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お母さん

「一年の柏木です」

 職員室のドアをノックしてから開ける。

「おお、柏木こっちに来てくれ」

「…俺何かしました?」

 池田の急いだ表情に急に不安になった。

 ちなみに俺は勘違い系主人公ではなくただのオタク高校生。

「稲葉のお母さんが柏木と話したいと学校に来てな」

 心で軽口をたたき、落ち着く作戦が…敗れた!

「…ん?」

 やばい、昨日の今日で学校に来るってことは俺に余程言いたいことがあるんだろう。

 俺は何もしていないと思う、だからあの勘違いのまま学校に来たのだとすると…。

 確かにおんぶしたり体は当たったかもしれないけど…無理やりのつもりはないし、変なことは極力考えないようにした。

 まさか痴漢とか、わいせつ行為で裁判?

 たしか痴漢の冤罪での有罪確率はほぼ百%だって何かのラノベで読んだ。

「はぁ…」

「多分柏木が思ってるようなことではないと思うぞ。

 そんな雰囲気ではなかった気がしたっと、この部屋だ」

 明らかに池田は入るつもりがなく、行ってこいと言いたげだ。

「こういう時って先生は同伴じゃないんですか?」

 普段は池田と呼び捨てているもののこの状況だといてほしかったりする。

「稲葉のお母さんが俺に席を外してほしってことだから」

「そんなぁ」

「じゃあ終わったら職員室に寄ってくれ」

「はぁ…」

ーートントン

「どうぞ」

 特徴的な鈴のような高く、耳あたりのいい声で応答が来た。

 稲葉さんとは違う、でもどこか似ている声。

 部屋に入ると稲葉さんは居らず、お母さん一人だった。

「こんにちは」

「はい、こんにちは」

 昨日と同じ稲葉さんのお母さんだけど、スーツにどこか困ったような表情をしている。

「あ、どうぞ座ってください」

 入室したあと座るタイミングがわからないのはあるあるだと思う。

「…」

「…」

 そういえば稲葉さんと初めて話しかけた時もこういう空気になった。

 やっぱり親子なんだな…容姿のそっくりさでわかることだけど。

 それより…どうなってしまうんだろう。

「あの…」

 次の言葉までが遠く感じる。

「昨日は私の勘違いでごめんなさい」

「え?」

 体の力が抜けるのがわかった。

 今日は謝られてばっかりだけど、よかったぁ。 

「折角、親切にしてくださったのに…」

「いえ、その後足はどうですか?」

 勘違いだとわかってくれたなら問題はない。

「柏木君のおかげで足に負担が少なくて、軽症だったみたいで、ありがとう」

「それは良かったです」

「今日は昨日の謝罪と、少し聞きたいことがあって」

「はい」

「あの子はどうして捻挫したのか言わないの…心あたりはない?」

「…あります。 昨日いつも昼は教室にいるのに、誰かにつれられてどこかに行ってました。 それで帰ってきたらもう」

「よく見てくれてるのね、…ありがとう」

「い、いえ」

 そういわれると恥ずかしくなる。

 本当に偶々見ただけだし。

「あの子中学校で虐めってほど激しくはないんだけど、声がほら…特徴的な所為で回りの子が不気味がってね」

「…」

「柏木君あの子の声どう思う?」

「すごく良い声だと思います」

「あら、聞いてた話だと可愛い声だって」

「…」

 んー、親子でもお母さんのほうが少しS気がある。

「ふふ、それがあの子すごくうれしかったみたいで…だから、ありがとう」

「いえ、そんな」

「ホントはねおんぶしてもらったとか言ってたから体が当たって喜ぶような危険な子かどうか確かめたかったのもあったの」

「え…そんなことは」

「ないわよね?」

「ひゃい!」

「そう、それはよかったわ」

 目を合わせることができない。罪悪感に押しつぶされそうな感覚ってこういうことだったんだ。

「ふふ、冗談。 あの子人を頼るのがホントに下手だから助けてあげてくれるとうれしいな」

「…はい」

「どうしたの?」

「頑張ります!」

「よろしい」

 確信した、ドSだ、わかってて楽しんでる。

「話を戻すけれど捻挫させた子が誰かとかわかる?」

「多分…ですけど」

「そう、あの子は言いたがらないし、大事にしていじめの原因になると、ね?」

「これから心あたりのある人に聞こうと思ってました」

「あら、柏木君がそこまでしてくれる理由は?」

 S気のある笑顔ではなく、稲葉さんのために警戒しているという雰囲気がひしひしと伝わってくる。

「昨日聞こえたんです。 稲葉さんが『他に頼れる人がいない』って言ったから、そこまで言われると…」

「男の子ねー。 中学校でのトラウマが原因ですごい人見知りだし、クラスでもきっと友達いないでしょ、あの子」

 警戒を解いてもとの能天気な表情で言った。

「あまり話してるところを見ないです」

「だから困ってそうだったらよろしくお願いします」

「はい」

 親として心配だったんだとおもう。

 クラスに友達が居なくて、唯一できた友達が男で、しかもそいつの近くで約一か月間の内に二回も捻挫したら…俺だって相当警戒すし、心配する。

「そうだ柏木君、今度家に遊びに来てね。 きっとあの子も喜ぶと思うし、次はちゃんと歓迎するから」

「その時はよろしくお願いします」

 締めのムードに入り、日本人的な社交辞令で返した。けど本当に行くことはないと思う。

 仲いいと言ってもまだ話す程度だし、男女間で家に行くというビジョンが想像できない。

「もう授業の時間でしょ? 時間取らせてごめんね」

「いえ」

「もう一度、昨日はごめんね。 申し訳ないけどあの子のことを気にかけてあげてほしいの」

「はい、わかりました」

「それじゃ、今日はありがとう」

連続投稿も三週目に入れました!


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毎回すごく喜んでます、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

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