エニス
香織は帰宅後に両親に早めに寝る事を伝え、約束の時刻まで部屋でおとなしく待っていることにした。部活によって体がかなり疲弊しているので待ち時間が何よりつらかった。
(ご飯も食べてお風呂も入った。本当に眠っちゃいそう...)
うつらうつらとしているとベランダに続く窓ガラスから静寂を打ち破るノックが鳴り響いた。慌てて立ち上がりカーテンを覗くと浅紫色の髪色をした少女が立っていた。容姿は整っており、何処か妖艶さを感じられる大人びたオーラを発している。
「綺麗...」
無意識に呟いていた。
雑誌のモデルといっても差し支えがない者が目の前にいたのだ。褒め言葉が自然と出てくるのは道理だ。
すっかり魅入られた香織に「ありがとう」と言葉をかけてようやく正気に戻る。すぐさま窓の鍵を開けて外にいた少女と初対面する。
三日月を象ったイヤリングをつけた浅紫色の少女は小さな唇をゆっくりと開いた。
「はじめまして、私は魔法少女エニス。今回限り、貴方に魔法少女について教える為にここまできた」
先程の言葉もだが、言葉に抑揚がなかった。
無機質に機械的に喋る少女は不気味に思えた。少なくともファーストコンタクトとして最悪の部類だ。
そこに感情が全くこもってないのだ。
だが、顔は読み取りやすいくらい感情を出している。優しく微笑んでいるのだ。その乖離した表情と声色が一層不気味さを増していた。
「ありがとうございます...そのー、僕は金剛寺香織です。よろしくお願いします」
心の中ではかなり恐怖心が増しているが、出来るだけ平静を保ちぎこちない笑顔で言葉を返した。
「よろしく、香織。時間は有限、行こうか」
「えっ!えぇぇぇぇ!」
エニスは香織を抱き抱えると同時、青い光源が円を描きその光に飲み込まれた。
行き先は河川敷。橋脚の真横に瞬間移動をしていた。
「連れてきた」
「excellent/流石はラニーの見込んだ魔法少女!仕事が早いですねぇ」
「同意/やはり利便性の高い魔法だ。それを使いこなすエニスの技量は素晴らしいと言えよう」
そこには一人の魔法少女と二匹の精霊がいた。エニス、ケルベスは面識があるが、ゴシックな衣装をした兎のぬいぐるみは見覚えがない。
「high/はじめまして香織ちゃん。私はラニー、エニスと契約している精霊ですよ〜。以後お見知り置きを〜」
ふわふわした感覚で話すラニーと呼ばれる精霊はエニスとは真逆であった。体から声色に至るまで感情表現しかない。体を動かし、声を上げて全身で語りかけてくるような印象の精霊だ。
「よろしくお願いします。えっと...今日仮契約みたいなことするって認識でいいんですよね」
「yes/その通り〜。ウチのケルベスとサッサと契約結んで町の怪人を見に行こうか」
「確認/では契約を結ぼう。仮とは言ったが本契約だ、それ以外にない。解約は後にできるが、最終確認だ。仕事を見る為とは言え命の保障は絶対ではない。良いな?」
「わかってますよ...僕もある程度は覚悟はしているので...!」
ポイント150。ブクマ30件を超えることができました!ありがとうございます!
少しずつですが読者の方が増えているのはとても嬉しいことです。
これからも応援よろしくお願いします。
初めての方は興味があったり、面白いと思って頂けたならブクマ評価等よろしくお願いします。