野外活動4
四個目のポイントまであと少し。
「もうすぐ着くと思うよ…ふぅ」
「…はぁ…」コク
さっき少し話してくれたけど、今は俺が話しかけても昼まで変わらない態度に戻ってしまった。
昼飯の後だからか少し稲葉さんも息が上がっている。
この階段を上った先、多分あそこが目的のポイントだと思う。
「んー、よしここだ」
「はぁ…」
「はいお疲れ様!」
ハンコをもらい休憩する、今は二時前ぐらいだから思ったよりも時間がかかってしまった。
座ってお茶を飲み、体を休める。
将と司は今どれぐらいかな?
二人とも運動できそうだし、競争はオタクにはきつかったかも。
まぁ、売り言葉に買い言葉で特に自信があったわけではないけど。
「ふ~、行ける?」
「…」コク
次は五個目のポイントで最後だけど、宿舎から一番遠い位置になる。
ここから三十分ぐらいで着くと思う。
帰りは少し遠回りだけど舗装された道路を通ってゆっくり帰るルートになっている。
「稲葉さん、次で最後だからあと一時間半ぐらいで宿舎に戻れると思う」
「…」コクコク
もう息も上がっていないようだし、羨ましい。
上って来た階段を戻り、別の道を進む。
その後、登山道を道なりにすすみ、坂を下りるを数回繰り返した。
だいぶ汗もかいてるし、臭いと思われてなかったらいいけど。
「また階段か…」
滑らないように作ってくれているのはわかるけど上るのは体力を使うので好きじゃない。
徐々に口数も減って来たし、疲れているのがわかる。
「おーい」
階段の上で先生が手を振っている。
多分暇だったんだろうな、嬉しそうな表情だ。
悪いけどこういうところに先生や職員がいるから安全が守られているし、暇でいてくれたほうがいい。
「はいハンコ」
「ありがとうございます」
「よし、ここに来るのは君らが最後っと」
荷物を片付けてどこかに行くようだ。
「あの、どの道で帰るんですか?」
「帰ってやることがあるから車だよ。 気を付けて戻ってね」
純粋に帰りたかっただけで暇なのは別かも…。
「はぁ…」
お金を持ってきていたら交渉できたかも…なんてね。
ちなみに一番遠いルートを選んだ理由はここを選べば六つのところを五つのポイントで済むからだったりする。
このペア活動の目的は高校生活で頼れる親友を作ることらしいのでクラスの人とは会いにくいように組まれているらしい。
その情熱はどこから来ているのかと思ったけど、伝統で慣れている先生がいるとか…。
「これであとは戻るだけ…っと」
「…」コクコク
二人でルートが書いた紙を見ながら、確認する。
汗臭い思われたら嫌だし、一歩後ろに下がってからはなす。
「ここを降りて川の横を通って、道路にでたらそこから道なりにすすむルートね」
「…」コクコク
回るポイントのルートは決められているけど、道は自由だったりする。
行きはほかに行くところがあったからいけなかったけど、ここからは多分楽だと思う。
風が稲葉さんのいる方向から吹いた。
「そ、それじゃラストスパート行こう」
こっちは汗を気にしているのにあんなにいい匂いがするのはセコイ、おかげで動揺してしまった。
「…」?コク
小休憩も挟み、最後の元気を振り絞る。
来た道とは逆側の階段を降り、歩く。
十分ほど歩いたところで水が流れる音がした。
「やっぱり自然の音は違うな」
「…」
音声作品なんかでもよく使われる、水の流れる音。寝るとき聞くのもいいらしい。
その音に包まれながら、木々の間を歩いていく。
お!あれはガードレールだからあそこから道路みたいだ。
少し急なこの坂を登ればあとは問題ないだろう。
「よいしょっと。 上がれる?」
「……」…コク
手を出そうかともおもったけど、流石に大丈夫だろうし、マップで最終確認をしておく。
「んー、多分この道で……ー「ひゃ!!」
ーー突然甲高い声が響き渡った。
「い、稲葉さん!! 大丈夫?!」
少し下を見下ろすと尻もちをついてびっくりした表情の稲葉さんが居た。
とりあえず滑っただけ…かな?
「そういえば川の近くは滑りやすいっていうの忘れてた、ごめんね」
「…はぁ」コク
状況に頭が追いつき少し落ち着いたようだ。
「ひゃ!」
「大丈夫?!」
また目を離すと尻もちをついている。
「あ、あの…」ぷるぷる
「どうし…た」
聞くまでもなく足がぷるぷるして立てないようだ。
腰が抜けたのかとも思ったけど、どうやら…
「足、挫いちゃいました」
「…」
会話の立場が逆転した瞬間だった。
すこし恥ずかしそうに、それでいてごめんねって表情をしている。
んー、こんな時は、確か…
「靴と靴下脱いで」
「…」?
「捻挫だったら冷やさないと痛いでしょ? だから冷やしてから宿舎に戻って先生に診てもらうのがいいと思う」
「…」コク
捻挫の対処は本で読んだことあるしわかる。ラノベでだけど…。
「すこし道を戻って川で足を冷すけど大丈夫?」
「…」コク
「ほら肩貸すから、ゆっくり」
片足で俺の肩を持ちながら進んでいく、もう片方も滑ったら一大事なのでゆっくりと焦らせないようにする。
これ下に座ってお尻濡れたら俺も嫌だし…
「ちょっと待って今タオル敷くから」
まだ使っていない、長いタオルを染みてもいいように折ってから地面に置く。
んーこのしおりも挟んだら染みても大丈夫かな。
「はい、じゃぁここ座って水に足つけて」
中学の体育で雨の次の日地面に座り、猿のお尻みたいなあとがついたのをいじり倒された思い出がある。
それは女の子には辛いんじゃないかな?
「ありがとう…」
「うん、気にしないで。 そうだ、タオル持ってる?」
「えと、汗拭き用だけです」
「りょーかい」
今日カバンには三枚タオルが入っている。
汗拭き用と今使った予備と少し大きめのハンカチ。
母さんのお節介で持ってきていたタオル二つが役に立ちすぎている。
下に敷くのはレジャーシートでもよかったかも…まぁカバン勝手に触られるの嫌だろうし、気にしないでおこう。
「あとハンカチあるからそれを濡らして巻いて宿舎まで戻ろうと思うけど…行けそう?」
「…はい、ごめんなさい。 今はだいぶ楽になった気がします」
とりあえず大丈夫そうでよかった。
各ポイントにいる先生はモブなので個性はあげません。
少し野外活動の二日目が長いかもしれませんが、ここが一番ナチュラルなイチャイチャが出来そうなのでもう少し続きます。
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