2 前世を思い出すとき
国王の崩御により、ライカハン王子が新たなメロロ王国の国王となる。そんな彼の初めての仕事はミラナリアの国外追放だった。
「平民風情が、私の婚約者など片腹痛い。今すぐに我が国から出ていけ!次にお前を見つけたら粛清してやる。」
そう告げられるとミラナリアはその日のうちに国外追放となってしまったのだ。何も持たずに国を追い出された彼女が生きていくのは絶望的だった。しかし、その瞬間に前世で日本という国で暮らしている自分を思いだしたのだ。
「やっと解放されたわ、あの貴族ども、さんざん私に嫌がらせをしてきて!国王の命令じゃなきゃ、誰があんなクソ王子の婚約者になるものですか!ほんと最悪ね、こんな国、追放されて正解だわ。
自分からじゃ逃げ出すこともできない国なんてヤバすぎるわよ。いくら前世の記憶がなかったからって、よく耐えられたわね、私。」
そのころ、ミラナリアを追い出した新たな国王は自分のことを慕う貴族令嬢たちと甘い夜を過ごしていた。平民であるミラナリアを追い出し、彼の気分は最高潮であったのだ。
しかし、新たな国王はミラナリアの価値を理解していなかった。彼女の力を知るものは国王が無くなった今、彼女自身しか知らないのだ。
「あのバカ王子、いや、今は国王になったんだっけ。私がいなくなれば国に結界を張れないってことが分からないのかしら?
いや、平民のことなんて気にするわけないか。私の力のおかげで魔物が現れなかったのに私のことを役立たずとか言いやがって。いや、お前が役立たずだよ!
でも私がいなくなったんだから魔物たちが国に現れても優秀な貴族様たちが何とかしてくれるよね。なんていったって、私よりも有能なお貴族様なんだから。
とりあえず、サクラ王国で仕事を探しましょうか。あの国なら平民も関係なく暮らしやすい良い国らしいから。別にこの国で魔物が溢れるようになっても私のせいじゃないですからね~。」
前世の記憶を取り戻したミラナリアは今まで自分が受けた扱いの酷さに激怒していた。しかし、それと共に、自分がいなくなることによって国を覆っている結界が無くなり、魔物たちが押し寄せてくるこの国の未来を想像すると笑いが止まらなかった。
「絶対に泣きつかれてもこの国のためになんか働いてやるものか!この力を使ってコスパ良く生きていくんだ。レッツ、ぐ~たら生活!」
この日、ミラナリアは自らの力を自分のためにだけ使うことを誓うのであった。自堕落な生活を目標にして。
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