白い階段
気が付くと、真っ暗な空間に、聳え立つ塔のごとく、白い階段が屹立している。
果てしない高さで終わりは目視できない。『上ったら、降りることはできません。どこかのドアに入るまで続きます』
頭の中に声が響いているようだ。訳のわからない所に来たが説明を受けて、妙に落ち着いて階段を上り始める。
階段の途中の踊り場でまでくると、ドアがぼやっと浮き上がる。
〈おもちゃ〉
ドアのネームプレートに書かれてある。
おもちゃのドアを素通りすると、〈昇進〉というドアに遭遇。
階段を上がると、次々にドアが変わっていく。
〈チョコ〉〈道具〉〈家〉〈指輪〉・・・・・・。
ひょっとすると何かをもらえたりするのだろうか。
僕は勘ぐってしばらく上り続ける。
一番迷ったのは〈金〉だ。
金といってもピンからキリだし、少しだけだったらまとまったものがいいな。
歩みを続ける。
〈チョコ〉、二回目だ。
こんなもの用意しないでほしい。
空腹感や疲労はないのだが、もう何日も歩き続けているような気がして、嫌になっている。
階段をずっと上り続けた。
もう、一か月経ったかな。
二カ月・・・・・・三カ月。
考えるのを止めた。
自分がすごく老けた気がする、足取りが重い。
気づけば、足を動かし、ドアを眺めるだけになっていた。
何かすごく欲しい物があったと思うのだが忘れてしまった。
頭上のドアからカランカランと備え付けられた鈴がなっている。
奇妙にも、そのドアから上の階段はなくなっている。
「もう終わり?嘘だろ!」
僕は思わず叫んでいた。