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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
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ブルーレインVSスカルヘッド

 両者は距離を保ちつつ、相手の出方を窺う。どちらが先に動くか、緊張が張り詰める。

 スカルヘッドは間合いにおいて自身の優位性を理解してる。変化自在の骨の髪、約10mの範囲内であれば伸縮することができる。回転させてドリルのように、一本一本を罠として張り、迎撃もできる。振るえば敵を裂く刃にもなる。二尺程度の長さしかない刃はこちら側に来る前に対処できると判断する。

 その考察は遠からずとも当たっている。ブルーレインの帯刀する水刃は彼女の魔力の噴出により、長さは骨の髪と同様に変えることはできる。しかし、それを相手側に悟らせる訳にはいかない。相手の知らない情報は大きなアドバンテージとなり、不意を突くことや相手の判断を鈍らせることができる。特にスカルヘッドは髪という武器がある為、油断とまではいかないが付け入る隙ができるだろう。


「ハァ!」


 緊張を破ったのはスカルヘッドだ。髪を束ね、五つの刃を形成してブルーレインに降りかかる。別々のタイミングで避けさせまいと振るわれた刃に対して、最小限の動きで回避する。しゃがみ、跳躍、ブリッジとテンポ良く避けれたが第4、5は回避した動作に合わせて攻撃をズラしてきた。


「それはちょっと無理だから!」


 ブリッジの体勢から倒立し、両腕を使って跳びはねる。上から突き刺してきた刃は地面を抉り、空振った。残った刃に加え、避けた2つの刃が軌道を修正し、中に舞う標的を捉え一斉に襲い掛かる。ブルーレインは3つの刃に反応し、空を蹴って大地に転がり込み、迎撃体制をとる。


「でぇやぁぁぁぁぁ!」


 体を超高速で旋回させ、降り注ぐ刃を粉砕した。


「っなに!?」


 髪を粉砕され、驚いて思わず後退る。その一瞬の空白をブルーレインは見逃さない。クラウチングスタートで一気に加速する。地面に刺したままの束にたどり着き、両手で持ち上げる。


「おりやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ぶん回す。髪の束を中心に弧を描き、スカルヘッドは竜巻ができるほどに体を回されて正反対の河岸にぶん投げられた。


「ぐぁぁぁぁ!」


 川を割り、大地を削り、堤防に体を埋められてようやく止まった。口に入った土を吐き捨て、前を見据える。トップスピードで敵は追撃の準備を始めている。髪を主とした攻撃は有効ではなかった。


(技量では絶対に敵わない。力勝負に持って行った方がまだ分があるな)


 髪を操る技術ではブルーレインに意味をなさない程に戦闘経験が違う。魔法少女として一年以上戦った者と数日程度雑魚を相手にしてきた怪人ではどちらが強いかなど語るまでもなかったのだ。

 だが、それでも力という一点においては数%の勝率とはいえ可能性はある。強引な一撃を彼女に当てることさえできればいいのだ。問題があるとすればそこに持ち込めるかどうかだ。この試練を乗り越えねば、自身を変貌させた外套の男に辿り着くなど夢のまた夢だ。そう自分に言い聞かせて反撃を窺う。

 

(考えを変えろ。今、何ができる。現実的で有効な...試してみるか)


 思考はまとまった。相手から見て死角を活用し、反撃を行う。スカルヘッドは再び髪を使う。現段階で最も有用性があるのはそれだ。インファイト戦に真っ向から向かっても、向こうは加速により此方よりも激しい威力で殴りくるので押し負けてしまう。仮に押し込めた所で別の技で躱され、距離を保ちつつ着実に削りにかかってくるだろう。フェイントの類であっても騙せる自信はない。寧ろ力技でゴリ押しでくるだろう。

 故に髪を使う。思考としても物理的にも死角に位置する。あれ程派手に負けた髪を使うとは思わないだろう。何より土に埋もれて背を見せていないので相手の視界には映らない。だから、地面を潜伏させて目の前に来た瞬間に下から突き上げる。


「オラァァぁぁぁ!」


 雄叫びを上げ、注目をこちらに寄せ地面を掘る音を誤魔化す。生え直した髪を束にして大地に潜り込み、自分の身体の前に待ち構える。

 

「はぁぁぁぁッッッ!!ッガハァ!?」


 勢いよく飛びかかってきたブルーレインに下から突き上げてきたドリル状の髪が掠り、太腿辺りから肩にかけてのラインを引き裂き、血が流れる。


「直撃したと思ったんだけどな」


「ご生憎様そう簡単にはやられないのよね」

 

 殴り込むギリギリで異変を察知したブルーレインは直ぐに背後に下がろうとするも慣性により完全に止まることが出来ず、攻撃を喰らってしまった。


(...下手したら腹に穴が空いていたわね。これからは地面にも気を張らないと、こっちが狩られる)


 一瞬の攻防において、想定以上のポテンシャルを発揮したスカルヘッド。油断した訳ではないが、一手、二手先と読んでいかなくては敗北は十二分あり得る。自身の手の内を晒すことはあまりしたくはなかったが、使わなければ不利と判断した。

 腰に巻かれた鞘から流水の刃を抜く。静寂を打ち砕く水音と共に水刃を遠距離から振るう。


「っな!」


 水刃から、別の水刃が射出されたのだ。刃を振るった線状に弾丸が如く、頭蓋の頬と肩の骨を水刃で撃ち抜いた。

 ブルーレインの使う水刃は伸ばすだけではなく、魔力を使って振るった方向に刃を飛ばすことができる。接近戦のみを想定された武器ではないのだ。近接であれば、二尺の刃を保ち、中距離であれば魔法と併用し伸ばした水刃で応戦をする。遠距離であれば水刃で撃ち抜く。完璧なオールレンジの武装。この武器の使い分けをして、常に自分に有利な間合いで戦い続けてきた。


「さっきまでも本気だったけど。今度は本気も本気、手の内晒してでも潰してやるわ」


 

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