第7話 あーあ、揃っちまったか
「どうしてこうなった……」
俺は頭を抱えていた。
そして同時に、遊佐神という悪魔に現状を打ち明けたことを激しく後悔していた。
「「…………」」
「くふふ~、先輩の言ってたことは本当だったんですねぇ~。こんばんは~桜江先生に青藤先輩~♡」
我が家の玄関で相対する、自称母&自称姉と遊佐神。
俺が連れてきた後輩女子の顔を見た衣緒莉先生はあわあわと口元を震わせ、菫先輩は今まさに殺人事件を起こす直前の顔をしている。
俺にとってはこの世の終わりにも似たシチュエーションだ。
「ぎ、ぎ、銀くん……? どうして銀くんが女の子を家に連れて来るの……? ママのこと嫌いになっちゃったの……!?」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……銀次くんに擦り寄る害虫は皆お姉ちゃんが殺す……」
「うわぁ~これは聞いた通り重症ですねぇ~。どうしてこんな人たちに好かれちゃったんですかぁ~?」
「そんなの俺が知りてぇよ……。誰かわかるなら教えてくれよ……」
顔を両手で塞ぐ俺。
――どうして俺が遊佐神を家まで連れてくることになったのか?
それは俺が家に自称母と自称姉が住み着いてしまったこと、そしてその二人の関係がこじれてしまっていると話した際に、自分が解決しますと遊佐神の奴が言い出したからだ。
当然最初は連れていくことを断固として拒否したが、遊佐神のノリに押し切られてしまい、今に至る。
まあ遊佐神がやたらと自信満々だったので、もしかしたら――と僅かに思ってしまったのは事実だが、既に全力で後悔している。
「そ~れ~で~、お二人はどうして先輩と一緒にいたいんですかぁ~?」
「わ、私は銀くんのママだからです! 銀くんには母が必要なんだもん!」
「それは違うわ桜江先生。銀次くんの傍にいなければならないのはお姉ちゃんである私の方。自称母など不要です」
「そ、そんなことない! ママは必要です!」
「いいえ、姉です」
「ママですぅ!」
「……やはり先生とは一度決着をつけねばならないようですね」
あ~あ、また目を合わせてバチバチし始めちゃったよ……。
遊佐神め、なに火に油を注いでくれてんだ……。
これじゃ完全に逆効果じゃないかよ……!
しかし当の遊佐神はくふふと不敵な笑みを崩さず、
「ずっと思ってるんですけどぉ~、どうして二人はバチっちゃってるんです~?」
「「?」」
「だってぇ~、桜江先生はお母さんで菫先輩はお姉ちゃんなんですよね~? 先輩にお母さんとお姉ちゃんが一緒にいても、別に矛盾しないと思うんですけど~?」
「「!」」
「むしろ~、家族として一緒にいた方が普通な気がするなぁ~。そっちの方が先輩も認めてくれるんじゃ? くふふ~」
「「!!!」」
その時、衣緒莉先生と菫先輩に衝撃が走った。
二人の表情は、まるでこれまでの考え方や先入観を根底から崩されたと言わんばかりだ。
だが同時に――俺は開いた口が塞がらなくなる。
「お、お、おま……お前、一体なんてことを……!」
「くふふ~、よかったですね~先輩。これで家族仲良く暮らせますよ~」
「そ、そうよね! 言われてみればその通りよ! ママとお姉ちゃんが一緒にいても、なんの問題もないわぁ!」
「盲点だった……まさかこの私がそんなことにも気付かなかったなんて……」
やめろ、気付かないでくれ。
確かに俺はこの二人の関係がこじれていることに厄介さを感じてはいた。
これは遊佐神が言っていたように、状況改善の打開策ではある。
だが違う、そうじゃない。
解決したかったメインはそこじゃないんだよ。
この二人が母面と姉面をして家に住み着くのをなんとかしたかったんだ。
しかし遊佐神の放った一言で、いよいよ俺の退路が消え去ってしまった。
「それじゃあ銀くん、これからはママとお姉ちゃんの三人で一緒に暮らしましょう! ママが皆お世話してあげる!」
「そうね、お姉ちゃんも賛成。母と姉が一緒になることで銀くんが幸せになるなら構わないわ。皆で家族になりましょうか」
「や、やめろ! 俺には母も姉もいないんだ! ああもう、抱き着くな! 遊佐神、一生恨むからなァ!」
もはや自分の力でどうすることもできなくなった俺は、情けなくも遊佐神に怨嗟を叫ぶしかなかった。
だがそんな俺たちを見つめる遊佐神は、
「……でもぉ~、母と姉が一緒にいて問題ないなら――〝妹〟がいてもいいですよねぇ~? くふふ♡」
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