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魔法少女:Record Blue Imagine   作者: 誰何まんじゅう
First:その身体に潜むもの:蒼き慟哭
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問答

「...魔法少女。聞いたことがないな」


「私達は怪人相手に戦って浄化してるの。善良な市民を救うのがお仕事ってわけよ」


 スカルヘッドはその外観に反して理性的だ。魔法少女に限らず、怪人は出会った人間は証拠隠滅の為に攻撃的な姿勢を取る。理性的な怪人に関してもだ。

 慧理は以前、ゴールドラッシュと共闘して幹部格に迫る勢いで力をつけた怪人と戦闘を行ったことがある。その怪人はとても理性的ではあった。

 しかし、魔法少女と判断するや否や臨戦態勢を取り強襲してきた。彼らは魔法少女は敵だと本能的に認識をしており、ろくに会話など出来ずに戦闘になる。

 故に、スカルヘッドは特異だ。魔法少女を認識した上で疑問を投げかけ、コミュニケーションを取ろうとする。騙し討ちなどを考えている可能性も考慮し、一歩下がり会話を続ける。


「つまりは俺と同業者ってわけか。なら警戒しなくて良いよ。君に敵意はない」


「...本当に言ってるの。さっきも言ったけど怪人相手にしてる、怪人である貴方を見逃すと思う?」


 スカルヘッドは頭蓋に隠れた顎に手を当て、思考する。今の投げかけに対して疑問を抱いたようだ。


(さっきの様子からして本当に怪人やら魔法少女について理解が及んでない気もするけど)


 油断は禁物だ。一瞬の判断ミスで命は失われる。いつでも戦闘を行えるように準備だけは怠らない。


「俺はやっぱり怪人か。何故、この姿になったのか理解できなかったんだ。だから、事実を求めて人助けをしていた」


「人助け?それが?」


 ブルーレインはぐちゃぐちゃの肉塊になった怪人を指差して問いかける。


「嗚呼、勿論だよ。何の罪もない人々を殺す悪逆非道な怪物さ。だから被害が出ないよう、俺が裁いた」


「随分と自分勝手ね。他者の命を手にかけることを疑問に思わないの?」


「...何を言ってるんだ。人に脅威のある怪物(クズ)は殺して当然だろ」


 中身が見えてきた。


(やっぱり自分の正義感に酔ってるタイプね。悪行を行ってないと思ってる辺りがタチが悪いわ)


 自身の正義感に迷いなく動くのがスカルヘッド。彼自身にある正義に基づいて、悪を排除する。そこに他者や一般的価値観の尺度はない。自分の物差しで罪をはかり、私刑を行う。自分が正義と思い、悪を討伐するのはさぞ気持ちがいいだろう。自分は正しい。人の為だと思い込み、徹底的に他者を追い込んで殺す。

 今時ネットでも珍しくはない。例えば、スキャンダルを起こしたアイドル。他者に迷惑をかけた動画を投稿する若者。不倫をした芸能人。炎上を起こしたインフルエンサー。その他諸々と過ちを犯した人間を、匿名と思い込みSNSなどで直接叩く人間だ。他者の過ちを盾にとり、正義を気取りお前は悪だと石を投げつける行為。それを最悪な手段として持ち、実行しているのがスカルヘッド。

 悪に石を投げつけて気持ち良くなってるだけの最悪な種類の人間。慧理はそう認識した。正義感が悪意として動く、誰しも人は間違えるもの。その間違えてしまった方向性を正さなければならない。


「魔法少女は浄化によって殺さずに怪人を救うことができる。だからもうやめなさい、貴方も浄化してあげるから」


「救う...ね。それは違う、彼らは罰を受けなきゃならない。人を殺めた行為を」


「それは違う、怪人化は悪い心を大きくするの。本来なら平穏に過ごしていた人間なの。だから、救ってあげなきゃいけない」


 それは心からの願いだった。まともな感性を持っていれば通じ合えたかもしれない。が、根本的に彼は歪んでいる。


「そう言った思考を持っているんだろう。なら、いつか犯罪を犯すかもしれない。それなら怪物になった今、殺してやるのが最善じゃないか。未来の被害者を守ることができる」


「理解できない。誰だって悪い心はある。ちょっとした復讐心や嫉妬を抱くことがある。それも外に出すものじゃない、心の内でやり返して気持ちを落ち着ける人もいる。考えただけでは罪にはならないわ」


「増幅する程に悪意があるんだろう。なら怪物のまま殺めるべきだ。人として犯罪者になった後に恥を晒すより良心的だろ」


「貴方、本当に話にならないわね...」


 何を言っても通じない。所詮は怪人になった人間だ。理性的ではあるが、歪んだ部分は増長して醜い解答をするだけ。スカルヘッドも悪意の部分が肥大化した存在なのだ。他よりも話が通じるが、浄化をしなければ元には戻らない。あの歪んだ答えもきっとそれが原因だろう。誤った正義感を増長させられて最悪な言葉を羅列する殺人鬼となったのだ。問題は浄化できるかどうかだが、まずはやってみるしかないと、思考を切り替える。


「それはこっちの台詞だよ。この問答はもう意味がない。それよりも俺は聴きたいことがある」


「そうね、答えてあげても良いわ。貴方が浄化を受けてくれればね」


 慧理としても聴きたいことは山ほどある。ゴールドラッシュとの関係性や何も知らずに怪人になった経緯。何を追っているのか。だが、その前には彼女と思わしい怪人を元の状態に戻さなくてはならない。あの様子では脳が改竄されているかもしれない。余りにも無知であり、本能的行動を取らない。で、あれば何か隠したい情報があると読み取れる。故に認識を歪められた怪物状態を正常にしてから再び話を聞く。

それが彼女の結論だ。


「それはできない。この力がないと人を救えない。何より、真実に辿り着けない。そんな気がするんだ」


「あっそ。なら、実力行使よ」


 水刃を抜いて構えをとる。それに対してスカルヘッドはやれやれと言わんばかりにため息をついた。


「敵対するつもりはないと言ったけど、攻撃してくるなら反撃をするよ。殺しはしないけど、痛い目には遭ってもらう。正当防衛だよね」


「その予防線を張るのムカつくわ」


「何とでも言ってくれ。かかってくるなら応戦する。それだけだ」




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