音声作品が好き
「ふぅー」
今日も一日疲れた。
家に帰り、そのままリビングのソファーに座って力を抜く。
何もしてないのに幸せを感じられる…。
「ペアかー」
帰宅部の俺が家に帰る時間では家には誰もいない、そこで独り言を言いながら考え事をするのは昔から癖になっている。
「どうしようか」
今悩んでいるのは稲葉さんのこと。
別にどう襲うとかの話ではない。
…そもそも、俺はオタクでリアルの人間はタイプには入らないし…。
クラスでも話をしているのを見たことがにないことだ。
一度自己紹介の時に話していたが声が小さく周りも触れてはいけない空気になっていたのでホントに話しているのを聞いたことがない。
でもちゃんと反応してくれてたし、とりあえず嫌われてはなさそう。
二泊三日中の一日かけて行われるペア活動を楽しみたいし…楽しんでもらいたい。
それに一日一緒にいるのに心の中で嫌われている…とか流石に勘弁してほしい。
「ま、話しかけたら返してくれるしいいか」
…彼女もできたことない俺が考えても仕方んもない問題だったようだ。
「さてと、部屋に戻るか」
ほっこりしていた時間をおわり、着替えなどを済ませ、自室のpcへと向かう。
俺は小さいころからアニメが好きでそれは今でも変わらない。
小学校のときから創作意欲があり、いろいろなことに手を出した。二次元という文化が好きだった。
その中でも俺が特に没頭したのが小説を書くことだった。
まぁそれも受験とともにやめてしまったので今はただの消費豚の一員と化したわけだが…。
「お、今日も更新されてる!」
そんな俺は今同人声優”結”ちゃんにはまっている。
そしてその人のsnsを毎日チェックするが最近の日課になっていた。
「あたらしい音声作品でてないかなー」
そして俺が今アニメ以上に虜になっているジャンルが音声作品だ。
近年徐々に人気が出ているジャンルで、ネットの某同人販売サイトで売っている。
「あぁ、落ち着く…」
俺は第一志望の高校を落ちたことで精神が不安定になりかけた。
睡眠が浅くなり、体がダルい…限界も近かった。
それを救ったのが睡眠誘導のasmr、それも今聞いている声優”結”ちゃんがCVの作品だった。
その人はすごく鈴の音のような声をしていて聞き心地がよく、除夜の鐘の音を聞いているように落ち着く声をしている。
俺はそのまま晩飯で部屋に親が呼びに来るまでぐっすり眠った。
*
「おはよ、颯太」
「将か、おはよう」
昨日は晩飯のあと昨日買った音声作品の後半を聞いて寝た。だから今日の俺に疲れは残っていない。
「相変わらずいつも元気そうで羨ましいわ」
「だろ、結ちゃんはすばらしいからな」
朝の通学路で将と会った。
高校までは電車で通っている、もちろん同じ中学から行っている将とは電車が同じでよく合う。
「音声作品だっけ? 好きだなぁ颯太」
「一度聞いてみろって」
一度聞かせてあげたいがそういうのはダメな気がする、だから将にはきちんとお金を払って聞いてほしい。
「俺はいいよ。 颯太みたいにお小遣い全部使うの嫌だし」
「千円であれだけの時間楽しめるコンテンツ他にないとおもうけど」
千円あれば一時間から三時間、何度も聞けば無限に楽しめる。モノによっては二日三日それで持つ。
まぁ、手を出しづらいのもわかるし、将ぐらい仲いい友達でもなかったらいきなりは言わない。
「そういえば颯太、寝る前それ聞かなきゃ寝れないんだろ?」
「もちろん」
「じゃあ二泊の間寝ないのか?」
それ、とは音声作品のことだ。
俺は聞きながらじゃないと寝れない体になってしまっている。
「あぁ、ケータイ預かりの話か…」
この野外活動の目的は友好関係を広げることらしく、班はそのため。
ペアは一人の親友から輪を広げてほしいらしい。
だからケータイは全員回収で、学校の金庫で預かりだそうだ。
「もちろんSDカードに落としてきたから夜は聞きながら寝るつもり」
「どっからその行動力がでるんだよ」
別にリアルで恋はしないが友達は欲しいわけで…この野外活動ですべったら三年間が終わってしまう…かもしれない。
電車を降り、徒歩で学校の校門まで行き、入ってすぐのエントランスに集まる。
「半分ぐらいか」
「だな」
一年生全体の半分ほどがすでに登校し、クラスは六割ほどの人が来ている。
「颯太、部活も入ってないし、頑張って友達作れよ。 あと彼女とか…にひー」
「うるせぇ」
ペアのことをいじって来てやがる。
そういえば稲葉さんは来ているだろうか…いた、一人端っこでスマホをいじっている。
「あれ颯太、気になってるのか?」
「言ってろ」
「怒るなって、悪い悪い」
相変わらず自分のペースでからかってくる、いつもなら返すがなんかハズイので放っておく。
「お! おはよう、朝から元気だね」
「よっ、司。 あと、別に元気じゃないし」
「おはよう、颯太の恋愛事情を聴いてた。 あと颯太さっき音せ「おい」…」
別に音声作品が好きなことを隠しているわけではないが、この年で変わった趣味だということも理解しているし。
でも初めから変な奴かもしれないと思われるのは勘弁してほしい。
「あれー隠し事?」
「お、司今日はぐいぐいだな」
「僕もテンションあがってるのかも」
二人ともテンションが上がっている
。
「べつに隠すことではないけど、俺アニメが昔から好きで、あんまりリアルに興味ないんだ」
「……」
司は目が点になったように固まった。
「プっ、そんなこと…?」
「え?」
「僕も実は外でバンドやってて、音楽にしか興味ないよ」
司は我慢しきれなくなったように噴出した。
だから、くじの時も興味なさそうにしてたのか…。
え、なんか俺のより理由カッコいいな。あと、なんかニュアンス違うくない?
「僕はそういうことに偏見はないし、仲良くしようよ」
「お、おう」
なんか負けた気分。
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