ペア2(最終話)
ー声優を続けるつもりはない。
紬ははっきりそう言った。
「紬…、どうして」
「声優はお母さんが友達ができるぐらい私に自信がつくようにって初めました。
でも今は将君や司君、委員長に林さんそれに颯太君! 皆仲良くしてくれます」
「……」
紬には声優を続ける理由…
「学校の人とお話できるぐらい自信もついたんです」
「そ、それならもっと…」
「でも、自信がついたはのは声優で誰かに褒められたからでも、作品が売れたわけでもありません。
自信をくれたのは颯太君です。
だから私はもういいんです。颯太君がくれた自信が誰かの心無い一言で傷つかないように…」
これが答えだと、もう自分の中はっきりと話しが完結している顔だった。
「動画…」
もう思い残すことはないと、そう言うのなら
「どうが?」コク?
そんな悲しくて、何かを諦めた顔をしないでほしい。
俺は…
ーー笑顔で満足そうに笑う紬が好きだ。
「そう、ネットに上げた動画見た?」
俺ができると思ってやった例の’あれ’、音楽に詳しい人…バンドをしている司の知り合いなんかに聞いて協力して作ってもらった。
ーー動画。
バンドや仲間で動画を作ることもある最近聞いたことを思い出した。
だから、動画を作りたいなら音楽に詳しい人に聞けば、音楽の権利や編集に詳しいと思った。
誰に聞いたか…司が前に話してくれた。
そのことを忘れていた俺は知識だけが頭にあって、誰に聞けばいいか分からなかったけど、思い出せた。
「動画ってなんですか?」
こんな動画を作るのは恥ずかしかったけど、司にジュースを奢ってお願いした。
「これ…」
スマホで動画サイトにログインし、公開した動画を紬に見せる。
「『対応が悪いと炎上した声優に依頼して見た』って。 颯太君!?」
紬が驚いた理由、それはこの動画が再生回数にある。うん、「バズった…。
動画のないようは簡単で、炎上まで…紬の対応が悪く、納品されたデータもノイズだらけ…の経緯、これまでの作品紹介、今回の取引内容に、作品のPVと続く内容でドキュメンタリー風にまとめた。
さらに動画の最後には『偽の情報で炎上し、辞めさせられたようなもの。 これでいいのでしょうか?』と締めくくった。
ここには司の知り合いの力も借りて、相手に考えさせて印象に残るようにBGMを工夫した。
もちろんこの動画は彩さんにも協力してもらって作った。
本当に何から何まで、使った曲も編集の仕方も、内容も自分一人ではできなかったけど、何もできなかったわけじゃない。
「ここ見てよ、高評価の数」
「…こんなに…」!!
それは数万単位で、今も少しずつ増えている。
この動画がバズったおかげで、音声作品を知ってもらえたと言っても過言ではない。
さらに音声作品を期間限定で割引をしたことで誰でも駄菓子屋ぐらいの値段で買えることと相まって、音声作品の売り上げは右肩上がり。
売れればそれだけ、結ちゃんのことを知ってもらえたということ。
そうなればあとは…
「コメントも読んで」
この動画はいろんなサイトに流して、中学の時の小説仲間にもコンタクトを取って広めてもらったりしてできる限りを尽くした。
「え…」うるうる
紬が泣きそうに…いや、涙をながらスクロールする画面にはーー
『辞めるなんてもったいない』
『もっと聞きたい』
『買いました』
『これは寝落ち確定の声、おや…zz』
『寝てて草』
『もったいない』
などなど、この他にも千単位で結ちゃんの引退を惜しむ声があった。
「そ、颯太君…グスっ」
「もし紬に声優をする理由がなくなったとしてもさ、数千、数万の結ちゃんのファンが紬の声を求めてるってことじゃダメかな?」
「ぅぅ、ぐすぅ」
この様子だと本当にこの動画のことは知らなかったようだ。
あまり見ないようにしてたのかもしれない。
「これからは声優をして、俺と一緒に音声作品を作ってほしい」
「はい…、私で…ぐす、よければ」
できるだけ泣いている紬の顔を見ないようにしながら、背中を軽く叩いて落ち着くのを待った。
まだ俺の戦いは終わってない。
「颯太君、ありがとうございます。 えへ、私…」
泣いたのが恥ずかしいのか、頬を真っ赤にしながらスッキリとした笑顔を作った、その頬と笑顔はもう沈んでしまった夕日を思い出させた。
「あの…颯太君、もし私がこのまま声優を辞めたとして…声優じゃない、颯太くんの好きな結ちゃんじゃない私は嫌いですか?」
上目遣いで、何か距離を探るように聞いて来た紬は不安そうだ。
「紬は紬だから変わらず…」
「変わらず? なんですか?」えへ
親子を感じさせるSッ気のある表情。
でもその声は結ちゃんで俺の好きな紬の声…。
俺が紬を好きだってことはもう気づいてるだろう、そうだとすれば嫌そうには見えない。
言ってもいいのかな、関係が悪くなるかもしれないのが怖い。でも俺は紬に言いたい…
「紬、俺は…」
恥ずかしさからか、言葉がスッと出てこない。
それを見た小悪魔みたいな可愛い笑顔の紬が…
「冗談ですよ、えへ。
颯太君、私、いつも助けてくれて…、自信をくれて…、横に居てくれる颯太君が…「紬!!」
紬はゆっくりと、思いを噛みしめるように言った。でも俺はそれを遮った。
俺が恥ずかしがって言えない一言、だけどそれは俺が言わないといけない。
いや、言いたい。
だから紬が最後まで言う前に遮った。
いつも助けてくれて。
気を使ってくれて。
可愛くて。
俺の推し。
「紬、台本で告白のシーンあったの憶えてる?」
「え、は、はい」
「だったら、今度は俺の番。
紬、声優だからとか、声がいいとか関係なく。
気配りができて、天然でおっちょこちょいな紬が好きです。
ーー俺と付き合ってください」
「もう、褒めてるんですか?」グスッ、えへへ
紬は感極まったのか、泣いたまま俺の胸に飛び込んできた。
「もちろん声も好きだけど」
「わかってます」
顔を上げた紬は、嬉しさがあふれて仕方がないと言わんばかりの最高の笑顔で…
「私も颯太君が好きです」
偶然ペアになったところから始まり
――本当のペアになった。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
ここまで、続けて来れたのは間違いなく読んでくれるあなたが居たからです、お世話になりました。
特にブックマーク、評価、誤字雑事報告などしていただいた時は本当に読んでくれる人がいるんだ、書いてもいいんだと元気をもらいました。
これまでしてくれた方、これからしてくださる方全員のこの気持ちのお返しとして、幸せが訪れることを陰ながら願っています。
これからは”なろう”ではなく、何処かでシチュエーションボイスや音声作品の台本を書くと思います。
どこかで”どらむかん”の名前を見ましたら、その時はまたよろしくお願いします。
(近々音声作品だしますw)
それと番外編を書くかもしれないので、まだブックマークしてないよーって方よろしくお願いします。
では最後に、このあとがきまで読んでくださった方も読んでくださらなかった方も
ーーまたどこかで(*- -)(*_ _)ペコリ




