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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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「だああぁぁ!」


クラークが力任せに剣をフルスイングする。


「クソッ!」


セカンドは腕を黒い鱗で覆ったが、衝撃で腕ごと吹き飛ばされそうになっている。明らかに、さばき切れていない!


(闇雲に魔法を使えば、奴は警戒して、黒炎を展開してくるかもしれん)


戦いの前、ペトラが語ったことだ。

ペトラいわく、セカンドが操る黒炎は、魔法すらも燃やしてしまうという。あれを出されたら最後、物理も魔法も、奴には効かない。俺たちは攻撃手段の一切を失って、一気に苦境に立たされることとなるだろう。


(だからこそ、奴の油断を誘う必要があった)


最初から全力で仕掛けては、奴も当然それに応じようとするだろう。だが、こちらが闇雲に突撃を繰り返したら?


(奴は必ず、私たちを嘲ろうとするはずだ。あいつは他者を見下すことを、何よりの愉悦としているようだからな)


そして、ペトラの読みは当たった。あいつらはペトラやクラーク、フランをいたぶり、弄ぼうとした。だが、そこが勝利への閃光だ。


(奴が絶対の自信を持つ、磁力魔法。俺たちが破れるはずがないと思っているその力こそが、最大のチャンスなんだ……!)


奴は、俺たちの罠に掛かった。最強のカードを切ったつもりだろうが、逆に俺たちは、それを待ち構えていたんだ!


「うおおぉぉぉぉぉ!」


クラークは今までの怒りをぶつけるように、怒涛の勢いで剣を叩き込む。セカンドにこれ以上力を使わせない気だ。実際セカンドは、鱗で身を守るのが精いっぱいだ。黒い鱗が何枚もはがれ、辺りに散らばっている。

キィーン!翻ったクラークの剣が、ついにセカンドの腕を弾き飛ばした。奴の胸が無防備に晒される。チャンスだ!


「クソがっ……!」


だがセカンドも食らいつく。鱗を胸に集中させ、分厚い盾を作り出す。あれだけ厚くされたら、クラークの突きでは貫けない!さっきはペトラの力も借りることで、ようやく小さな傷をつけたくらいなのに……


「……貴様は」


「あ……?」


「貴様は、僕を、舐め過ぎだっ!」


バチバチバチィ!クラークの剣に、青い電撃が迸っている。その剣を、思い切り突き出した。


「くらえぇぇえぇぇぇ!」


ガッ!鱗に突き立った剣先が、爆発したかのような光を放つ。


「ぐああぁぁぁぁ!」


バラバラと鱗をまき散らしながら、セカンドがぶっ飛んでいく!


「や、やった!今のは効いただろ!」


俺は思わず小躍りしたい気分だった。するとライラが、上げていた腕を下ろしたじゃないか。俺はびっくりしたが、ライラは満面の笑みを浮かべている。


「磁力のまほーが消えたよ!あいつ、まほーを維持できなくなったんだ!」


「へ?お、おお!そういうことか。あんだけぶっ飛ばされたんだ、当然だな!」


クラークの渾身の一撃は、さしものセカンドでも耐え切れなかったと。いい気味だ!がっくりと片膝をつきながらも、クラークも安堵の笑みを浮かべている。


「磁力を操れるということは、なにも重力に対抗するしかないわけじゃないってことだよ。剣に磁力を帯びさせて、あいつに引き付けることも可能なのさ」


「ああ、なるほど……それで急に威力が強くなったのか」


「それに、剣が鱗を貫いた瞬間に、ありったけの電撃をもぶっ放してやったんだ。いくら硬い盾を持っていても、黒焦げになる威力だよ」


「うわ、それは痛そうだ」


「ふん。この程度、あの男には手ぬるいくらいだ」


確かにそうかもな。腐っても、セカンドは勇者。それも伝説の勇者だ。これくらいでくたばったとも思えない。それに、死なれても困るのだ。まだロアとコルトの呪いが解けていない。焦げている奴をふんじばってから、呪いの解き方を吐かせねえと。

俺が奴へと近づこうとした、その時……


「っ!!!気を付けろ!」


え?俺は踏み出そうとしたまま硬直して、目だけを声の主、ペトラへと向けた。そのペトラは、まっすぐ一点を見つめている。


「なんだ、あれは……?」


あれ?ペトラの視線の先には、大きな黒い塊が転がっている。なんだ、あれ?あんなもの、さっきまでそこになかったぞ。それに、妙だ。その黒い塊、よく見ると節のついた足や、ゴツゴツした腕が見える。何かの生き物の……死骸か?


「どうしてあんなものが、急に……」


「……嫌な予感がする。おい、誰でもいい!あれを破壊しろ!」


「え、え?死骸をか?」


「そうだ!急げ!」


よ、よく分からないが、とにかくペトラに従おう。俺は焦って仲間たちに振り返る。だが……すでに、時は遅かった。


「イーター・ケルベロス!」


ズ、ズズズズ。

な、なんだ……?死骸がどす黒くなっていく。すると、死骸がびくりと動いて、苦しそうに呻いたじゃないか。びっくりした、死んでなんていないぞ。だけど、どうして急に……?


「ふぅー……やれやれ。まさか、コイツまで使う羽目になるとはな」


え!?俺たちは、張り詰めたように硬直した。いち早く立ち直ったのは、クラークだ。


「な……なぜだ!僕の一撃を喰らって、どうして立てる!」


クラークが驚愕の表情で叫ぶと、ペトラが苦々し気にこぼす。


「イーター・ケルベロス……他者の生命力を吸い取り、自らの命とする、闇の魔法だ」


「命を、吸い取る……?」


なら、まさか……まさか!

俺は震えながら、そいつの方を向く。奴の体は、すっかり元通りになっていた。傷の一つも見当たらない。首をゴキゴキと曲げてから、奴は憎悪の籠った目で俺たちを睨む。


「あー。やってくれたな、カスどもが」


ボウッ。

復活したセカンドの周りを、黒い炎が舞った。



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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