テスト5
対面に座る稲葉さんは家に来た時とは大違いの集中力で勉強している。
「ん…え~と」
問題はわかれば解ける、だから次を解く、その繰り返しで集中できる。
いや分からん。
分からないから手が止まる、止まるからいらないことばっかり考えて集中が途切れる。
ダメだ…。
「何処かわからないんですか?」
「ここなんだけど…」
ノートを稲葉さんの方へ向け教えてもらう。
「あー、これは一度やると簡単です。 隣いいですか?」
「うん、お願い」
「はい、これは…ーー
稲葉さんのノートの端っこに解き方を教えてもらう。
ちなみに字は女の子って感じの丸字で小さな文字だけど読みやすい。
「あ~、じゃあ、この問題も同じで…こうやって」
「…」コク
「これを代入して…」
「はい…答えあってる思います」
隣について教えてくれるのはありがたいんだけど…
ーー近い。
肩がちょんちょん当たって、それに稲葉さんは肩を出してるファッションだから。
考えないようにしないと、顔が熱い。
「えと、次のこれは?」
必死で問題のことを考え頭の中を誤魔化す。
「はい…これはこれとこれが…」
俺の方に腕を伸ばして解説してくれている手もすごい肌が綺麗で…折角教えてくれているのに失礼か。
「ありがとう」
「はい! また聞いてください」
教えてもらったのにそんなに嬉しそうにされたら…、可愛すぎる。
純粋な行為を勘違いするのは良くないってわかってても男の業は深い。
「教えるの上手いね」
「そうですか?」えへ
再び自分の勉強に戻った稲葉さんだけど、首が左右に揺れて機嫌がよさそう。
稲葉さんのおかげで勉強にも一段落着いた。
「ちょっと休憩しない?」
あまり集中していない俺の方が先に休憩を取りたくなってしまった。
「これだけ解かせてください…」
「じゃぁお菓子取ってくる」
母さんが準備してくれていたものさらに写し、暖かい飲み物の準備にかかる。
「コーヒーと抹茶ラテどっちがいい?」
「…あ、抹茶でおねがいします」
インスタントだけど、おいしいから大丈夫だろう。
お湯を沸かし、コップに注ぐ。
「はいこれ」
トレイにのせて持っていく。
「ありがとうございます。 あつ」おろおろ
「ごめんごめん」
「いただきます。 ふぅー、ふぅー」
猫舌なのかな?
俺も軽く冷ましてから飲むけど。
「はぁ…」
緊張していたりして入っていた力が抜けるのがわかった。
要所要所ではリラックスできても、やっぱり稲葉さんと二人きりだと意識して緊張が勝つ。
「稲葉さん、いつ辞めるの?」
「えと…テスト後一周間と少しです。 そこでいただいてるお仕事が終わるので」
高校生にしてカッコいいことを言う稲葉さんだけど、その分俺のタイムリミットは近いってこと。
「そっか…、勿体ないと思うけど」
「えと…、私何もしてないのにきついこと言われるのは怖いんです、ごめんなさい」
「…ごめん」
「「……」」
「あー、稲葉さん勉強教えるの上手いからまたお願いしてもいい?」
「そう言ってもらえると嬉しいです!」
話を変え誤魔化す。
ーー本当に声優を続けてもらうのが正解なのか分からなくなった。
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