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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
21/92

変身

「俺は贖幹人。総雲の2年生だ」


 彗理の問いかけに答えて軽い自己紹介をする。とはいえ、座りっぱなしでは失礼かと思い立ち上がる。


「...香織先輩の後輩ね。私も2年だから同い年、ひとまずよろしくね」


 そう言って握手を求め手を差し伸べる。相槌をうち、その手を握り返した。


「よろしく頼む」


「なんだか変な感じ...香織さんなのに全然違う反応するから戸惑っちゃう」


 別人が中身なので性格が変わっている為、元々見知っていた彗理には違和感を感じられずにはいられなかった。話せば話す程に本当にいなくなった事実が深々と胸に突き刺さり、心が揺らいでしまう。


(それでも、昨日の涙で断ち切るって決めたから)


 彼女の死は傷ましいが、目の前にいる彼も目の前でその惨劇を見ていたはずだ。同じ学校の先輩後輩の間柄であるのなら、その傷は深いだろうと、彼の前では毅然として振る舞うことを決めていた。スカルヘッドとして出会った時、なにかを探し求めていた。辛い目にあったとしても仇を討つ為に端から怪人を襲ったのだろう。それ以外にも怪人化した影響もあり、精神的に不安定な所もあると配慮している。

 それに、ケルベスから彼の今後の展望も聞いている。だったら同じ痛みを分かち合った仲として手を取り合い、先に進む事を選択するべきだ。だから、弱っている姿を見せている暇も責任を感じさせる必要もない。仇である敵を探し出して討つのみだ。


「...そうだよな、俺も先輩の身体を使ってることに違和感を感じていたよ。まるで現実味がなかったからさ」


「聞いて驚いたでしょ、魔法少女なんて本当にいるのかって。私も初めて契約を持ちかけられた時は半信半疑だったけど、実際いるから困っちゃうのよね」


「何度も見たよ。人の尊厳を踏み躙るような悪行を。だから、許さなくて怪人となった俺は殺してしまったんだ」


 それが彼の歪みだ。悪に対する過剰なまでの罰則行為。今はその異常性を理解して変わると心に決めている。


「そうね、戦った時も言っていたわね。只、それは怪人化が原因。貴方は悪くない。」


「ありがとう、心が救われる気分だよ。でもこれは俺の罪だ。償うためにも、俺は魔法少女として頑張るよ」


 拳を強く握り締め、経理の前で誓った。


「っそ!なら良かった!」


 バシバシと肩を叩いてにこやかに笑う。


「思ってたより追い詰めてないし、それだけ目的意識がハッキリしてるなら良かったわ。幹人で良いわよね、私の事も彗理って呼んで良いから」


「わかったよ、彗理」


「よろしい。ケルベスから寝る前までの話は聞いて事情は察してるから、早速魔法少女業務と言いたい所だけど。魔法少女に変身できる?」


 魔法少女への変身。精霊と契約した者が魔力を用いて思い描いた姿に変わること。元の姿をどうしても連想してしまうが故に顔立ちは似てしまうが、認識阻害が入るので敵対者からの身元がバレることは基本的にない。


「したことがない。怪人になる感覚しかわからないんだ」


「なるほどね、一応無意識で魔法少女には変身してたからなることはできるはず。ちょっと人気ない場所でやってみましょ」


 そう言って彗理は魔法少女へと姿を変えて幹人をお姫様抱っこする。


「ちょっ!」


「大丈夫、けど速いから黙っててね」


 舌噛むからと言うと、目の前に彗理の変わり身を生み出してベランダに出る。変わり身が鍵を閉めた事を確認して一気に上空へと飛び跳ねる。

 時刻は既に夜。大きな月の下でブルーレインに抱えられながら、山へと向かうのだった。

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