名前4
「は? なんだよ、誰とも付き合って無いって話だろ?」
男は完全に怒っていて思考がまともじゃない。貧乏ゆすりも激しくなった。
稲葉さんはまだ俺の後ろに座り込んでいる。
さっきもそうだし、怖くて力が入らないんだろう。
「何処で聞いたか知らないけど、そういうことだから」
付き合ってるとまでは言ってない、それでも相手が勘違いしているならちょうどいい。
強気に、相手に焦りが伝わらないようにしながら、稲葉さんを体で隠す。
「お前はもういい、黙ってろ、付き合ってるなんて嘘だよな? な?」
男は拳から音が聞こえそうなほど力を入れた状態で稲葉さんに問いかけている。
本人から言われないと納得できないのかもしれない。
今にも爆発して襲い掛かってきそうなほど苛立っている男を警戒しつつ、稲葉さんの返答を待つ。
少しの物音も聞き逃せないほどの静寂……稲葉さんは今声をだすのも相当恐怖だろう。
ーー「あぁー、もう、うぜぇな!」
それに痺れを切らした男が足を一歩前に出し、稲葉さんに向かおうとした…
「いっ」
それを体で防ぐように移動する…咄嗟の判断での行動。
気づけば男の手が前にでて、俺の両肩に吸い込まれるように手は動き…俺の体は突き飛ばされた。
……フィジカルが違いすぎるーーー。
そう認識したときには小さな声が漏れ、地面にお尻から倒れる……
ーーそれを防ぐために手を突き…っ痛!!
「おい! 何をしている!」
「「颯太」くん!?」
救世主だ、池田の声と将と後一人女の子の声がする。
きっと将が俺が走って行ったのを見て先生を呼びに行ってくれたんだろう。
…助かった。
まぁ多分、手を強くついてしまったから…これは打撲だと思うけど。
「あぁ!? なんだよ」
「やめろ、やめなさい」
ーー長いようで短かった時間も池田の奮闘あって終わった。
あれから少し抵抗をみせた男だったけど、先生がもう一人来て流石に諦め様子。
今は頭が冷えたようだ。
「颯太君、大丈夫?」
やっと事態は収まりを見せ、池田と稲葉さんに告白しようとした先輩が話している。
その横を通って一番に声をかけてくれたは司だった。
稲葉さんは壁を伝うようにして男から離れるように反対の壁にもたれかかって、目を瞑っていた。
「司、ありがとう」
司の手を借りて、立ち上がり周りを見ると…。
来てくれたのは先生二人と将、司、あと…中谷さん?
どうしてからわからないけど、来てくれたようだ。
人が多い方が助かっただろうし後でお礼を言っておこう。
「颯太君、さっき突き飛ばされてたけど怪我とかない?」
「大丈夫だって、ありがとう助かったよ」
「怪我がないならよかったけど、初めに先生を呼びにいったのは将君だからお礼は将君に」
「いやいや、司も来てくれて助かったし」
「そう? なら受け取っておくよ」
今だ目を瞑って肩で息をしている稲葉さんの方に行く。
「稲葉さん?」
「…颯太君、ありがとうござました、…ごめんなさい」
まだ稲葉さんの表情は暗く、体も少し震えているように見える。
「稲葉さんが謝る必要ないって」
「でも…」
本心からそう言ったし、あの男が悪いと思う。
それとは裏腹に稲葉さんの目には少し涙が溜まっているように見えた。
「颯太君、私をかばって手を…」ぅ…ぐすん
なるべく、バレないように手を庇ったりしなかったつもりだったけど…しっかり見られていたらしい。
「別に痛くないからさ…、ほら気にしないで」
強がって手を動かして見せ…
「っ痛」
やっぱり痛かった。
「颯太君…」ぅぅぅ…
逆効果だったかも。
「ごめん、ごめん病院いくから大丈夫だって、稲葉さんこそ怪我無い?」
「はい…ぐす…おかげ様で」
「そっか、ならよかった」
そういえば稲葉さんの名前をだしていなかったのは後々何かしらできるかなと思ってたんですけど表現力が足らずごめんなさい。
結にかえようかともおもったんですけどベタすぎたのでやめました。
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