お仕事5
「ゴクッ…、ゴクッ…ふぅぅ」
水を飲んで休憩し、演じているイメージや声の雰囲気を忘れないうちに次に入ります。
第三話『特別な関係』
ここからは好きだと自覚したヒロインという設定を常に頭に置いておかないといけません。
それにここからは私達の思い出の枠を外れます。
実話を外れ、いえ通り過ぎて
音声作品として言うと日常の会話パートが終わり、ここからイチャイチャパートという感じですね。
「居た居た、おはよう!!」
私達も毎朝する挨拶ですが、やっぱり颯太君は今ぐらい元気なほうがうれしいんでしょうか?
演技だと元気よさを表現するのは得意…だと思っています、でも現実なるとやっぱり勇気が出ないんです。
「あれ? もしかして体調悪い? すごい眠たそうだけど…」
そういえば颯太君もすごい眠たそうで、…というか授業もすべて寝ていました。
あれはすべてこの台本のためだったんでしょうか?
もしそうならあんなに無理をして、どうしてそこまで…あんなにしんどそうになるまで。
「大丈夫そうに見えないー。ほら顔、こっちに見せて…、んー熱はない、かな?」
マイクに近づいて読みます。
バイノーラルマイクだと距離も収録できるのでホントにすごいです。
「んーホントに大丈夫? 顔紅いよ?」
こういうところでもう思い出の枠を外れているんだなと感じます。
だって、私はこんな天然ミスはしません。ですよね?
それに颯太君は私が好意を寄せていることは知らないと思います。
私だって確信したのは最近なんです。
感情を表現するために颯太君を思い出します、そうするとカップルのような幸せな気持ちを想像することができます。
その気持ちのまま、演技を続けていきます。
…
「ほら、立って…保健室まで行こ、肩貸してあげるから。 ほい、よいしょっと」
台本の指示にバイノーラルマイクの右側の耳に近寄り読みます。
「ゆっくりでいいよ。 はい、階段の手すり持って…」
もしかしてこれは私が放っておいてと言ったあの時がモチーフだったりするのでしょうか?
普段、台本がどうやって書かれたのかなんて気になったことがありません、でもこの台本には心が入り込むような感じがします。
「もうすぐだから頑張って」
肩を貸している演技のため、少し息をマイクにかかるようにして表現を工夫して……
「あれ、先生いない…ね。 どうしよう」
焦りながら…
「そ、そうだ、ベッド勝手に使っていいよね? 後で先生が来たら言っておくから、ほら寝て寝て。
うーん、やっぱり顔紅い…、頬っぺた真っ赤だよ」
たくさん迷惑かけた時も、颯太君から見ると私はこれぐらい大変なんでしょう。
「じゃあ寝るまで隣にいるから」
実際こういう場面になっても、私は颯太君の横にいると思います。颯太君は居てくれるでしょうか?
「授業? そんなのいいじゃん、気にしなくてもいいよ。 だからほら、お休み」
……
…
隣で寝るまで囁き声でお話をして…。
「もう寝ちゃった?」
私ならもう少しお話してたいです、だから少し残念そうにでしょうか…
「ねぇ、ホントに寝たの? 保険の先生も結局来ないし…誰もいない、よね」
マイクに近づいて耳元で話します。
…私もこうやって…
「ふふ、気持ちよさそうに寝てる…、ホントに誰もいないよね。 私、君のことが好きだよ…」
こんな風にでも勇気を出せたらもっと…
「って、寝てるんだから伝わるわけないよね。 えへ、君も私のことが好きだったら嬉しいな。 おやすみなさい」
これで第三話まで取り終えました。
「ふぅぅぅ…」
何故かドキドキしています。
颯太君は…私のこと、どう思ってるんでしょうか?
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