作戦
「今回のターゲットは『鳥人』骨格は人間だけど顔や脚、翼が鳥そのものなんだよね」
「一度戦ったのか?」
「いや、私は見てないけど『情報屋』が姿を捉えた」
度々話に出てくる『情報屋』。その存在が気になり、ブルーレインに質問をした。
「その『情報屋』ってのは何者なんだ。護衛に情報収集と色々やっているみたいだが...」
「『情報屋』は別の街に住む魔法少女。戦闘よりも情報収集に長けていてね、他の魔法少女と約束事を決めてるの」
「約束事?」
「そ、簡単な内容だけどね。私たちの街を巡回して情報を提供する代わりに『情報屋』の暮らす街で戦う。ただそれだけよ」
「それで護衛できるのか?少し心配なんだが...」
幹人の不安は間違ってはいない。『情報屋』は戦力として数えられないと言ってるようなものだ。そんな彼女に護衛を頼んでも大した活躍は期待できないし、時間稼ぎにもならないのではないかと疑ってしまう。
「その辺は問題なし。情報収集に長けているとは言ったけど全く戦えない訳じゃないから。近隣だけで戦闘を行うよりも幅広く監視を行い、自分の街に代理を立てた方が効率的だと判断してる」
「ある程度時間を稼ぐくらいはできるってことでいいのか」
「その認識で問題ないわ。そろそろ目的地に着く、今回の作戦を伝えるわ」
『情報屋』から貰ったデータを元にターゲットを追い詰める作戦をブルーレインは考えていた。
「今回の相手は鳥人。5日程前に現れてから、3、4人は殺している危険な怪人だ」
「...そんなに人を」
「ヤツは現れてから徹底的に此方との接敵を避けるように動いている。鳥人の感知する範囲に入った瞬間にかなりのスピードでその場を去る行動を取る」
それが理性ある怪人の厄介な所だ。彼らは魔法少女に勝つ事は難しいと本能的に理解をして逃げ回る。その上で逃げ足の速い者や感知範囲が魔法少女よりも広い怪人は全く網にかからない。その場合は近隣の魔法少女を呼び、理性を失うまで人を殺させない事や包囲網を敷いて一斉に捕らえに行くことが多い。
「だが、今回のターゲットはわかりやすい。鳥人は自分のテリトリーから離れて殺人を犯す」
「テリトリー?」
「自宅近辺とでも言えばいいかな。第一の事件は東南地区で起こった。2回目は西、3回目は北西、4回目は南西。一回目以降、決して東側の地区では事件を起こしてない。多分理性が強くて我慢した結果1回目の事件を起こしたんだと思う。それ以降は悟られないように動いたんだろうけど、露骨過ぎる」
わかりやすいほどに特定の地域で殺人をしない。近場を一切狙わない事で逆に行動する地域が浮き彫りになっていることに怪人は気づいていないのだ。それを逆手に取り、鳥人を追い込む。
「平均的な怪人の感知距離は400から500m。対して私たちは700m程度の魔力であれば感知することができる。実際、ある程度近づいたところでヤツには逃げられた。少なくとも私たちを超える索敵能力はない」
「なるほど。でもかなりの逃げ足なら近づいても逃げられるだけでは?」
「本題はここから。鳥人はできるだけ暗い場所で獲物を狙う。街灯がない場所が特に多いわ。2回目の郊外、3回目は駅周辺の路地裏。人は多いけど密閉した空間に近く、光がほとんど差さない場所だった。4回目もまた郊外。住宅地から少し外れた森の辺りだった。だから次に狙いをつけるなら神社あたりかな」
「西側にある熊谷神社ですか?」
「ええ、あの辺は神社手前まで全く街灯がない。そこから離れた市民がいれば格好の的。それに鳥人からすれば真逆に位置する場所だから結構な確率で現れるはず」
「そこを挟み撃ちするってわけだな」
「その通り。私が西側から圧をかけて逃げるように誘導する。成功すればゴールドラッシュの感知にかかる筈だから、迎え撃って」
「了解!」
そう言って両者は別れ、ブルーレインはまた外れの方向に。ゴールドラッシュは東側、逃げ道を塞ぐ役目として街の方で待機するのであった。