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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。  作者: 万怒羅豪羅
4章 それぞれの明日
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4章 モンスター図鑑

4章 モンスター図鑑


この図鑑は、ギネンベルナ王室が編纂した、全国に生息するモンスターの特徴、生態、戦う際の注意事項などを記したものである。これを読めば、読者諸君は危険なモンスターに対する最低限の知識を得る事が出来るだろう。ただし、留意しておいてほしい。ここに記されているのは、あくまでも多種多様なモンスターの一側面に過ぎない。諸君が実際に剣を握り、モンスターと相対する際には、必ずしも本に書かれた知識だけが全てでない事を忘れないで頂ければ幸いだ。



●“危険度”について 



そのモンスター一体のみに対して、人間が戦いを挑む場合の脅威の指針。


S……生物の頂点に位置する種族。人間が大軍を成したとしても、討伐は極めて困難。ドラゴン種などが該当。


A……非常に凶暴。人間単体では歯が立たず、屈強な戦士たちによる軍隊の形成が必要。オーガ、ゴーレムなどが該当。


B……危険だが、熟達した知識と技量があれば討伐可能。ただし一人では苦戦を強いられるであろう。ライカンスロープ、トロールなどが該当。


C……単体では弱く、一人前の戦士なら十分応戦可能。だがこのランクのモンスターは群れを成すことが多く、個としての弱さを補っているので注意されたし。オーク、ゴブリンなどが該当。


D……極めて脆弱、もしくは危険性のない生物群。



●モンスター詳細



・バジリコック

肉垂目 蛇鶏科 危険度D

雄鶏の体に、蛇のような鱗と尾を持つ。

普通の雄鶏より脚の力が強く、引っ掻かれると大怪我になりかねない。取り扱いには専用の防具の着用が推奨される。

バジリスクとコカトリスの中間の様な様相をしている。生態はあれらに近く、この種もヒキガエルに“托卵”する。通常ヒキガエルは卵を暖める様な行為はしないが、バジリコックの卵を見つけると丸呑みし、腹の中でそれを“暖める”(水に浸かろうとしない、無闇に動き回らないなど)。九日ほどで卵は孵化し、ヒキガエルの腹を食い破って出てくる。その特異な生態以外は鶏と大差無く、バジリコックの肉は滋養強壮に効果があるので、各地で盛んに飼育が行なわれている。


・スタージュ

双翅目 蝙蝠蠅科 危険度Cー

コウモリの様な羽を持つ、大型の蚊。

動物の血を吸う。麻痺性の毒を持っており、一度刺されると体の自由が効かなくなるので大変危険。毒が回るには四、五分かかるので、刺されたら速やかに本体を退治すべし。

本来の名前はスタージ。誤ってなまった名称が広く伝播した結果、本種の名前として定着してしまった。またその際、小鳥のような可愛らしい生物であると言う間違った認識も広がってしまい、スタージュが昆虫である事を知らない人も多い。卵はぷりぷりとして栄養価が高く、食材としても利用される。その場合もやはり鳥類の卵として売られる事が多いようだ。


・カイナデ

十脚目 半脚科 危険度Dー

五本足の蟹。その姿はまるで白い人の手の様。後述の特性により、一家に一匹は必須とされる。

温厚な性格で、生き物を襲う事はないが、食用には向かない。間違っても生食はしない様に。

大陸暦百年頃に発見された、比較的新しい種。この種の発見は、都市部の衛生環境を劇的に改善するきっかけとなった。普段は山中の洞穴や深い裂け目の中に潜み、日中地上には滅多に出てこない。脚の数が不揃いな事以外は一見他の蟹と変わらないが、この蟹最大の特徴はその食性にある。この蟹の主食は他の動物が出した排泄物、いわゆる糞で、糞尿を体に取り込み、有機物を濾した上で、無臭のペレット状にして排出する“糞食浄化者”(スカラベンジャー)としての機能を持つ。この特徴に注目して開発されたのが、現在広く普及しているカイナデ式自浄トイレである。陽の光が届かない穴の中でも平気な生態を利用し、トイレの汲み取り部分に放り込んでおけば勝手に糞尿を掃除してくれるのだ。生息環境に近づけるために、タンク部分にはおがくずなどを入れておくのが好ましい。

一年に一度、決まった時期にトイレを抜け出してしまい、生まれた山へ帰り繁殖をする。だが、トイレに留まるよう無理強いをしたり、いじめてはいけない。カイナデは自分の住処のトイレのことを覚えていて、住み心地のいいトイレには必ず帰ってきてくれるからだ。


・アンフィスバエナ

有翼鱗目 双頭蛇科 危険度C+

尾の先が頭になっている、小型の竜の様な蛇。

尾の方の牙に幻覚を引き起こす神経毒がある。姿勢によってはどちらが頭でどちらが尾なのか分かり難く、慣れないと対処が難しい。

ぱっと見は小型のワイバーンに似ているが、尾っぽの先にもう一つの頭を持つ。この頭にも脳があり、本体の頭(この表現が適切であるかは明言できない。理由は後述)とは別に意識があるようだ。どちらかの首を落としても、片方が無事であれば生存に問題はなく、本体機能を瞬時に入れ替える、もしくは両方が本体機能を持っていると推測されている。

牙の毒は麻酔薬として使用される事がある。ただし依存性が強く、薬としての処方、および毒の採取は国家認定資格が必須である。



●既存のモンスター



・メイルレイス

死霊目 魂魄科 亡騎士亜科 危険度C

レイスが戦死者の鎧などに憑依した姿。

実体を持たないレイスと違い、剣などで武装している事が多い。中身は所詮レイスなので、慌てず落ち着いて対処されたし。

レイスは本来実体を持たないアンデッドであるが、稀に強い死の気配を帯びた物品に憑依する事がある。メイルレイスは、その中でも鎧や甲冑など、人型の武装に取り憑いた個体である。中身は入っていようがいまいが気にしないようだが、中身入りだとゾンビと見分けが付かず、紛らわしい。得物を持つことから通常のレイスよりは注意が必要だが、剣の技量などは到底再現出来ないので、そこまで脅威ではない。むしろ恐ろしいのは、戦死者の鎧が動き出す事で、あたかも死者が蘇ったように見える事である。ゾンビ同様、生前の姿を保ったまま動かれることは、我々生者に多大なる恐怖をもたらす。このモンスターに遭遇した際には、まず相手がモンスターであることをしっかりと認識することを心がけたい。


・ゴースト

死霊目 人魂科 危険度C

霊魂タイプのアンデッドの内、人間の思念が霊体化したもの。

レイスと違い明確な自我を持つ為、悪意を持って人間に害をなす個体もいる。実体はないため害は出にくいが、体に憑依されたり、呪いを受け続けたりすると命に関わる場合もある。

人間の魂が変質したモンスター。自然死では発生しにくく、事故など突然の死によって生まれる事が多い。多くのゴーストは死を受け入れる事で成仏するが、稀に生前の執着が強い場合は、この世に留まり続けて無念を果たそうとする。しかし霊魂タイプのアンデッドの行き着く果てがレイスであるように、いずれ自我を失い、呪いを振り撒くだけの怨霊と化す。そうなる前に神殿に連絡し、荒ぶる魂を宥めてもらうのが得策だろう。また極めて稀に、自我を保ち続けてより上位のアンデッドに変質する場合がある。いずれもゴーストより対処が困難なので、そうなる前の浄化を心がけるべし。


・ゾンビ

死霊目 屍人科 危険度C

もっとも一般的なアンデッド(生きていない)モンスター。元が人間で、かつ完全には腐敗していないものが該当する。

人間だった頃の能力と理性をほとんど失ってしまっているため、非常に脆弱。ただし外傷では倒しづらく、攻撃の際は火で燃やすか、銀製もしくは聖水で清めた武器が有効。

アンデッドモンスターとは、死後誰からも弔いをされなかった死者が変容した存在である。生前の記憶に基づき、所縁ある地に巣食ったり、普段と同じ行動を取ろうとする。この時、生前の執着や後悔の念が強いほど、強力なアンデッドになりやすいという報告がある。ゾンビはベースが人間ということもあって、もっとも遭遇機会が多いアンデッドと言えるだろう。墓地が整備された市街地ならともかく、旅先で野ざらしの故人を見つけた場合は、ゾンビになる前にきちんと弔いすべし。

ちなみに、鳥や獣のゾンビの報告例はほとんどない。死者へ祈る習慣が獣には見られないことから、ゾンビ化には“後悔の念”が重要なのではないかとする説が挙げられている。


・ドラゴン

逆鱗目 危険度S

爬虫類のような鱗、強靭な四肢、皮膜の翼を持つ最強のモンスターの総称。体の何処かに一枚だけ、向きが逆さの鱗が生えている。

あらゆる環境に適応し、普通の生物が生息できない極圏や深海でも活動可能と言われている。その分類は多岐にわたり、種によって性質は大きく異なる。一貫しているのは、いずれも非常に凶暴であることと、比類なき知恵を持っていることである。個体数は非常に少ないが、もしも暴れたならば一国が滅びかねないほど危険な存在。

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