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放っておいてください2

 俺は何かしてしまっただろうか…。

「えと」

 色々な感情を驚きが塗りつぶして、どうすればいいかわからない。

「稲葉さん…」

 気づかいが出来て、声が可愛くて、話したくなくても話しいかけると必ず返してくれる。

…昼休み何かあったんだ。

 何の理由もなく「放っておいて」なんていう性格じゃないことは野外活動以降話してわかったはず。

「追いかけよう」

 あの状態では駅まで行くのにも時間がかかるだろうし、走れば間に合うはず。

 全力で階段を駆け下り校内を探す。

 校門までの道のり…いない。

 保健室…いない。

 下駄箱に靴…ない。

「はぁ…、はぁ…居た」

 校門を出て少し行ったところ、壁を伝いながら歩いていた。

「稲葉さん」

「!」

「大丈夫?」

 髪は降ろして、俯いているけどしんどそうなのがわかる。

「もしかして捻挫?」

 この前と同じ方の足首、癖になっているのかもしれない。

「…放っておいてください」

「…もし迷惑なら明日から関わらないからさ」

 一言告げて、肩を支える。

「…」ビク

「ほらゆっくりでいいから」

「どうして、ですか?」

 どうして、俺がどうしてこんなことをするかってことだろう。

 俺にもわからない。

 初めは目も合わなかった、時期に話してくれるようになって、過去にトラウマがあることを知って…。

 気づけばほぼ毎日、一言以上は交わすようになった。

「…ほら、もっと本の話とかしたいし」

 ひそかに昼休みに話すのが楽しみになっていたりするし。

「私がいると柏木君も迷惑に思ってるって…」

「そんなこと誰に言われたの?」

 もちろん将や司といて、バカやって楽しい。でも稲葉さんと話す落ち着いた時間も俺は好きだ。

「…」

「はぁ…、俺が言ったわけじゃない。 何なら夜電話する?」

 流石に冗談のつもりだから笑ってくれると嬉しい…

「えと、でもでも声が…ぐす…気持ち悪い…から」

「そんなことは絶対にない」

 顔は見てないけど、涙をすする音に動揺した。

 それでも否定の言葉はスッとでた。

「でもでも、ネットでもいっぱい声が嫌いって言われて…」

 ネット?それってラインとかチャットでの話かな?

「俺は稲葉さんの声好きだよ、可愛い…いい声だと思う」

 正直に言ってやった。これでもそこそこのアニメを見てきてプロの声優ともポテンシャルだけなら負けないと思った。

 それぐらい可愛い声をしている、言い切ってもいい。

 稲葉さんは今相当、心が傷ついている。

 思い当たる節…いや十中八九、昼誰かに呼び出されて、次の授業まで帰って来なかった、そこで何か言われたんだと思う。

 朝は普通に話していたし、多分それがきっかけとなってこれまでの不満がでてきたんだと思う。

「今日は送っていくよ」

「…大丈夫です、ぐす」

「家の人に連絡はできる?」

「…」ふるふる

 泣いている女の子をこのままバイバイというのはできない。

「家知られるのが嫌とか?」

「…」ふるふる

「じゃぁ、送らせてよ」

「…」…コク

 まだ少し肩で息をしている稲葉さんをゆっくりと背中側から支えながら歩く。

 駅に着き電車に乗る頃には稲葉さんは落ち着きを取り戻していた。

「ごめんなさい、私、酷いことを言って」

「良いって、それより何かあったの?」

「…」ふるふる

 話したくないってことか。これは聞いたほうがいいのか迷う。

 でも、もう一度思い出させるのは良くないと思った。

「何か困ったことがあったら言ってね」

「はい、ありがとうございます」

 稲葉さんの家は俺の一つ手前の駅、そこから徒歩ですぐのところのマンションらしい。

 電車に数分揺られ、もう目が赤い以外はいつも通りだ。

「ここからすぐ?」

「あれです」

「デカい」

 本当に駅から出てすぐに見えるマンション、歩いてすぐで羨ましい。

「あの…まだ音声作品きいてくれてますか?」

「え…」

 唐突に俺が最近言い慣れた単語にびっくりした。

 言い方が引っかかるけど、まだ少し動揺してるのかもしれない。

「ど、どうして?」

「その前、好きって言ってた声優さん、炎上してましたよね」

「見てくれたの?」

 絶対見てくれないと思ってたし、実際これまで薦めた人は全員、見ても聞いてもくれなかった。

「はい、あれどう…思いました? まだ好きなんですか?」

「誰が何を思っていても、好きなままだけど。 あの炎上した原因もうさん臭くて…」

「…」

「特に作品も出してない同人サークルだから、本当に好きなファンとかだったら皆わかってると思う」

 概要を言うと、初めて声優に依頼した同人サークルの人が「初めてをいいことに質の悪い音声データを送られた」と言いだしたことだったはずだ。

 そんなことしてもコストの削減にもならないし、炎上させたのはきっと対して音声作品が好きでない人がほとんどだと思う。

「ありがとうございます」

「え?」

「い、いえ! あんまり詳しい事情は知らなかったので…その」

「そっか、少し値段はするけど、寝れないとかなら一度買ってみるのをおすすめするよ」

 前に寝付けないと言っていたけど、あれ以来特に寝不足のようすはないし解決したのかも。

「機会があれば…」

 本当に聞いたほうがいい、絶対。

「もうここで大丈夫です…って、え!、お母さん!!」

 マンションについてすぐ、したのロビーでお母さんが居たようだ、ん?

「あら」

「お母さん?」

「はい、えとあなたは?」

 若!!

 稲葉さんと同じでどこか幼く、すごく若く見える。髪がきれいのは遺伝なんだ。

「クラスメイトの柏木です」

「どうしてここまで?」

「お母さん、また捻挫しちゃって送ってもらったの」

「ふーん、君が柏木君。 野外活動の時は良くしてもらったのにお礼もできず」

 言葉とは裏腹に能天気な表情が悲しそうで、どこか覚悟を決めた表情に変わったのが見えた。

「いえ、治ってよかったんですけど…」

「…」ふるふる

「ここまで送ってくれてありがとう。 でもねこの短期間で二度も捻挫となると、柏木君悪いけど家の子とは…」

「お母さん!」 

「…え」

 言いたいことはわからなくはない。入学直後の一か月程で二回捻挫し、その横に同じ人が居れば原因にも、虐めにも見える。

 一度目は俺にも責任があるとは思う。でも、二度目は本当に何もしていない。

「ううん、違うの柏木君は!」

「さぁ、病院に行かなくちゃ」

 お母さんはもう用はないと稲葉さんの腕を引っ張って二人でマンションの中に消えていった。

「待って、お母さん! 私、学校で他に頼れる人が居なくて、それで柏木君が…」

 本当なら怒っていい場面かもしれない。

 でも、反響音で微かに聞こえたその言葉で感情の行き場を失ってしまった。


いつもブックマーク、評価、応援ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


この文の方がトイレに書いてあるあれみたいな効果が見込めるのでしょうか?

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