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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
17章 再会の約束
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23-1 闇の底

23-1 闇の底


「……生きてるか」


「うーん、死んでるの」


「そうか……ならなによりだ」


そんな意味の分からない会話をして、俺と、それからロウランは、くすっと笑った。とりあえず、お互い無事だってわけだ。俺はあたりを見回す。


「ここは、どこだろ?」


「わかんない。落っこちてきたってことだけは、わかるけど」


そうだな。あの最中で、分かったことと言えばその程度だ。

俺たちは、真っ暗で埃っぽい、地下室のような場所にいた。つっても、ここが本当に地下なのかは分からない。がれきといっしょに、深く、深く落下して、その果てに辿り着いた場所だ。まさか、そのまま地獄まで落ちてきた、なんてことないだろうな?


「よく無事ですんだな……ロウラン、お前のしわざか?」


「むぅー。しわざってなに、しわざって。アタシのおかげでしょ?」


ロウランはむうっと頬を膨らませた。彼女の周りには、ばねのような形にした合金と、ぐるぐる丸まって玉になっている包帯が、無数に散らばっていた。あれを体中に張り巡らさせて、衝撃を和らげたらしい。そういえば確かに、ここに落ちるまでに何度もバウンドしたような気もする。よくとっさにこんな方法を思いついたな。


「助かったよ。ありがとう、ロウラン」


「ふえ。珍しい、ほんとに褒めてくれるなんて」


「命を救われた時くらい、俺だって素直になるさ……」


正直、もうダメかと思った。おちゃらけてはいるが、ロウランだって怖い思いをしたはずだ。本当の彼女は、繊細で臆病だから。


「でも、ここにいるのは俺たちだけか……みんなが心配だな」


「うん……ごめんね。ダーリンを守るので精いっぱいだったの」


「いや、それを言うなら俺もだ。正直、周りを気にしてる余裕はなかったよ。情けないよな……よし、ちょっと待ってくれ。みんなの気配を探してみる」


俺は目を閉じて、意識を集中した。ロウランが固唾をのんで見守る。他の雑多なアンデッドならともかく、長く一緒にいた仲間たちの魂を見紛うことはない。みんなが無事なら、きっと魂の気配を感じられるはずだ。


「……いたぞ!みんな無事だ」


「ほんと!よかった……」


「あっちはあっちで、うまいことやったみたいだ。場所も、こっからそう遠くないよ」


気配を辿るに、仲間たちは二組に分かれているらしい。


「これは……アルルカとフラン。ウィルとライラが、一緒にいるみたいだ。合流にも、それほど時間は掛からないはずだ」


「そうなんだ。なら、よかった……けど」


「ああ……それで万事解決とは、ならないけどな」


みんなが無事なのは、いうなれば、スタートラインに無事に立つことができたというだけに過ぎない。


「魔王を……セカンドを、どうにかして倒さねえと」


口ではそう言ったものの、俺の言葉に勢いはなかった。つられて、ロウランも肩を落とす。


「まさか、あのサードって人の正体が、セカンドだったなんてね」


「ああ……正確には、セカンドがサードのふりをしていたんだな。くそっ!あいつが怪しいって分かってたのに!もっと注意しておけば……」


「ダーリン、仕方ないよ。誰だってあの状況で、後ろから襲われるだなんて思わないもん。それに……」


ロウランは言葉尻を濁したが、俺はじっと彼女を見つめて、続きを促した。今はただ、事実を粛々と受け入れるしかない。


「……すっごく、強かった。アタシ、金も、包帯も、少しも動かせなかった。もし床が砕けてなかったら。きっとアタシ、ダーリンを守れなかったの……」


ロウランの瞳が潤む。髪の色がさぁっと変わり、緑とピンクが行ったり来たりした。いかん、また例の“故障”の兆候だ。俺は急いで、ロウランの手を握った。


「ロウラン、お前のせいじゃない。油断した俺がいけなかったんだ。それに、指一本動かせなかったのは、俺も同じだし。あん中で動けたのは、フランくらいだよ」


「うん……フランちゃん、だいじょうぶかな。腕が……」


「……今は、よそう。とりあえず、本人は無事なんだし」


そう、無事なはず……それでも、黒い消し炭と化していくフランの腕は、俺の脳裏に焼き付いていた。それに、尊が……


「……」


「ダーリン……」


「……いや。いまは、とにかく前に進もう」


「……だいじょうぶ?」


「……正直、かなりきつい。けど、前に進まないと、そのまま倒れて動けなくなっちまいそうなんだ」


「……わかったの。じゃあ、まずはどうする?」


「ひとまず、このへんを調べてみようぜ。ここがどこかも分からないと、上に戻るにも戻れないし」


「ダーリン、大丈夫なの?歩けそう?」


「あったり前だ。この通り、ピンピンだよ」


ロウランは無言で体を寄せ、背中を支えてきた。……やせ我慢だっていうの、バレバレのようだ。

俺はロウランに支えられながら、探索を開始した。アニの青白い光に照らし出されるのは、ほこりをかぶって真っ白になったがれきと、そうでない黒いがれきのどちらかだ。そうでないやつは、さっき崩れた床の一部だろう。これだけほこりが積もっているから、よく使われる部屋とかではないらしい。上を見上げても、光は見えない。まっすぐ落ちてきたなら出口が見えるはずだから、曲がりくねって落っこちたみたいだ。


「がれき、がれき。それ以外は何にもないの」


「ああ。廃材置き場かなにか、なのかな」


「うーん。それよりもっとストレートに、ごみ置き場ってカンジなの」


「ごみ、ねえ。それにしちゃ、物が少なすぎる気もするけどな」


「確かに、吹き溜まりという意味では、間違ってはいない」


俺とロウランは、飛び上がるほど驚いた。前方から、声が聞こえてくる。俺は緊張しながら、そいつに呼びかける。


「だ、誰だ!」


「ふむ。一度見知った相手に再度自己紹介するときは、なんと言うべきかな」


はぁ?なんだ、この人を食ったような返事は……俺はアニの明かりを、その声のした方へと向けた。浮かび上がったのは、黒い服を纏った女の姿だ……あっ!こいつって!



つづく

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読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


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