表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/860

1-3

1-3


俺は三人の仲間のうち、まずはフランの方に目を向けた。フランは河原の砂の上に腰を下ろし、足元に生える小さな花を手袋の指先でいじっている。


「フランは、高機動力・高火力の、うちの切り込み隊長だ」


『役割でいうと、尖兵ですかね。先行して敵陣に突っ込み、後続の道を開く』


「うん。怪力と猛毒の鉤爪の前じゃ、並みの鎧は歯が立たない。足も早いし、目もいいから、一番槍にぴったりだ。けど一方で、防御の面では隙があると思う」


『防御面ですか?ゾンビの防御力となると、何とも言い難いですが』


「そう。フランはエラゼムに腕を吹っ飛ばされたり、なにかと危ない場面が多いんだ。けど死なない不死性で、すべてをチャラにしてる。骨を切らせて肉を断つスタイルっていうのかな」


『アンデッドであることを考えれば、理に適っていると言えますね』


「ああ。そういうところも、彼女が先頭向きなところだと思うよ」


俺は次に、切れ味の悪いナイフでベーコンと悪戦苦闘しているウィルを見た。


「次に、ウィル。あいつは何といっても、幽霊であることがでかい。誰にも見つからないのがどれだけ便利か、昨日で思い知ったよ」


『そうですね。兵種でいえば諜報か密偵、相手の混乱や攪乱がメインですか』


「壁をすりぬけての情報収集、魔法での不意打ち、憑りついて相手を操る……器用さで言ったら、間違いなくトップだな。反面、攻撃力は最低だけど」


『ゴーストとは、本来そういうモンスターですよ。攻撃魔法を使えたら、話は違ってきたでしょうが……』


「ま、そんなに万能キャラはそういないってこったな。メインで張るよりは、裏方で暗躍するタイプだ」


そして俺は最後に、ウィルが起こした焚き火に小枝を放り込むエラゼムを見た。


「エラゼムは、もう見た目からしても、正統派騎士って感じだよな。高い防御力、剣の超絶技巧。単純な強さなら、間違いなくエラゼムが一番だよ」


『末恐ろしいことです。たかがレイスがそこまでの実力を身に着けるなんて……』


「俺たちにとってはラッキーだったじゃないか。けど、エラゼムは足が速くない。鎧を着てるんだから当然っちゃ当然だけど。だから前衛よりは後衛、詰めやしんがりが向いてるのかなって」


『なるほど。後方にいれば、主様の近くにいることもできますね。彼の技術力ならば、護衛としても最適でしょう』


「だよな。ガード役はエラゼムかなって思ったんだよ。で、そうなると残るは俺とアニだ」


『私たちもやるのですか?主様は最重要人物になるのですから、別に戦闘はしなくても……』


「ダメだ。トータルバランスを考えるんだから、当然俺たちも含まれていなきゃ。アニは、補助魔法が得意なんだよな」


『得意というか、それしかできません。私が唯一扱える属性である、無属性魔法の大半は攻撃に適していません。魔力量も多くないので、威力も出ませんし』


「けど、使えるってだけでも大きいよ、魔法ってのは。アニのおかげで、一緒にいる俺にも役割ができるしな。あいにくと俺は、専門職だから……」


『専門職、まあそうですね。ある意味究極の専門です。主様のネクロマンシーがなければ、私たちの共通項は無くなってしまうんですから。私たちが一つの軍団であるためには、主様の存在が必要不可欠です』


「まぁ、な。“玉”がとられちゃゲームにならないし。残念なのは、戦力面では俺が一番役に立たないってことだけど。今はそれについては保留しよう」


もう悩まないって決めたからな。もっと強くなって、それが気にならないくらいになってやるさ。

俺は流木からぴょんと飛び降りると、棒切れを拾って地面に図を描いた。


「つまり、いままでの内容をまとめ、その上で俺が考える陣形に配置すると、こうだ。まず先頭にフラン。その後ろに、俺とエラゼム」


俺は△を地面にかくと、その下に◇と○を隣り合わせてかいた。


「俺がやられちゃオシマイだから、エラゼムには俺のガードになってもらう。攻撃はフランが担当だ。そして、ウィルは適宜、最適な場所へ配置」


俺は三つの図形から少し離れたところに、×をかいた。


「ウィルは補足されない上に飛べるから、戦場のどこへでも自由に行ける。基本的には、フランのサポート目的で敵を撹乱」


俺は△と×の間を矢印で結んだ。


「と、いうのがとりあえずの展開図なんだけど。ここまでで、アニはどう思った?」


『ふむ。各死霊たちの役割、そして分配については、ほとんど主様と同意見です。現状は、これでいいんじゃないでしょうか』


「含みのある言い方だな。聞かせてくれよ」


『ええ。前にもこんな話が出たかと思いますが、この陣形は遠距離攻撃に弱すぎます。相手に距離を置かれると厳しいでしょうね。弓、投石、大火力の攻撃魔法……』


「ああ、そんな話をしたっけな。それは、こっちに魔法で攻撃できるやつがいないから?」


『それもあります。そして、魔法を防ぐすべもありません。いくらあの騎士の盾でも、吹き上がる炎やほとばしる雷までは防げないでしょう』


「ふーむ、なるほどなぁ」


俺は地面にかいた図を改めて見下ろした。いくらフランの健脚でも、一瞬で四方八方の相手はできない。遠距離攻撃部隊に二手に分かれられただけで、俺たちは一気にピンチになる。


「とすると、俺たちに今必要なのは……遠くの敵を攻撃できて、かつ相手の魔法をかき消せる力を持ったやつ……つまり、魔法使いだな」


『ただの魔術師ではダメですね。凄腕の、を頭につけなければ。その二つを同時にこなせる魔術師は、そうほいほいいるものではありませんよ』


ぬう。俺は地面に☆を、他の図たちから離れたところにかいた。


「この星印くんは一人じゃなくてもいいかもな。攻撃と防御役で、一人ずつとか……」


そこまで言って俺が顔を上げると、目の前に銀色のつむじがあった……へ?気づいたら、フランが目の前にしゃがみこんでいる。その後ろに腕を組んだエラゼムが、となりにはウィルがしげしげと地面を覗き込んでいた。


「な、なんだよ。みんないたのか」


「だって、なんだかゴソゴソ二人でやってるんですもん。私たちのことを話していたんですから、聞いてもいいでしょう?」


ウィルが当然です、と胸を反らす。隠し事をされたと思っているのか?


「別に隠してたわけじゃないんだけどな。ちょっと、パーティの見直しをしようと思って」


「みたいですねぇ。なんとなくわかります」


ウィルが地面にかかれた図形たちを見下ろす。エラゼムががしゃりと鎧を鳴らしてうなずいた。


「理にかなった陣形のように見えます。少々お話を聞いてしまったのですが、魔術師の増員を検討しているとか」


「ああ。この先、魔法使いのじいちゃんの幽霊とかに出会えればいいんだけど」


「魔術師は希少な人材ですからな。そのうえで並み以上の腕前となれば、少々難しいかもしれませんが……その分加入ができれば、頼もしい戦力になってくれるでしょう」


「おう。ふふふ、今から楽しみだぜ」


「……まぁ、それもいいですけど。とりあえず、朝ごはん冷めちゃいますけど?」



つづく

====================


読了ありがとうございました。

続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。


====================


Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、

作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。

よければ見てみてください。


↓ ↓ ↓


https://twitter.com/ragoradonma


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ