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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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「来やがったぞ……!磁力魔法だ!」


俺が叫ぶと、ライラは待ってましたとばかりに呪文を唱えた。


「アンチ・マジック・シェル!」


掲げられたライラの両手から、乳白色の膜が放たれた。直後に、セカンドの重力波が襲い掛かるが……俺たちが押しつぶされることはなかった。


「よし!ちゃんと防げてるぞ!」


「へへへ。任せとけって言ったでしょ!」


得意げに笑うライラ。このアンチ・マジック・シェルの魔法は、特定の魔法を無力化することができる。ただし、制限も多い。使用中、ライラは一切動けないし、膜を移動させることもできない。さらには一つの魔法に対してのみ有効と、およそ戦闘の最中に使えるような魔法じゃないんだ。

でも、それでいい。これはあくまで、俺たちを守るためのものだ。戦いの鍵となるのは、俺たちじゃない……!


「くうぅ……」


その鍵の一人、クラークは、膝をつき、剣を地面に突き立てて、なんとか重力に耐えていた。


「たはっははは!ちょっと本気を出しただけでこれかよ!そんなんでよく、このオレを倒すとか言えたもんだな」


セカンドは傷ついた左胸を押さえながらも、歯茎を剥き出して笑う。


「ほんのちょっとかすり傷を付けただけでも、まあ上出来なのかもしれねぇな。誇っていいぞお前ら」


ひざまずき、首を垂れる恰好になっているクラークの頭を、セカンドはぺちぺちと叩いた。


「とりあえず、そこで寝とけや。その間に、残りのザコを片付けてくるからよ」


セカンドが向いたのは、保護膜に包まれた俺たちだ……!


(ああ、当然そうなるよな。俺たちはここから一歩も動けないんだから)


ライラの張った保護膜は、セカンドの磁力魔法のみを防いでいる。つまり、それ以外の魔法や、物理攻撃には一切無防備ということだ。そして移動もできないので、攻撃され放題だ。それは当然、俺も、ライラだって承知している。


(必然、お前は俺たちを始末しにやって来る……)


にやつきながら、セカンドが一歩踏み出した。そのとたん、二つの影が動く!


「ふっ、ううぅ!」


「ぐ、おおおぉ!」


フランとペトラが、額に青筋を浮かべながら、何とか立ち上がった。とてつもない重力の中、動けるのは二人だけだ。二人は背中を向けたセカンドに襲い掛かる。


「だから、うぜえって」


っ!セカンドがぐるんと振り向き、両手をデコピンのような形にした。奴が指をピンとはじくと、見えない衝撃波に吹っ飛ばされたように、フランとペトラが宙を舞う。


「ばっかだなぁ、おめえら。なんどやりゃ気がすむんだ?同じ手を食うわけねーだろ」


セカンドが手を振り下ろすと、二人はぐしゃっと地面に叩きつけられ、動かなくなってしまった。


「フランさん、ペトラさん……!」


ウィルが悲痛な声を漏らす。フラン……


「さあ、これで万策尽きたか?残念だったなぁ。なけなしの知恵を絞ったのによ」


今度こそ、セカンドはこっちに向けて歩き始めた。もう後十歩も進めば、俺たちの眼前だ。俺は歯を食いしばって、耐えた。

そう、耐えるんだ。奴に、こちらの思惑を諭させないように。顔に出てしまって、気付かれたら台無しだ。だから今は、耐えるんだ……


「……マグナ・ダイアンサス!」


ついに、待ち望んでいた声が聞こえてきた。瞬時にセカンドが振り返る。だがすでに、やつの剣は振るわれている!

ガキィーン!


「くっ……そが。なんでてめえ、動けてる……!」


「ちぃ……!」


ああ、惜しい!あと一歩のところで、黒い鱗に阻まれた。だけど、本当に惜しかった。あとほんの少し、セカンドが気付くのが遅ければ。


「行ける……行けるぞ!クラーク!」


全身を青白い光に包まれたクラークは、剣を再び握り直した。これにはさしものセカンドも、泡を食っている。


「クソが!潰れてろ!」


セカンドが上ずった声で叫ぶと、クラークの周囲の地面が、ボコンと沈み込んだ。それだけの重力が、彼を襲っているということだ。それでもクラークは倒れない。それどころか、剣を振り回して、セカンドを後退させたのだ。


「な、なんでだ!お前は確かに、オレの力を受けているはず!どうして潰れねえ!?」


「ああ……確かに、貴様の能力は発動しているよ……」


クラークの顔は、真っ赤だった。とてつもない圧力に耐えているかのように。


「だったらどうして……」


「ふん……磁力を操れるのが、貴様だけの専売特許だと思ったら、大間違いだ。僕は雷の勇者。貴様の力に対抗するくらいなら、僕にだって可能なんだよ……!」


「まさか……てめえ……!」


セカンドが目を見開くと、クラークは無理やり、顔に笑みを浮かべた。


「そうさ……貴様の重力に対抗するように、僕は斥力を発している……!」


「ば、バカじゃねえの。んなことやって、ただで済むと思ってんのか……」


セカンドが顔を引きつらせながらせせら笑う。それをクラークは一蹴した。


「だが、これで……貴様と、戦える!」


そう。クラークは、セカンドの重力と同じだけの力を、自らの体に与えているのだ。押しつぶす力に対して、持ち上げる力を掛けて相殺するという、理屈もへったくれもない脳筋理論。それは、セカンドの言った通り、力と力にプレスされるようなものだ。当然、クラークの体には想像を絶するほどの負荷がかかっているはず。


(どっちみち、長くは持たない!とっとと決めろ、クラーク!)


これこそが、俺たちの作戦の最終段階だった。クラークが雷魔法をもってして、セカンドの磁力魔法を破る。その為に、ずっとペトラとフランは肉弾戦を仕掛けていたのだ。



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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