6 メロロ王国の綻び
そのころ、ミラナリアがいなくなったメロロ王国では非常事態が起こっていた。何年間も国内で目撃されることがなかった魔物が最近、急に目撃されるようになったからだ。
もちろん、このような重大な話が貴族たちの間で広まらないわけがなかった。
「伯爵、例の魔物の話は既に耳にされましたか?」
「あぁ、聞いたさ。ここ何年も目撃されていない魔物がどうして我が国で目撃されたのか、全く原因が分からない。」
「魔物の問題など、我々の国では関係ないことだと考えていましたが、まさか陛下がお隠れになってすぐにこんなことになるとは。」
「全くだ、少し前には例の平民が城から追放されたと娘の機嫌が良かったのだが、これでは娘の好きな奴隷商が来れないではないか!そのせいで最近では娘の機嫌は悪くなる一方だ。」
例の平民とはミラナリアのことだ。彼女は平民の人権がないこの国で王子の婚約者だったため、彼女のことを知らない貴族はこの国にはいなかったのだ。
「そういえばそんな話がありましたね、平民風情が殿下の婚約者であったなど、許されないことですな。殿下が新しく陛下となり、そのようなものを城から追い出したのは賢明な判断です。」
しかし、彼らは現国王の判断が間違っていたことを知る由もなかったのだ。
当然、魔物の存在が確認されたことが貴族たちの間で広まっているのであればこの国の王であるライカハン国王の元にも報告が伝えられる。
国王の寝室のドアを一人の老人が勢いよくたたいている。彼はこの国の宰相を先代の国王の時から任されている人間で、現国王とも知った仲だ。
「陛下!陛下!大変でございます。我が国にて魔物の存在が確認されました。」
しかし、宰相の声に返事をする声は中から聞こえてこない。仕方なく、宰相は再び国王に声をかける。
「陛下!陛下、聞こえていますか!」
すると、中からバスローブのようなものを巻き付けたライカハン国王が顔をのぞかせる。
「宰相、うるさいぞ!今、良いところなんだ、邪魔をするな。」
「陛下、令嬢たちとお戯れになるのは構いませんが、今まで姿が見られなかった魔物が現れたのは異常です。すぐにでも調査をする必要があります。」
宰相は真剣に国王に話をするが、国王はそれどころではないのだ。
「分かった、分かった。私は忙しいのだから宰相にすべて任せる。だからこれ以上邪魔をするな。」
そう告げると国王は宰相の返事も聞かずに寝室へと戻ってしまった。そんな国王を見て、何を言っても無駄だと宰相は魔物たちが急に現れた原因の調査を行うのであった。
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