野外活動6
「見覚えのある所まできたけど、歩けそう?」
リアルに興味がないとは思っていても背中は天国だった。
「はい…」
背負った状態なので当たり前だけど、耳元で残念そうな声を出されるとまだ……ダメだ、考えるな。
「そ、そっかもうハンカチ取ってもいいけど、どうする?」
「少し痛くて靴を履きたくないのでこのままでもいいですか?」
「それじゃあ肩もって、ゆっくり帰ろうよ」
「…」コク
ちなみに靴はゴミが出た時ように持っていたビニール袋に入れて、稲葉さんのカバンの中にある。
そのカバンは稲葉さんは自分で背負い、俺は手で持っていた。
「はぁ…はぁ…」
やっぱり片足で歩くとしんどそうだ、何か楽にする方法ないかな?
カバンの中にも水筒とタオル、軽いものしか入ってないから問題なくここまで来れたけど…
「カバン持つよ」
「大丈夫…」コクコク
「遠慮しないでもいいよ、歩きづらいでしょ?」
「それじゃぁ、よろしくお願いします」ぺこり
「あと少し、頑張って」
「はぁ…ふぅ」コク
歩いているだけですごい汗かいてるみたいだし、痛いんだと思う。
「あの…私の所為で競争が…」
「競争? あぁ」
そういえば将と競争していた。
「いや、あれはノリというか、売り言葉に買い言葉だから、気にしないでいいよ」
将とは何かあるとあんなこと言って競争したりして遊んでいるから本当に気にしないでほしいんだけど。
「それはよかった…です。 今日はホントにごめんなさい、迷惑をかけました」
「迷惑って困った時はお互い様だから、俺も困ったら頼らせてもらうよ」
なるべく恩着せがましくないように言ったつもりだけど…
「は、はい。 絶対、頼ってください」
頼られるの好きなのかな?
逆効果だったかも。
「そうするよ、こっちこそ今日はごめん。 怪我させちゃったし」
もう宿舎も視界に入り、こんなに話すのも最後だと思う。
想定よりも時間がかかってしまったし、何より疲れた。
話すのが苦手そうだからリードしようと頑張ったけど、結局怪我させてしまった…。
「いえ! これは私が悪いので、おんぶしてくれて助かりました」
「それならよかったよ」
「あの…私、重くなかったですか?」
反則の王道セリフが来た。
どう答えても負け確定だけど…どうしよう。
えと、確か本では…
「暖かくて安心できたよ……」
恥ずかしー!
「そ、それってあの本の…」
「あはは~」
「あの、それって彼女だから許されるセリフだと思います…」
「確かに…ごめん」
調子に乗ってしまったかも…。
「冗談ですよ、空気が重かったので。 だから回答として百点です!」
なんだ…ふぅ。
確かに、感謝より謝罪をする空気で決していい空気ではなかった、正直助かる。
「でもでも、そのセリフって重いって思った主人公が誤魔化すためにいったセリフでしたよね?」
「え、もう…ごめんって」
「からかい過ぎました…、あの…学校でもまたお話してくれますか?」
今日一日話して見て元気で気づかいができる子だとわかった。
だから、この野外活動が終わったら学校では友達と話せるようになるだろうけど…
「う、うん。 もちろん俺でよければ」
そんな言い方セコイ。
断ることはないけど…俺みたいなオタクはそんな可愛い声で、そんなこと言われたらドキドキする。
「はい! ありがとうございます」
本当は話すのが好きで、気づかいもできる。
なのに過去のトラウマか何かの所為で自分を出せないでいるんだろう。
……
…
「お帰り颯太、あの娘とあんなにくっ付いて、付き合ってたのか?」
何とか宿舎に帰って来れた、すぐに稲葉さんは保険の先生のところにいったしもう大丈夫だと思う。
当然戻って来たのは学年で最後だし、俺たち二人がなかなか帰って来てないので話が広まっているらしい。
「違うって、稲葉さんが途中で捻挫して、それで」
今日の話をする。
「そういうことか…大変だったな。 捻挫は痛いんだよな~」
ずっとサッカー部の将は痛さがわかるらしい。
「なんだ、颯太君二次元しか興味ないって強がってるのかと思ったよ」
二人とも心配してくれたのは伝わるけど、からかい過ぎだろ。笑いながらだったら許されると思って。
「まぁ、でも帰って来れてよかったぁ。 つっかれたー」
「お疲れ様」
「勝負は俺の勝ちだけど、俺の負けでいいよ」
「はい? どうしたんだよ」
「いんや、奢ってやるからゆっくり休めよ」
からかいはするものの、やっぱり良いところはあるじゃん。
*
風呂に入った時には叫びそうになるぐらい、気持ちよかった。
晩飯もおいしかったし、これで野外活動も明日で終わり。
あとはお楽しみの寝る時間。
「さてさて…今日もお願いします」
昨日は新しく買った音声作品だったけど、今日は俺のお気に入りの作品を聞く。
「ふぁぁ…足痛いな」
一日で結構歩いたし、かなり足が筋肉痛になっている。
そんな寝ずらい日には声の可愛い子に甘やかされたいと思う。
そんな時におすすめなのがこの音声作品。不可能を可能にし、心を満たしてくれる。
「絶対みんな聞いたほうがいい…」
でも唯一ダメなところがあるとすれば途中で寝てしまったりするので最後まで聞けないところ。
まぁ、俺の場合後で全部聞き直すから一緒…zzz
次で野外活動を終わりです。
読んでくれてありがとうございます。
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