テストとセリフ3
「すぅーー、すぅぅ…」
深夜一時、やっぱりわからないところを教えてもらえると効率が違う。
でもいつも早寝なのか、紬に深夜の一時は耐えられなかったみたい。
…俺の所為で明日遅刻とかしたら土下座しよう。
「…うぅ、そぉた君…」
「へ」
紬の寝言にびっくりして変な声が出た。
さっきまで話していたからか、寝言でも俺を呼んでくれるのは嬉しい…、なんかドキドキする。
「そっか」
最近停滞していた音声作品の台本。
昨日はヒロインが何ていうか、何を言われると嬉しいか、何を言えば可愛いと思うか。
「ごめん、紬」
折角教えてくれていた勉強を辞め、PCを立ち上げる。正直あと半分ぐらい残ってるけど…もう止められない。
数十秒の起動画面が続いた後、すぐにマウスを動かし、いつも使っているメモ帳を開く。
ーー少しでもこのドキドキが冷めないうちに…
今まで書いていた物をもう一度読み直す。
それはヒロインと出会った作品を聞いてくれている人が出会い仲良くなるところから始まる。
そこから徐々に中を深め、手をつないでドキドキして…、デートして…。
とシチュエーションボイスのプロットを書き、もう八割台本のほうも書き終わっていた。
昨日、そのラストシーンのヒロインのセリフで悩んでいた。
ーーこれじゃぁ、ダメだ。ドキドキが足りない。
結ちゃんの声の雰囲気、得意な演技。
紬の纏う雰囲気、仕草、癖、話し方。
俺の知る限り結ちゃんが出ている音声作品はすべて聞いた、それに一緒にご飯を食べることも珍しくない、毎日話すし、一緒にカフェにも行った。
だから…ーー俺が一番結ちゃんが輝いて、可愛くて、推したくなる音声作品を作れる。俺はそう信じてる。
ーーやっぱり俺が納得してないのに、誰かが認めてくれるとは思えない。
『削除』
PCの画面に映ったその文字に迷いなくカーソルを合わせ、クリック。
「ふぅー…」
初めは純粋に炎上させたやつら、まだ結ちゃんのファンじゃない人達全員を取り込むようなものを作りたい。
それで結ちゃんが辞めないでいてくれれば、俺も嬉しいし、紬も本当はやめたくないんだって思った。
でも本当はそうじゃない。
ーー俺が、一番結ちゃんが輝くシナリオを…、作品を作ってみんなに分からせる。
みんなが結ちゃんを必要としてくれればきっと、紬も辞めない。辞めさせない。
…あの時軽はずみに発言し、公園で紬に『声優を続けてほしい』と言えなかった俺の贖罪。
「すぅ…、すぅー」
気持ちよさそうに寝息を立てる紬には笑っていてほしい。
結ちゃんの可愛さは手をつないだ時やデートした時なんかに発揮されない。
ーー結ちゃんは、紬は一緒にいていつの間にか落ち着いて、ドキドキして可愛いくて、また声を聴きたくなるそんな声優だ。
ついに50話です。
キリのいい数字ってなんかテンションあがりますよね?
ブックマーク、評価よろしくおねがいします(*- -)(*_ _)ペコリ




