズもかなり大きく、通常の2倍の量があるギガ盛りだ。それを美味しそうに頬張っていく。普段からこの量の食事を摂取しているのなら驚異的な胃袋だと感心する。


「何か話でもあるのか...?」


 流石に失礼だと思ったのか良く咀嚼をして嚥下する。結構な量を口に含んでいたはずだが、食べるのも早いみたいだ。大食い大会にも出ても上位に入賞できそうだ。


「sorry、チョット話があってね。でもツイツイ食事に夢中になってしまったよ。僕は食事が好きでね、箸が止まらないのさ」


「まあ、見てりゃわかるよ。話があるなら食べ終わってから聞くよ」


「thank you。ご飯は冷えルと美味しくないからね」

 

 食事を語るレイモンドは最高の笑顔であり、勢いよく牛丼を口に流し込み始めた。一口一口幸せを噛み締めるように飲み込み、先に食べ始めていた幹人よりも早く食べ終わった。


(量も倍くらいあった筈なのに早すぎるだろ)


 思わずツッコミたくなったが心の中に留めておいた。


「もう少し食べるのに時間かかるから待ってくれないかな」


「okeydokey.待ってるよ。僕はちょっと食事ガ早いからね、この事態には慣れてる」


 結構な頻度で先に食べ終わるようだ。普段からこの量と早さで食事する姿を思い浮かべて苦笑いする。

 レイモンドより2、3分程遅れて食事を終える。


「ご馳走様でした」


「じゃ、早速本題に入ってもイイかな」


 先程までとは一転して真面目な表情に変わるレイモンド。積極的に関わった事は無いが遠方から見ていても今の彼より真剣な表情をしていることはなかった。

 無言で首肯するともう少し距離を詰めてきて囁くように質問をしてきた。


「君、生徒会長と一緒に襲われたんだってね」


「あ、あぁ。そうだけど」


 ストレートにその話題をぶつけてくるとは思わなかった。箝口令が敷かれたように誰もが口に出さずにしてきた言葉を直接聞いてくる。その手の話題が来るのを嫌がっていたが、誰も口に出さなかった為に油断していた。

 その手のゴシップが好きなのかと訝しんでしまう。


「もしかして...人じゃなくて怪物(クリーチャー)に襲わレたりしたんじゃない」


「クリーチャー..?」


「YES.狼男(ウェアウルフ)幽霊(ゴースト)蜥蜴男(リザードマン)。そうイッタ謂わゆる化物に遭遇したか聞いているんだ」


(...どう答えるべきなんだ)


 レイモンドが言いたいのは怪人のことだろう。魔法少女も怪人も隠密に行動をする為に世間一般にバレる事は少ない。

 しかし、絶対に秘匿できるものではなく怪人と魔法少女の戦いを遠目に見てしまうケースがある。

 また、生き延びた被害者で記憶を語ってしまうなど漏れる抜け道は幾つかある。極力減らす努力をしても完璧は不可能なのだ。近年増えつつある迷宮入りの殺人事件もあり、ネットなどでそれらを結びつけるような人々もいる。

 噂になり始めてるのだ。

 魔法少女と怪人の戦いが。


 実際今回の事件に関しても幹人は怪人の事を証言している。警察からはパニックにより記憶の混濁が見れると処理はされたが、ニュースでは犯人の証拠が見つからないと他の殺人事件と同様の扱いを受けていた。


 つまり、レイモンドはそれらの情報から怪人による被害を受けたのかという知的好奇心を満たそうとしていると幹人は認識した。


「実は詳しく覚えてないんだ...あの時の事を思い出せない。だから期待に添えなくてすまん」


 故にはぐらかすしかなかった。この内容であれば深くは踏み込んで来れまい。


「sorry.嫌なことを思い出させちゃったみたいダね。今度埋め合わせさせてもらうよ。貴重な時間をアリガト」


 深々と頭を下げてアッサリとその場を去っていった。


「気にしないでいいよ、じゃあその時はお願いするよ。またね」



「トラウマによって記憶に蓋をしているのか...もしくは覚えていて口に出さないか...」


 人の通らぬ校舎裏。そこにレイモンドは一人佇み、メモを片手にブツブツと独り言を呟いている。


「金剛寺香織...彼女は魔法少女と断定して間違いナイでしょう。問題は彼女のドッペルゲンガーですかね」


 金剛寺香織が死んで数日が経ったが、そっくりな容姿を持った人間が死後に目撃をされている。

 あの容姿を持つものは近辺ではまずいない。

 1回目は事件翌日の昼間。以降は夜中に数回の目撃情報があり、幽霊だのドッペルゲンガーだの噂が飛び交っているのだ。


「あの量の血液を流して生きていられる人間はイマせん。...()()()()()或いは...生きている事を知られたくナイ」


 考えれば考える程に今回の件は不可解だと、状況が示している。気がつけば休み時間が終わりに差し掛かり予鈴が鳴る。

 レイモンドは慌ててメモ帳を閉じて校舎へと走って向かっていった。


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