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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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「……」


クラークは、自分の名前が何度も出てきたっていうのに、まったく反応を示さない。


「おい、クラーク……クラーク!」


「……」


ダメだ。俺がアドリアの方に顔を向けても、彼女も首を横に振るばかりだ。


「なんだってんだよ……こんな時に、腑抜けてる場合じゃないだろ!」


「よしてやってくれ……それだけ、彼女の死がショックだったんだろう」


くそ……なんなんだよ、ちくしょう!そんなこと、俺だって分かってる。俺だって、ショックに決まってる!けど、それで現実から目を背けたって、どうにもならないだろうが!


「……ちっ。くそ、勝手にしろ。今は、ダメになったやつに構ってる場合じゃないんだ」


俺がぼやくようにつぶやいても、クラークは全くの無表情だった。もう、誰の声も聞こえていないみたいだ……


「それより、これで全員揃ったのか?」


俺はクラークを無視して、アドリアに話しかける。アドリアは首を横に振った。


「いいや……私たちも、正確に把握できたわけではないが。おそらくだが、三の国の勇者と一緒にいた、ブラザーがまだ見つかっていない」


「あ……!デュアンか……」


そうか。彼は尊の仲間だったから、あの場にもたぶんいただろう。正直いきなり奇襲を掛けられて、それどころじゃなかったから、彼がいたかどうかすら定かじゃないが……


「でも、それなら……!」


ウィルがはっとした後、悲痛な声を漏らす。


「デュアンさんは、一人で落ちたってことですか……?」


「それは……アドリア。あんたたちとも、一緒じゃなかったんだよな?」


「ああ。だから私は、そっちと一緒だといいと思っていたんだが……」


俺は一縷の望みにかけて、フランとアルルカを見た。だがフランもまた、目を閉じ、首を横に振る。


「誰とも、一緒じゃなかったのか……」


俺は絶望的に、そうつぶやいた。アドリアが苦しそうに言う。


「……この中で、あそこからの落下に対処できるのは、ここにいる中の数人だけだろう。もしや彼に、非凡な魔術の才能があったりはしないのか?」


「……あってほしいけど、今、そんなこと言っても無意味だよな……」


俺はロウランと、クラークたちはライラと一緒だったから、なんとか死なずに済んだんだ。だが、デュアン一人だったら……


「そんな……デュアンさん……!」


ウィルが嗚咽を漏らす。彼とは色々あったが、それでも幼馴染だ。俺だって辛い。こんな別れ方って……


「デュアン……ちくしょう……!」


「……あー。水を差すようで悪いですが。もうそろそろいいですか?」


え?俺たちは一斉に顔を上げた。そこに、気まずそうな顔で立っていたのは……


「なんだか、申し訳ありませんね。あいにく死にぞこないまして」


「まじかよ……デュアン!」


デュアンが、生きてた!信じられない!俺は体の痛みも忘れて、デュアンに駆け寄った。みんなもわっと後に続く。


「デュアン、本物か!?アンデッドだったりしないよな?」


「僕にも信じられないんですよ。逆に訊きたいくらいです。僕、死んでませんよね?」


俺はデュアンの肩を何度も叩いた。それなりに強く叩いてしまったせいで、デュアンはうっと呻いている。だが、手はすり抜けないし、痛みがあるってことは、確かに生きている証拠だ。


「よかった、デュアンさん……本当によかった!」


「ははは!よかったな、ウィル!」


「えっ。ウィルさん、ひょっとして僕の心配してくれていたんですか?うぅむ、だったらいっそ、幽霊にでもなっていたら、彼女に会えていたでしょうか……そして今度こそ僕に……」


「はぁ?いい加減にしてください、このバカ!呪い殺しますよ!」


「デュアン、ウィルが殺してやるって」


「ええ!?」


なんにせよ、よかった!生存が絶望的だったからこそ、この再会は嬉しい。もっと言えば、これでクラークが正気に戻ってくれればなおよかったんだが……ちっ、ダメだ。そこまではうまくいかないみたいだ。


「でもデュアン、お前、よく無事だったな」


「いやまったく、僕にも不思議で……どうして生きているのか、さっぱりわからないんですよ」


「でも、ここに落ちてきたことは覚えてるんだろ?」


「それが、あの見えない力に押しつぶされた時、頭を強く打ってしまったようでして……気を失ってしまったんです」


え?それなら、気絶したまま落ちて無事だったってことか?ますます奇跡としか言いようがないな……


「あの、ところでなんですが。そう言うわけで、僕はあの後のことを、いまいちよく覚えていないんです。僕たちは、この真っ暗なところに落とされたんですよね?」


「ああ、うん。話すと長くなるけどな……」


「そうでしょうね。けど、みなさんご無事そうでなによりです。ところで、尊さんはどちらに?」


っ。束の間の喜びは、ロウソクの火のように一瞬で吹き飛んだ。俺たちの間に、冷たい風が吹き抜けたようだ。


「……?どうしたんですか?」


首をかしげるデュアン。そうか、気絶していたなら、尊がどうなったのか、デュアンは見ていないんだ……取り繕ってもしかたがないことは分かっているし、デュアンも当事者なんだから、知る権利はあるだろう。けど、なんて言えばいいんだ。尊は死んだ、セカンドの闇の魔法によって、ろくな抵抗もできずに殺されただなんて、とてもじゃないが……


「桜下くん?何があったんですか。尊さんは、今どこに?」


「えっと……」


俺が口ごもったことで、デュアンも何かを察したらしい。顔つきが変わった。うぅ、けどやっぱり……


「死んだよ」


っ!?声を発したのは、今まで一言もしゃべらなかった男。


(クラーク!?)


やつは、以前うつろな表情のまま、ぼうっと闇を見つめている。だが、確かに今、やつがしゃべった。


「死んだ……?勇者様、それはどういう意味ですか!?」


「言葉通りだ。尊さんは死んだ。魔王の手に掛かって、真っ黒に燃え尽きた」


「もっ、燃え尽き……?そんな、馬鹿な!」


デュアンはがっくりと膝をついてしまった。ああくそ、言わんこっちゃない!


「おい、クラーク!てめえ、どういうつもりだ!」


俺はクラークの肩を押さえる。こんな時になってもまだ、クラークは俺をまっすぐ見ようとしない。


「事実を、言ったまでだろ。死んだんだ、彼女は。あっけなく。虫けらみたいに」


「なっ、おい!ふざけんなよてめえ!」


「ふざけてなんていない。だから、これが事実だ。そっちこそ、誤魔化せば嘘になるとでも思っているのか?ガキじゃあるまいし」


こ、こいつ……!俺は怒りに我を忘れて、握り拳をぐっと引いた。だが、それを突き出すよりも早く……


パーン!


「っ……!」


「え……」


クラークがぶっ飛んだ。俺の前に割り込み、肩を激しく上下させているのは……


「み、ミカエル……?」



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


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