34 本当の勝者は?
国王の無言のサインを確認し、ミラナリアはわざとらしく一芝居演じる。
「公爵様、捨てないでください。もう、婚約破棄なんて嫌です。そんなことをされてしまえばショックでどんなことをしてしまうか私も分かりません。」
もちろん、ミラナリアの発言が嘘であることなど分かっている。先ほどの国王のウインクがミラナリアにも見えていたのだから公爵にだって見えていたのだ。しかし、元々は自分の黒歴史が生み出した不運なのだ。
別に公爵だってミラナリアのことを嫌っているわけではない。そのうえ、ミラナリアの力のことを考えれば政略結婚という選択肢も考えはしていた。しかし、彼女のあまりの辛辣さにしりぬぐいが大変だと考えていたのだ。
「そんな三文芝居に騙されるわけがないでしょ!陛下もやるならせめて私に見えないようにやって下さいよ。」
「ん?ということは婚約は破棄するのか?あぁ、可哀想なミラナリア。まさか人生で二度も婚約破棄をされてしまうなんて。」
国王の猿芝居に公爵はため息をついてしまう。彼だってこうすることがこの国に一番いいということは分かっているのだ。それに、ミラナリア自身も不純な理由であるがそのことに意欲的だ。こうして仕方なく、公爵は腹をくくるのであった。だが、もちろん自分一人に苦労を押し付けた国王を逃がすわけがない。
「分かりました、ミラナリアとは婚約させていただきます!ですが、これは陛下が勧めて頂いた婚約なんですから、ミラナリアが何かしでかしたら助けてくださいね。だって、陛下にとってミラナリアは義妹なんですから。家族を助けるのは当然ですよね?」
こういわれてしまえば国王は断ることが出来ない。なにせこの話を勧めたのは自分なのだから。自分だけは安全圏にいると思っていた国王だったが、最後の最後で公爵に一杯食わされることになる。
「そ、そうだな。ミラナリアは義妹なんだから何かあれば私が助けに入るよ。ははははっ、はぁ。」
「ははははっ、はぁ。」
国王と公爵はこれから訪れるかもしれない問題ごとを想像し、気が重たくなる。そんな二人は互いに面倒ごとを押し付けるはずであったが自分にも跳ね返ってきたため、血の涙を流していた。
こうして、国王と公爵の攻防は幕を閉じたのであった。結果的に何も失うことなく、婚約という形で理想の生活を手に入れたミラナリアの一人勝ちである。
「やった!これでもう婚約者候補の仕分けをしなくてもいいわ!ラッキー!」
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