依頼5
「ごめんね柏木君、ついつい、からかちゃって」
それには苦笑いしか返せなかった。
「あれ、颯太君って呼んだほうがよかった?」
「え、いや…」
「嫌じゃないなら颯太君って呼ばせてもらうわね」
「は、はい」
完全にお母さんのペースに持っていかれてるけど、俺はここからあの話を切り出さないといけない。
「あの、お母さん」
「あら、お母さんだなんて、前に彩って呼んでって言ったじゃない」
「彩さん」
「はい! それで、颯太君どうかした? 」
そういえば…、もう俺の中でお母さんで定着してた。
紬が戻ってくる前にあれを渡してしまわないといけない。
持ってきていたカバンを漁り、昨日データを移すのに苦労した台本が入ったUSBを取り出す。
「それは?」
紙束を出した俺を不思議そうに見つめている。
「あのお願いがあって、これ。 あとで紬が居ない時に読んでください」
ーーガタッ
ん?気のせいか。
彩さんは俺の渡したUSBに数秒目を通した後…
「……なるほど、今日急に本を返したいって言った理由はこれを渡したかったからね…、うふふ、何かしら」
口ですべて説明しなくてもいいように、説明用の文に俺の電話番号まで書いたPDFファイルを添えておいた。
まだ何も読んでなくてもど、なんとなく紬には言わないでほしいのを察してくれたようだから彩さんが読んで返事をしてくれるのを待つしかない。
「お願いします」
「あの子、颯太君が来てくれるのを楽しみしてたから、普通に遊びに来てあげてね?」
「はい、今日、もう少しいてもいいですか?」
「紬も楽しそうだし、ゆっくりしていってね」
彩さんの目線から見ても楽しそうにしてるなら安心だ。
ーートコトコ
聞いていたかのように丁度話が一区切りついた頃、廊下を歩く音がした。
「すみません、なんの話をしてたんですか?」
「ううん、また遊びに来てねって話」
「あれ、お母さんそれは?」
「え? あ、これは…なんでも無いの。 それより時間もあんまりないだろうし遊んだら?」
珍しく紬がお母さんを圧していた。
正直すごい焦った…、あんまり深く聞かれると俺が今渡したものだとバレる可能性がある。
背中を冷汗が流れた。
「確かにそうですね。 颯太君、次は何しますか?」
「違うゲームしようよ」
誤魔化せた…かな?
まぁでもお母さんと話できたし、あとは紬と楽しみたいし、楽しまないと失礼だ。
「じゃぁ、二人で仲良くどうぞ」
そう言って彩さんは席を立った。
「あれ?、お母さん…。 あ、すみません颯太君、今ソフト変えますね」
お母さんは誤魔化しのつもりで仕事と言ったかもしれないけど、俺からすると仕事だから冷や冷やする。
「うん、ありがとう。 次は何するの?」
「はい、これでいいですか?」
紬が見せてきたのは音楽に合わせて流れて来る、赤と青の太鼓のマークをタイミング良く叩くゲームだった。
「これだと私でもできるとおもうので」
「できるゲームのほうが面白いよね」
「はい」~♪~
今日はテンションが高そう、一緒にいて楽しそうにしてくれると俺も楽しくなってくる。
「あ、私上ですね」
「俺は下か」
プレイする画面を
「どの曲にしますか?」
「紬選んでよ」
「それでは先に選びますね、次颯太君どうぞ」
そういって紬が選んだのは最近流行の桃太郎みたいな話のアニメのテーマソングだった。
最近どこに行っても流れているから俺も良く知っている。
「このアニメ見たの?」
「見ましたよ」コクコク
「誰が一番好き?」
「あの一話で助けてくれる兄弟子の人がカッコイイと思います」
「あーあの人、確かにカッコイイ」
そういっている間も音楽に合わせてゲームは進んでいて、紬も首がコクコクと動いてリズムを取っているのがわかる。
というか紬の好みってそういう感じなんだ…、はぁ…。俺には似ても似つかなないなと思ったのは内緒だ。
ブックマーク、評価よろしくおねがいします(*- -)(*_ _)ペコリ
彩(紬の母)に渡す台本を紙媒体から電子媒体に修正しました。




