野外活動3
「…」キョロキョロ…!
稲葉さんはまだ少し状況が理解できてない様子だったが思いついたようにカバンを漁りだした。
探し物が見見つかったのか安心したよな雰囲気をだしたあとそれをカバンから出した、探しものはレジャーシートだったようだ。
女子力高いな。
「…」うんうん
満足したようだ、ホントに頭の動きだけで感情が出ててすごい。
そのレジャーシートは一人用で狭いのでその横に腰を下ろす。
「……」じーー
「あー、腹減った」
「…あの」
「え! はひ」
稲葉さんに声を掛けられた、そのことにびっくりして声が裏返ってしまった。
まだ理解できない、声をかけられた…?
「どうぞ…」
ポンポンと横をたたいている。
「座っていいの?」
「…」コク
「ありがとう…」
うん、声カワヨ…。
ホントにリアルにこんな声の子いたんだ…。
というか近い、いい匂いするし一人用だから肩があたりそうだ。
ダメだ…俺はリアルには興味ないんだ、忘れろぉぉ。
「いただきます」
「…」コク
俺が手を合わせると一緒に合わせてくれたし、今日で少しは仲良くなれてる…と思う。
お腹もすいたし、邪念を払うために弁当に手をだす。
ご飯に唐揚げ、トマトやブロッコリー入りのサラダと多分栄養を考えられた弁当。
朝からここまでの道のりは長かった…お腹もすいていたから美味しい。
「…」もぐもぐ
隣でも稲葉さんが食べ始めた。
まったりした空気が流れている。
「稲葉さん、話すの苦手?」
気になっていたことを聞いてみる。
「?」…ふるふる
別にそういうわけではないと思っているらしい。
「クラスであんまり話しているの見ないけど」
「もぐもぐ…私の声どうですか?」
声? 可愛くていい声だと思うけど、なんて答えるといいだろう。
実際アニメが好きじゃない人からすると萌え声やその手の声は嫌がられる傾向にあるし…。
「アニメみたい…だと思う」
「やっぱり…気持ち悪いと思いますか?」
んー、中学で何かあったっぽい。触れてはいけないところだったかも…。
でも気持ち悪いと思っているのが前提なのが納得できないなー。
「…俺はアニメとか好きだし、とってもいい声だと思うよ」
「…ご、ごめんなさい、忘れてください」
やっぱり何かあったようだけど、話したくないようだし、聞かないようにしよう。
自分の声に自信がないならそれは稲葉さんではなく、周りの所為だと思うし…。
……気まずい。
…あと、唐揚げ美味しい。
「あ…」
無心でおかずを食べていたらご飯が余ってしまった。
捨てるのはもったいない、けど白飯だけを食べるのはしんどい。完全にやらかした。
「…」?
「はぁ…食べるか」
考えてもおかずは出てこないし我慢するしかない。
「あの…私の唐揚げ、食べます?」
少し首を斜めにコテっと傾げている。
「え」
稲葉さんの弁当はあまり食べれない子用のご飯が少ないやつで余っているようだった。
それにしても、俺がそれで困っていることがわかるってすごい気づかいのできる子だな。
「もらってもいいの?」
「はい…どーぞ」
俺の弁当に入れてくれた。
あっ箸。高校生にもなって関節キスとか気にしないけど、意識すると恥ずかしくなる。
ついじっと唐揚げを見つめてしまった。
「あ」キョロキョロ
自分のやったことに気づいたらしい。
目の動きと首の動きが別々にすごい速さで動き、大変なことになっている。
「ありがとう、いただきます」
誤魔化すように口に運ぶ。
気にするな…俺は何も気づいてない…、忘れろぉぉ。
「あっ」じー
心臓が…ドクドクして味が…分らない。
ここで止まるほうが空気が冷えるし、実際に唐揚げが欲しかったのも事実。
「うん、おいしい。 ありがとう」
「…」コク
顔はそらされたけど、耳が真っ赤なのが見えた。
少し落ち着いてきていたはずの心臓がうるさい。
「ごめん、食べ終わった。 もう行ける?」
「…」コク
話すのが苦手というより、嫌いとかトラウマに近いってことだと思う。
多分いい子だし、いつか理解してくれる人と出会えたらそういうのは治る…と思うけど、俺にはどうしようもない。
「次のポイントはここから三十分ぐらいかな?」
「…」コクコク
「ここホントに広いよね」
「…」コク
まぁ、登山でもそこそこ時間がかかるし距離で言えばそんなに変わらなかったりするのかもしれないけど……。
「あ、レジャーシートありがとう」
「…」コクコク
広げていたものを片付け、ゴミを持ってきていた袋にまとめる。
「ゴミ一緒に捨てて来るよ」
下に置いていた稲葉さんの分もついでにゴミ箱に捨てる。
ゴミを山にすてる生徒がいると困るからこの広場指定で集まって食べ、先生が設置したゴミ箱に入れる仕組み。
「ありがとう…」
その間にレジャーシートにを畳み終えた稲葉さんにお礼を言われた。
「大丈夫、早く回ってかえってこようよ」
「…」コク
ホントについでだったし、一緒に座らせてもらったんだから気にしなくてもいいのに、わざわざ口に出してくれた。
…そのことがなんか嬉しかった。
ここから稲葉さんの話す頻度が増えます。
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