トラックに跳ねられれば、異世界に行けるとか思ってんじゃねー。
僕は、異世界転生というやつに興味があった。
そう、一時期流行った、異世界に転生して色々するあれ、ああいうのをしてみたかった。
僕は、そういうのは大体トラックに跳ねられそうな子供や女子を助けて代わりに跳ねられて転生すると知った。
その翌日から、僕は探し回った。
何をかって?
勿論、トラックに跳ねられそうな子供や女子をだ。
そして、片っ端から助けていった。
だが、繰り返すうちに気づいた。
「あれ? 轢かれない……?」
そう、僕はまだ一度も轢かれていない。
死ななければ転生できないのだが、どうしようかと思い、僕が思い至ったのは、助け方を変えることだった。
これまでは、抱き抱えるようにして助けていたのを、突き飛ばす形で助けてみようと思った。
思い付いたら実行だ。
さっそく僕はトラックに跳ねられそうな子供や女子を探した。
しかし、その日は見つからなかったので、家に帰った。
僕は最近多くの人を助けているといえば助けているので、道行く人によく挨拶をされる。
お陰で家に近づくほどに、足は遅くなっていく。
その日は、けっこう遅くなってしまった。
「お帰りなさい」
親が言う。
「ただいま」
そう言って家に入る。
親は心配そうな顔をしていた。
「いつも言っているけど、人助けよりも、自分の命を大切に生きてね。お母さん心配」
「わかってるよ。でも、ほっとけないんだ」
「そう……」
「じゃ、ごちそうさま。おいしかったよ。ありがとう」
「はいはい」
母は心配性だ。
だが、僕は死ぬために人助けをしている。
問題はない。
むしろ、生きているこの状況の方が計画を外れているのだから。
そんなことを思っていた。
その日は寝た。
翌朝、登校する途中、ついに見つけた。
そして、計画通りに助け、引かれ、死んだ。
意識が戻り、目を開けると、何やら白い服を着て箱のなかにいた。
よくわからなかったが、僕は転生でき……てない!?
何て事だ、じゃあこれはまさか、……。
案の定、僕は幽体のような形で、自分の顔を見下ろしていた。
ただ死んでしまったということか……。
だがもう戻れはしない。
あとはただただ悔やむばかり。
その後悔は、今もまだ、続いている。