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幸福な目覚め

夢を視ている


目の前に誰か何か喋ってるが良く聞こえない


『これから辛い事も悲しい事も沢山あると思うけどそれ以上に嬉しい事も楽しい事もあるはずよ』


その言葉だけは覚えてる


夢の中で、徐々に意識が薄れていく、目が覚めるのかまだ彼女の夢を見ていたいと思っているがそれはかなわない

・・・・・




良い香りがする、ゆっくりと目を開けると目の前に見慣れない女性がいた


「あ、目が覚めた?」

「あぁ」

「そう、良かった」


俺は彼女に膝枕され頭を撫でられている


「えーっと、君は?」


ぼーっとする頭でひねり出した言葉に彼女は虚をつかれているが優しい声で返す


「私はオビ、あなたは?」

「オビか、俺は皇理オウリだ」

「そっか、無事に目が覚めて良かった」

「ところで何故俺はオビに膝枕されてるんだ?」

「君が遺跡の中で倒れてたから看病して上げてたの、息はあったし脈も正常だったから私のテントに運んで来て今に至ります」


彼女が笑いながら話す


「遺跡?俺はなんでそんな所で倒れてたんだ?」

「覚えてないの?」

「あぁ、確か最後に覚えてるのは兄貴と酒盛りをしてて、そこから先の事は覚えてないな」


オビは少し困った様な顔をしてから


「じゃあオウリを見つけた場所まで行ってみようか」

「あぁ頼む」


俺を座らせて立ち上がりるオビ、彼女の背を見ていたらふと目の前にニョロニョロと揺れるものがある

ニョロニョロと揺れるものを目で追うとそれは彼女の腰辺りから出て来ていた


「なぁ、これなんだ」


彼女の腰辺りにあるソレをつまんで問う

と同時にピーンと逆立つソレと彼女の悲鳴とビンタが一緒くたに飛んで来た


「女性の尻尾をいきなり触るだなんてナニ考えてるの!」

「すまん、まさか本物とは、てか耳も!」


驚いた先程までは頭がぼーっとしていたのもあるが彼女の耳はよくみたらタレた猫耳の用になっていた


「本物って尻尾に偽物なんてないよ、尻尾のない方が珍しいの、良く見たらオウリは耳も丸いね」


へ〜と俺の周りをオビがクルクルと周りながら観察している


「尻尾が無いのも耳が丸い人も初めて見たよ」

「そうなのか、俺は本物の猫耳と尻尾の生えた奴を初めて見たぞ」

「まぁ良いや行こ」


そういうとオビに引っ張られ俺が倒れてたという場所へ向かう事に


テントを片付けて向かった先には【國立伊弉冊病院】の文字


「國立病院?」


遺跡だなんて言うから山登りでもするのかと思っていれば拍子抜けだ

気がの抜けた俺の顔をオビが覗き込む


「何か思い出した?」


首を横に振り最後の記憶をぽつりぽつりと吐き出す


「確か兄貴と呑んでて、でもそのあと病院になんて言った覚えはないな」

「そっか、一応オウリを見つけた部屋まで行ってみる?」

「ああ、案内してくれ」


俺はオビと病院の中へ入る事にした、病院に入って直ぐ吹き抜けがありその中央には大きな亀裂があって大穴が空いていた


俺が大穴を覗き込んでる間にオビは柱に縄梯子を括り付けてみたいだ


「さあ、降りるよ」

「お、応」


俺達は一歩一歩縄梯子を降りていく、かなりの深さを降りたと思う

結構深くてようやく底に着いたと思ったら先に底に着いて待ってたオビに手招きされる


「この部屋だよ」


辺りを見渡すと仰々しい機械が所狭しと並んでいた


「失礼しま〜す」


俺はなんだが病室に入る気分になってしまい縮こまり部屋にはいる


『戻ったか』


突如部屋に響く声


「誰!」


振り返ると、両手に苦無のような物を持ちながら左手を地面に付け右手を掲げすぐにでも飛びかかれる体勢のオビがいた


『そう身構えるな、私は敵ではないしそもそも戦闘能力なぞない』


そう言うと何かが姿を表した


「鳥のロボット?」

「ロボット?」


オビが不思議そうな顔で此方を視ている


『如何にも、私は皇理に現在の状態を伝える為に用意された自律思考型AI搭載のアンドロイド、開発コードはヤタガラス』


ヤタガラスと名乗る鳥が俺達の前に全身を現した


「アッ、この鳥前に見たよ」

「えっ?」


オビがヤタガラスを指差し言った、ヤタガラスは翼をバサバサと動かしながら説明を始めた


『如何にも彼女を此処まで連れてきて皇理を介抱して貰うように仕向けたのは私だ』

「なんで私に」

『まずは彼女に御礼を、そして皇理に謝罪を、本来の御役目を果たせず申し訳無い』

「御役目ってなんの事だよ」


俺達は訳が分からずヤタガラスに詰め寄る


『順を追って話そう』


ヤタガラスは俺の方へ向き直りコホンと咳払いし話し始めた


『先ず皇理がコールドスリープしていたのは完全な文明の滅亡を回避または滅亡した文明を復活させるためだ、そして私の御役目とは文明の維持または復活の為に君が目を覚ました際に速やかな状況判断、体調管理を行い皇理をサポートすると言うものだ』


既にオビは情報量に混乱してるの周りの機械が気になるのかキョロキョロと落ち着きがない。


『だがアクシデントが発生した、先日の地震により一部送電システムに深刻なダメージを受け凍眠装置と補助システムの電源供給量が著しく減りこのままでは数日中に全ての機能が停止しかねない状況になっていた、本来なら皇理はまだコールドスリープから目覚める筈では無かった、しかし緊急事態と判断した私は皇理の解凍作業を開始し同時に目覚めた皇理を介抱してくれる人物を探した』


なんと俺は俺が知らぬ間に生命の危機に瀕していたらしい


『幸いにもその人物は直ぐに見つかった、ソレがオビ君だ』

「う、うん」

『本当にありがとう、あのまま皇理が誰にも発見され無かったら衰弱死していたかもしれない』

「ふぁっ!?」

「なんだか良く分かんないけど皇理を助けられたっってことだよね、良かったよ」


緊急解凍とやらで人を見つけられなければ俺はそのまま死んでいたかも知れないのかと考えたら肝が冷える

そんな事を考えていたらふと先程の説明で気になる事がいくつかある


「なぁ、質問なんだが」

『答えられる範囲なら回答しよう』

「俺は文明の為にコールドスリープしたんだよな?」

『そのとおりだ』

「俺の最後の記憶だと兄貴と酒盛りをしてるんだが‥‥‥」

『コレは推測になるが緊急解凍した事による記憶障害だと思われる』

「なるほど、じゃあ次の質問だ文明復活させる為にと言っていたが何故俺なんだ?」

『質問の意図が解らない』


俺は頭を悩ませた、う〜んと少しの間考えてから虚しくなる質問をする事になる


「つまりな、俺みたいな凡人じゃなくて世に言う天才や学者様やら知識人をコールドスリープさせた方が世の為になるんじゃないか?」

『それには幾つかの理由があるが大まかな問題は3つ、1つ目は適性の有無コールドスリープ自体人体改造を受けなければ対象者足り得ない』

「それで、2つ目は?」

『2つ目は志願の有無、基本的にこの凍眠計画は志願者の中から選抜されている』

「つまり、コールドスリープをしたがるような物好きは志願者に天才や学者や知識人が居なかったと?」

『逆もまた然り、適性が無くて残念ながらコールドスリープ出来なかった天才達も居たと言うことだ』

「それで3つ目は?」

『天才の閃きなどは無理だが当時の文明をよみがえらせるのが目的であるなら私のようなAIや資料を残して置けば十分と言う判断だ』


なるほどと俺は妙な納得していた、もしかしたらこれ等の説明を俺はコールドスリープの前に聞いていたのかも知れないな


「それで具体的に俺はこれからどうしたら良いんだ」

『彼女、オビ君の集落に行って人手を集めて貰う、何をするにも人手が居るしある程度は人数も増えているだろう』

「えっ?アタシ!?」


話を聞いていなかったのか急に話を振られオビはオロオロしてその場で回ってる

それはまるで自分の尻尾を追いかける小動物みたいに‥‥‥


「なあ、オビには何故尻尾や獣耳があるんだ?」

「アタシも気になる、尻尾が短い人やほぼ無くなってる人はまだみた事もある、けど耳の丸い人はオウリが初めて」

『オビ君の種は恐らく人造人間計画ホムンクルスの末裔だろう』

人造人間ホムンクルス?」


俺とオビが同時に聞き返すと、ヤタガラスは左羽根でモニターを指し画面が映し出される、画面には幾つかの動物やオビ様な尾のある人が映し出された


『文明の滅亡の原因は様々だが一番の原因は戦争による汚染だと言われている、当然戦争行為そのものが原因の人口減少もあるが汚染は特に人口減少を引き起こし人類は最盛期の百万分の1にまで減少したと言われ人類滅亡が懸念された』


ヤタガラスは羽根をバサバサと動かし画面を切り替わえて様々な情報を表示する、そこには新人類想像計画として大きく分けて2つの計画が表示された


『新たに汚染地域でも生活できてコールドスリープから目覚めた人類を手助する為に考えられた人造人間計画だ、人造人間は他の動物の特徴を取り入れる事で厳しい汚染地域での生活を可能にし、身体能力も一般的な人類に数段勝る強靭なものとなる』


「つまり私達はオウリの為に創られた労働力なの?」


『それは違う』


俺が言葉を掛けるより速くヤタガラスは答えていた


『オビ君、君は自分達が労働の為だけに作られたと考えているのではないか?』


「でもさっきの話しだと」


『説明の内容が悪かったが君達人造人間の祖先には遺伝提供者である旧人類が居て謂わば我等旧人類の子孫でありただの労働力の様な寂しい物言いはやめてくれ』


機械のハズなのにヤタガラスがどこか哀しそうに見えた


「うん、わかったよ」


沈黙が辛くなってきたので話を切り出そう


「それでこれからどうするんだ」

「まずはアタシの故郷の集落を目指すって事で良いのかな?」

『人手を集める為にも皇理の生活基盤を築く為にもオビ君の集落を目指す事を推奨する』

「分かったよオビの故郷って何処なんだ?」

「札幌」

「札幌?」

『ふむ、此処からだと1000km以上あるな』


オイオイマジかよ文明滅んだ世界で1000km以上を移動って何日かかるんだよ


『オビ君はどうやって此処へ、よもや徒歩ではないだろう?』

「私は駆鳥に乗って」

「くとり?」

「そっか、オウリはまだみてなかったね私の愛鳥で名前はポンって言うの集落一の大鳥で力持ちなんだ」

「鳥に乗れるのか!?でも流石に二人も乗れないだろうし」

「ポンなら二人乗せても走れるとは思うよ」

「え?マジで?」

「う〜ん、でもなぁ」


オビが腕をくんで唸ってる


「なんだが歯切れが悪いな、何かあるのか?」

「あの仔凄い人見知りっていうか人に懐かないって言うか」


つまり俺を乗せたがらないって事か


「荷台とかなら引いてくれないかな?」

「それならテントなんかを載せてた荷台があるけど」

「なら最悪それで良いから頼むよ」

「分かったじゃあ呼ぶね」


そう言うと彼女は首から掛けた紐を引き笛を取り出すと思いっきり吹いた



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