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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
6章 風の守護する都
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2-3

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「うわあー!」


電撃は俺たちの足元で炸裂し、地面をふっ飛ばした。俺とライラはごろごろ転がったが、避けづらい分、そこまで威力は高くないらしい。幸い大したけがはなかった。


「このっ!」


蹴っ飛ばされていたフランが、再びクラークに飛びかかる。しかし今度は、クラークもそれに反応した。バックステップで距離を離すと、剣を真っすぐフランへ向ける。


「レイライトニング!」


「ぐぅっ」


ああ、フランに電撃が!フランの服はあちこち焼け焦げ、プスプスと煙が上がっていたが、本人に対したダメージは無いらしい。アンデッドは電撃にも強いんだ。


「クラーク!やっぱりあいつら、マトモじゃないわ!あなたの電撃を喰らってビクともしないなんて、絶対なにかのアンデッドなのよ!」


「みたいだね!アンデッド……そうか!ミカエル、僕の剣に“祝福”をかけてくれないか!」


「ふひゃ!は、はい!」


クラークがミカエルの前に剣を差し出すと、ミカエルは目を閉じて、何やらぶつぶつと呪文を唱え始めた。


「ピュアダクリア!」


ミカエルの手からキラキラした光が放たれ、クラークの剣をより一層輝かせる。剣を強化したのか……?その時、ウィルが上空で鋭い叫び声を上げた。


「あっ!」


「ウィル?どうした!」


「ピュアダクリア!(ひじり)属性の魔法です!物体を祝福し、神の聖なる力を宿す呪文!」


「つまり、どういう……?」


「あの剣にふれちゃダメです!アンデッドは浄化されてしまいます!!」


「な、なんだって!」


くそ、そんなのありかよっ!アンデッド特効じゃないか!


「これで形勢逆転だ。さあ、覚悟しろ!」


クラークは不敵に笑うと、剣を振りかざして突撃してくる。くそ、防ごうにもあの剣自体に触れちゃまずいんだろ!?


「フラン、退くんだ!」


「逃がすか!」


クラークが剣を一振りすると、剣先からキラキラ輝く斬撃が飛び出してくる。フランはすんでのところで頭を下げ、ギリギリでそれをかわした。フランの髪の毛が数本斬撃に触れると、髪の毛は灰になって崩れ落ちてしまった。


「どうする!あれ、結構やばいよ!」


フランが駆け戻って来るや否や、焦った声で叫ぶ。俺が口を開こうとした瞬間、クラークが畳みかけるように叫んだ。


「ライスライン!」


うわ、またあの地を這う電撃だ!


「みんな、死ぬ気でよけろー!」


ドドォン!あちこちで地面が爆発したものの、幸い灰になってしまった仲間はいなかった。


「くそ!ライラ、あいつの魔法を、少しでいいから防げないか?」


「う、うん。わかった!」


ライラは目を閉じると、地面に手をついて呪文を唱え始めた。その間もクラークの猛攻は止まることを知らない。またしても電撃が飛んできた!ギリギリのタイミングで、ライラが叫ぶ。


「キャメルキャメロット!」


ズザザアアア!間一髪、俺たちと電撃との間に砂の防壁が立ちふさがった。防壁が電撃を受けてぐらぐら揺れる。


「これ、そんなに長くもたないよ!」


「十分だ、少しでも時間が稼げれば!みんな、俺に考えがある。聞いてくれ」


俺は仲間たちの顔をぐるりと見まわした。今この状況で、最善の策。それは……


「逃げよう!」


「はぁーっ!?」


ウィルとフランがユニゾンして叫ぶ。


「何考えてるの!あんなやつに言われっぱなしでいいわけ!?」


「いいさ、そんなの言わせておけばいいんだ。それよりも、今戦ってお前たちの誰かを失うことのほうが、俺は何万倍も嫌だ」


俺の声のマジなトーンに、フランは開きかけた口をつぐんだ。


「さすがに相性が悪すぎる。あいつらから逃げようが倒そうが、俺たちの目的は達成できるんだ。だったらより安全で、手間のかからないほうを選ぼう。この壁が壊れたら全速力で走るぞ。ウィルとアニ、あいつらにありったけの妨害魔法を撃ってくれないか?」


「で、でも……」


その時、壁の向こうでものすごい閃光が上がった。砂の防壁は危なっかしくぐらぐらと揺れ、ついに崩れ落ちてしまった。ザザザァ……

壁の向こうでは、クラークがバチバチと電撃をチャージしている。もうぐずぐずしていられない!俺はありったけの声で叫んだ。


「走れ!」


ダダダッ!俺が走り出すと、仲間たちもそれに続いた。突然背を向けて走り出した俺たちを見て、クラークたちはしばらくぽかんと口を開けていた。


「……あ!に、逃げたわよ、クラーク!」


「あ、う、うん!待て、卑怯者め!」


「わはは!三十六計、なんとやらだ!あばよ、勇者さん!」


一目散に逃げだす俺たちの後を、クラークも当然追いかけようとしてくる。それを見てすかさず、俺は目を覆って、体をくるりと反転させた。


『フラッシュチック!』


パァー!アニから目もくらむような閃光が放たれる。俺が振り返るのと、アニが呪文を唱え終わるタイミングはどんぴしゃだった。息ぴったりだよな、俺たち!

俺は目を覆っていた手をどけると、再び全速力で走り出した。背後からはクラークたちが目をつぶされ、うめく声が聞こえてくる。


「ざまーみろ!せいぜいそこで一晩明かすんだな!」


俺が有頂天に笑ったとたん、プシュっと空を裂く音がして、俺の足元に矢が突き刺さった。ひえっ、声を頼りに撃ったのか?余計なこと言うんじゃなかった。俺はそれこそ、尻に火が付きそうな勢いで足を動かした。後方からは次々とヤケクソ気味に矢が飛んできたが、そのすべては明後日の方向に飛んでいくか、エラゼムの剣に切り落とされた。振り返れば、クラークたちの姿はずいぶん小さくなっていた。


「やった、逃げ切ったぜ!」


「……待って!まだあいつ、あきらめてないよ!」


フランが後ろを振り返りながら叫ぶ。目のいいフランには、クラークたちの動きが見えているのだろう。


「けど、これだけ距離を離したんだぜ?いまさら何を……」


俺がそこまで言いかけた、その時だった。視界がふっと暗くなった。いや、夜だから暗いのは当たり前なんだけど、さっきまでは星明りが、山頂の澄んだ空気を通してまたたいていたんだ。けど今は、頭上を鉛のような黒雲が覆ってしまっていた。こんな雲、いつの間に湧いてきた……?


ピカッ!


「っ!」


黒雲が光った!おい、まさかあれ、カミナリ雲とか言わないだろうな……?


「ま、魔力がすごい集まってるよ!」


ライラが天を仰ぎ、震える声で叫んだ。黒雲はゴロゴロと低い太鼓のような音を響かせ、厚さを増していく。遠くから、クラークの怒鳴り声が聞こえて来た。


「パグマボルトォ!」


ピカッ!ガガガガーーーン!

目の前が真っ白になった。俺は手足から力が抜けていくのを感じた。どちらが空で、どちらが地面なのかもわからない。


(―――っ!)


頭の奥のほうで、何かがちかちか光っていた。おぼろげで、輪郭のない、古い記憶……


(だめだ……)


体ががくんと傾き、視界が九十度になった。


それ(・・)は、思い出しちゃいけない……)


俺の体は、大地に吸い寄せられるように、重力に従ってゆっくり落ちていく……




つづく

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【年末年始は小説を!投稿量をいつもの2倍に!】



年の瀬に差し掛かり、物語も佳境です!

もっとお楽しみいただけるよう、しばらくの間、小説の更新を毎日二回、

【夜0時】と【お昼12時】にさせていただきます。

寒い冬の夜のお供に、どうぞよろしくお願いします!


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Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、

作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


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