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稲葉さんの秘密6

「そっか、稲葉さんが…決めたなら…」

 俺にそれを否定する権利はない。

 これが昨晩のことが原因なら俺に責任がある。

 自分の手で推しをやめらさせてしまった…。

「はい、すみません。 折角好きって言ってくれたのに…」

「稲葉さん、演技すごいね」

 もちろんやめてほしくない。

 それに言葉にできないけど言いたいことが山ほどある。

 そのはずなのにこんな誤魔化しの言葉しか出てこない。

「そうですか?」えへ

 本音でいったことなのは間違いない、でも素直に照れている稲葉さんに心がチクりとした。

「本当にすごいと思うよ。本当に辞めるの?」

「…」コク「前々から考えていたことなんです」

 やさしさか、本心か。

 どちらにしても昨日、もう少し考えて話していればと後悔している。

「ごめん」

「いえ…柏木君の所為じゃないです、むしろ好きって言って貰えてうれしかったです」

「すぐに辞めるの?」

「ありがたいことに少し依頼が来ているのでそちらが終わる…二カ月ぐらいだと思います」

 二カ月、と言っても結ちゃんが活動していたのはこの半年と少しぐらい、ちょうど一年で辞めると言ったところ。

「ホントは秘密のままでいるつもりだったんですけど…高校に入ってからずっと助けていただいてばっかりなので相談してしまいました」てへ

 何も考えずに言ったことかもしれない、でも俺には相談して失敗したと責められているように感じた。

「本当にごめん。 俺が昨日あんなこと言ったから」

「結局は私がしたことです。…では、今ならなんて答えますか?」

「今、……このまま。 今のまま頑張ってそんな奴ら黙らせる…かな」

「やっぱり子供の負けず嫌いじゃないですか?」ふふ

 稲葉さんに笑われてしまった、言われてみればそうかもだけど…。

「でも、すごく良いと思います」

「なら…」

 『…続けてくれればいい』

 稲葉さんの悲しくて嬉しい、諦めを含んだ儚い表情見てしまっては…

ーーそんな簡単な一言が最後まで言えなかった。

「本当に気にしないでください。 私が柏木君に感謝を言いたくて」

「でも…」

 そんなこと言われたら気にしないほうが難しい。

「そんなに気にするなら一つお願いしてもいいですか?」

「何?」

 少しでも何かできるなら。

 学校が終わってから来た、だから時間も遅く、もう日が沈む寸前まで来ている。

「颯太君…と呼んでもいいですか?」

 身長が低く、髪を切ってみんなの注目を集めた時から少し髪が伸びた。

 でも変わらず綺麗な髪、幼めの顔立ち、聞き心地のいい声。

 そんな稲葉さんがベンチから立ち上がり、夕日を背にして言った。

「え」

 何を言われるかと思えば…。

 可愛いことをお願いされてしまった。

「クラスの人達がみんな呼んでたので。 ダメ…ですか?」

「そんなこと」

 追加の上目遣い、神秘的なまでに絵になっている。

 この時間が一生続けばいいと素直に思った。

『だって下の名前で呼ぶ友達なんていませんでしたし…』

 小声なで言っていてもこの距離だと丸聞こえなところも、天然で可愛いし。

「これからもよろしく、稲葉さん」

 肯定の意味を含めて言う。

「む…私は下の名前で呼んでくれないんですか?」ぷんぷん

 それでなくても綺麗で可愛い稲葉さんがさっきまで肩が当たる距離にいた。

 そこにあんな可愛いこと言われて心臓が耐えられるはずない。

「ごめん、ちょっと心の準備ができてなくて」

「そうですか」しゅん

 この空気で呼ばないのは本当に申し訳ないけど、恥ずかしすぎて心臓が出てきそうだ。

「あ、そういえば私一度も柏木君に自己紹介してなかったですよね」

 思い返せば、初めて班になった時も黙っていたし、今更そんなことすることはなかった。

「確かに…」

「もしかして私の下の名前しりませんか?」ぅぅ

 不安そうにしているところ悪いけど、もちろん知っている。

 結、それは本名じゃない別の、稲葉さんの名前。

「…知ってる」

「!」…ビク

「また今度じゃだめかな?」

「はい」コクコク

 仲良くなると顔に感情がでる、わかり安い稲葉さんといると落ち着くし、安心する。

 小中と彼女が出来ず、二次元にしか興味がないと言い張って来た俺だけど…

ーー稲葉さんが好き…かもしれない。

 思えば、始めは知り合いが一番しっくりくる関係だったけど…もう友達と言われると針でつつかれたような感覚がする。

 そう言えばこれは声優と知る少し前からだった、。

ーーそっか俺って推しとか関係なく、稲葉さんが好きなんだ。

「では颯太君、私もう帰りますね」

「月曜は学校来る?」

「はい、今日一日考えて整理が着きましたし土日があるので大丈夫です」

 学校に来ることに安心もしたし、もっと話していたいとも思った。

「そっか、じゃあ俺駅あっちだから…」

「はい、手紙ありがとうございます。 颯太君!」ペコリ

「バイバイ」

 嬉しそうに名前を呼んで小さく手を振っている稲葉さんに手を振り返し、俺も帰る。

 もっと一緒に居たいと思うのに、引き留める勇気も言葉もない。

…俺の中に後悔だけが残った。

これで『稲葉さんの秘密』は終わりです。

やっと稲葉さんへの気持ちを自覚した颯太がどうするか…

気になった方ブックマークしていただけると本当に嬉しいです(*- -)(*_ _)ペコリ

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