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三回。

もう三回目だ。

気付いたら眠りについていて、クリスの家で目覚めるのは。


確かファミリア隊とかいう人達に会って、検査室とかに連れて行かれて、コードに繋がれて、それから…。



「思い出せない…」



ただ、体が無性に熱かったのは覚えてる。

熱くて熱くて堪らなくて…、何だったかな。


頭を抱えて上体を起こす。

するとちゃり、と首元で何かが鳴った。

視線を落とせば無骨な十字架のネックレスが首から下がっている。

ひやりとするネックレスだ。

いつから着けているのかは知らないけれど、私の体温が移っていない。


クリスとリサーナはいるんだろうか。

人が居ないのは不安になる。


私はベッドから抜け出すとベッドの下から木靴を引っ張り出してそっと足を通す。

そして部屋から出ると階下へと降りた。



「起きたか」



階下にいた予想外の人物に私はぎくりと強ばった。

新聞らしきものをばさりと机に置いて優雅に足を組んでいるのはこの家の家主ではない。



「あ、アーデンさん?」

「そうだ」

「こ、ここは、クリスさん達のお宅じゃ…」

「そうだ」

「えぇと、クリスさん達は?」

「登営中だ」

「そうですか…」



沈黙。


か、会話が続かない!

誰だ、あの天使のクナイより会話が続きそうだなんて思ったのは!


私が狼狽えながら階段の中腹で固まっていると、アーデンは呆れたようにため息をついた。



「体調はどうだ」

「へ?」

「体調だ。

悪くないかと聞いている」

「あ、だ、え?

だ、大丈夫です?」



何でアーデンにそんな事を聞かれるのかよく分からなくて私は思わず首をかしげてしまう。



「おい、何で疑問系だ」

「え?

いや、だって」

「体調が悪いのか?」

「えぇと、そういうわけでは」

「あ?

じゃあ何でそんなまごまごしてるんだ」

「いや、あの」



次第に苛立ちを募らせている様子のアーデンに何と言うべきか。

私は少し戸惑いながら考える。


色々と疑問は尽きない。

ここは結局どこなんだとか、私をどうする気だとか。

けど、ここ数日狂ったように泣く中で、私は見付けたのだ。


私はまだ死にたくない。

そして、ここを妄想だ夢だと仮定するのは止めよう。

右手の傷は間違いなく痛むのだから。


私は唇を舐めて口を湿らせると数日間怠けさせてた脳を働かせるように意識を集める。

いつでもクリスが居るわけではない。

そしていつまでも此処に居させてもらえるとは思えない。

私は、彼ら以外にも生きる術を探さなくてはいけない。

ぎゅっと拳を握ると右手の傷が痛んだ。


さぁ、よく考えろ。

この手の人は言い淀めば言い淀むほど機嫌が悪化する。

そして多分、ある程度強気に話しても感情を爆発させることはない、と思う。

言い訳も思い浮かばないのだし、率直に言うべきか。

久し振りに冷え冷えとする脳に安心しながら私は口を開いた。



「思いもよらない方がいて、思いもよらない質問をされたので驚きました」

「…そうか」



私が反応するとは思っていなかったのか、アーデンは少々面食らったように私を見る。

まぁ、彼の前ではほぼ常に泣いていた気がする。

面食らうのも当然かと自分を納得させて私は息をついた。

ゴールは、そうだな…。

アーデンから情報を引き出す、かな。



「どうしてアーデンさんが此処に?」

「…クリスもリサーナも登営中だ。

不審者に見張りも着けないほどザフキエル公国軍は優しくないんだよ」



座れ、と向かいの椅子を進められて私は着席する。

大丈夫、相手の話を聞いて、自分の望む結果へ誘導するのは営業として腐るほどやってきた。

私には、これしかない筈だ。



「私、そんなに不審者っぽいですかね?」



へにゃ、と力を抜いて笑って見せる。

先ずは警戒心を解かなくては。

鋭いアーデンの目とかち合う。



「当たり前だ。

どこから来た」

「私が知りたいです」

「どうやって空から落ちていた」

「分かりません」

「何故魔力が無い」

「魔力?」



出た。

私が一番聞きたい話題。

私はどうにか魔力とやらの話題に続けられるように注意する。



「魔力っていうのは、魔法の事ですよね?」

「ああ。

魔法の事は話すんだな」

「私、魔法って見た事しか無くて」



アーデンが言外に自分の事は話さないのに、と付け足しているのに対して、私は心の中で映画でね、と付け足す。



「……見た事しか?」

「はい。

私に魔法は向いてなくて」



そう言って苦笑して見せる。

するとアーデンは深く腰かけた姿勢から上体を起こして私に集中する気配を見せた。



「お前、わかっているのか?

自分が魔法に向いてないって」

「…それが何か」

「ならば何故生きている」

「は?」



身構えていたとはいえ、唐突な問いに少し戸惑う。

何故生きている?

そんなもの、関係がない筈だ。

だが、話の流れからして関係していると考えた方がいい。



「何故生きている」



アーデンは重ねて聞いてくる。

私は息を大きく吸ってから吐き、また吸った。



「…というと?」



ゆっくりとアーデンは私を見る。



「ウェルト・ヴィレ。

聞き覚えは?」

「……すみません、私あんまりそういうことに詳しくなくて」



教えてもらえますか、と続けて笑う。

余裕を崩すな。

相手に悟らせるな。

わからない事は素直に客に聞け。

いつか聞いた部長の声がする。

と言っても、こんな殺伐とした商談はあの人も経験したこと無いだろうけど。

しかも今の私は売りたいものがない。

ゴールも情報収集というかなり幅の広いもの。

けど私が安心するためにはやるしかない。



「…ウェルト・ヴィレは世界の意思だ。

生きるもの全てに魔力を与え続ける」

「生きるもの、全てにですか」



世界の意思?

魔力を与える?

…さっぱりわからない。



「生物は皆、魔力を肉体に内包できる許容量がある。

それは知っているな?」



いいえ、知りません。

なんて言えるはずもなく。

私は真面目な顔をつくってアーデンを見た。



「そして俺達人間は肉体に溜まった魔力を操り、呪に乗せて炸裂させる事で魔法を発動させる。

例えば、」



言って、アーデンは机の上の新聞を指差す。



「シュイーヴン」



その言葉の直後、ふわりと新聞が浮いた。

ぽかん、と思わず呆けながら私はアーデンの指に沿って浮かぶ新聞を目で追った。



「これが俺の属性魔法だ。

他にも対人魔法なんかもあるが、俺はあまり魔力の操作が得意じゃないからな。

知りたければリサーナに聞け」



ぱしん、とアーデン宙に浮かんだ新聞を掴んで机に置き直す。



「さて、ウェルト・ヴィレの話だったな。

魔法の発動については理解できたか?」

「…はい、何となくは」



顔を引き締めて、私はアーデンを見た。

そこでふと気付く。

これは、私が話題を誘導してるんじゃない。

アーデンがこの話を私に聞かせたいんだ。

でなければ今の間に私にどこから来たかとか質問をしない理由がない。



「なら、魔法を使わない、もしくは使えなければどうなるか。

イメージしろ。

俺達はコップだ。

ウェルト・ヴィレは水差し。

そして水差しの水は魔力だ。

イメージできたか?」



確認してくるアーデンに静かに頷いて、私はワンピースを握りしめた。



「コップに水差しから水を注ぐ。

俺は途中で水を飲むことが出来る。

だがお前は飲むことが出来ない。

水差しはいつまでもコップに水を注ぎ続ける。

注ぎ続けた結果は?」

「……溢れます」

「そうだ、溢れる。

溢れた水はどこに行く?

例えはコップだが俺達は人間だ。

溢れ出る注ぎ口なんかありはしない」



アーデンは強い目で私を見る。

初めて会ったときよりもよっぽど強い目で。

余裕を崩すな?

無茶言わないで。

相手は私に余裕がない事なんか話す前から分かってる。



「溢れた魔力はな、行き場を失い、肉体をさ迷う。

だがいつまでもは耐えられない。

必ず限界が来る。

限界が来た時、人はどうなると思う?」



そう言われ、脳内のイメージが切り替わった。

魔力は水、ウェルト・ヴィレは蛇口、そして私は、蛇口にくくりつけられた風船。

風船は限界まで水を飲み込む。

そして限界を越えれば、後は。



「破裂する」



私の答えにアーデンは満足したように口角を上げて背を背もたれに預けた。

これは、不味い。



「さて、じゃあもう一つおまけにイメージしてみろ。

生物は皆、魔力を肉体に内包できる許容量がある、それは理解したな?」

「…はい」

「なら、俺とお前のコップの大きさは同じだと思うか?」



頭の奥が痺れた気がした。

そんなの、知らない。

けど、察しはつく。

だからこそアーデンはこの話を私に聞かせたいんだ。



「俺が仮に水差しだとすれば、お前はせいぜいショットグラスだ。

だが水差しから注がれる水の量は変わらない。

ここでさっきの質問に戻るんだよ。

なぁ、何でお前は破裂しないんだ?」



何を答えればいいか分からない。

本当の事を話す?

駄目だ、上手く話せる自信は無いし、私自身理解していない。

じゃあ適当に嘘八百を並べてみる?

論外だ。

整合性を取りながら話す自信は無いし、そんな事で更に印象を悪くさせたくない。

だけど、大切なのは真実の中の小さな嘘。



「…分かりません」

「それは通らない。

魔法を見た事はあるんだろ?」



そうだ、そう言ってしまっている。

何か、何か考えないと。



「…私の国は、小さな島国でした」

「は?」



私の急な話の転換ぶりにアーデンは驚いたようだ。

だけど、話し出したのだから止まるわけにはいかない。

堂々と喋りきるのが相手を信じさせるコツなんだ。

腹を括れ!

私は渋々、本当に渋々話すという顔をつくってアーデンから少し目を逸らす。



「…東の小さな島国で、日本と言います。

そこには神を祀る神社があって、巫女や神主さんがいます。

神社ではそういう魔力みたいな、悪い物を祓う神事を執り行う事ができて、私はその神事で今まで生きてきました。

此方ではそういった事はしていないんですか?」



言い切って、私はアーデンを見る。

アーデンは信じているのかいないのか、深く眉間に皺を刻んで私を睨んでいる。


ああ、神様仏様アーデン様!

どうか信じてください!

嘘をついたのは私が神事で生き残ってきたっていう一点のみです!

ああ、後神社では魔力を祓うとかできません!

けど後は嘘はついてません!

どうか!


無信心の癖にこういう時だけは神頼みをしてみる。

実に日本人らしい自分に少し呆れながら私は出来るだけ表情を崩さないように注意してアーデンを見続けた。


アーデンはまるで私の両方の目、どちらからか嘘が見抜けないかと探るように交互に私の目を見るが、ここは譲れない。

落ち着けと自分に念じていると、アーデンは小さくため息をついた。



「有り得ない。

そんな話は聞いた事がない」



アーデンの目の力が考え込むように少し弱まっている。

押し込むなら今しかない!



「だとすれば、私は何故生きているんです。

私は隠してきた事実を話しました。

それを信じないのであれば私からお話し出来ることはありません」

「だがそんな国は聞いたことがない」

「私の国は鎖国され、他国との交遊を絶ってきました。

知らない方が多くても私は驚きません」

「出鱈目だな。

ならどうやってザフキエル公国領に表れた」

「私には分かりません。

最後に覚えているのはプラットホームから落ちる瞬間だけです」



アーデンは更に否定しようと息を吸うが、そうはさせない。

出来ればここで、なし崩し的に納得させてしまいたい。

ああ、鎖国万歳。



「アーデンさん、私の話を出鱈目だと判じるのは勝手です。

けど、私にとってそれは“悪魔の証明”違いありません。

私は貴方達に害をなしたくて此処にいる訳じゃありません。

私は、帰りたいんです、私の日常に。

それは凄く退屈だと思ってたけど、今となっては恋しくてたまらないんです。

戻りたいんです。

だから、戻るまでの間、なんとか生活できるようになりたいんです。

力を貸してください」



身を乗り出してアーデンを見つめる。

戻りたい云々は置いておくにしても、私の欲求はほぼほぼ事実だ。

私が魔法なんて物を使えるかどうかは甚だ疑問だが、私は風船にはなりたくない。


これ以上は語るに落ちると判断してじっとアーデンを見つめると、アーデンはゆっくりと息をついて私を見た。



「お前の主張は、理解した。

それが嘘だろうが何だろうがな」



がしがしと荒々しく頭を掻くアーデンは少し考え込むように腕を組んで目を伏せる。



「悪魔の証明って?」

「え?」



アーデンは迷いながら私を見てきた。

さて、何が引っ掛かっているのかは知らないが、私が嘘でごり押ししたこの話をさっさと切り上げて次の話題へ移行させなければ。

また疑問を持たれるのは面倒だしそれよりも話さなくてはいけない事がある。



「悪魔の証明っていうのは…、何て言えばいいんでしょうね、平たく言えば詭弁の類いです。

起きないことや存在しないことを確実な証拠に基づいて証明する事ですね。

けどそれを証明しようと思うと森羅万象全てを検証する必要がありますから」

「調べようの無い事、ということか」



そう言うことです、と頷いてみる。

なんか正確には違った気もするけど。

アーデンはしばらく私を吟味するように眺めていたけれどその内に諦めたようにため息をついた。


さて、押し込めたのは良しとしよう。



「アーデンさん、あの、ウェルト・ヴィレの影響を止める事は出来ないんでしょうか」

「ん?

ああ、止める方法は無い」



さらりと事も無げにアーデンは言う。

一気に顔から血の気が失せる。



「そんな!

じゃあ、私は、」



風船になるしかないってこと?

生きたいと思った矢先に死が確定するなんて、一体私が何をしたって言うんだ。



「いや待て、すまん。

俺の言い方が悪かった。

応急処置はしてある」



え?


言いながらニヤリと凶悪にアーデンは笑う。

何だか更に嫌な予感がした。



「前もって言っておくが、お前に拒否権は無い。

隊長の目に止まった自分を呪え」

「どういう意味ですか?」

「そのネックレス」



ぴ、とアーデンは私の首元を指差す。

その先は私の首にぶら下がった無骨な十字架があった。



「それはザフキエル公国軍の技術開発局が開発した最新兵器だ」

「へ!?」



兵器!!?


びしっと体が固まった。


待って!

な、何で兵器を首からぶら下げてるの!?

大丈夫なの、これ!?


外したいけれど何かの弾みで死ぬのは嫌だ!

私は固まったまま顔を青くしてアーデンを見る。



「とりあえずお前に害はない。

多分」

「多分!?」



多分って何だ!



「仕方ないだろ、まだ実験段階だ」

「そ、そんなもの本人の許可無く勝手に着けないでください!

どうやって安全に外すんですか!」

「待て待て、それが応急措置なんだ。

外すな」



面倒臭そうにアーデンはため息をつく。

人を、何だと思ってるんだこの男…!


ふつふつとアーデンを殴ってやりたい衝動に駆られるけれど、駄目だ。

無理だ、我慢しろ。

今首から下がっているのはよく分からないが兵器らしい。

魔法なんてあるこの場所で迂闊なことはしたくない。

でも兵器が外れたら玉砕覚悟で一発は殴ってやる!



「それは属性魔法を持たない一般兵が簡易的に魔法を使う為に作られた物だ。

普段から魔力を核に蓄積して魔力を溜めて、その銀自体を操る事が出来る。

だけどそれは欠陥品でな、」

「欠陥品!?」

「いや、だから待てって」



呆れたようにアーデンは言うけれど、正気だろうか。

正直、ふざけるなと怒鳴りつけたい。

人権はどこいった!



「お前、それが欠陥品だから理論上生きてられるんだぞ。

ちゃんと話を聞け」



ぞわぞわと脳みそはこんがらがっているが、此処で発狂しても仕方がない。

生死がかかっているのだし、聞くしかない。


落ち着け落ち着けと念仏のように頭の中で唱えて、私は歯を食い縛る。



「どういう意味ですか、」

「その欠陥っていうのが際限無く着用者の魔力を吸うところにあってだな…、あー、さっきのコップ思い出せ」

「はぁ」



言われて、ショットグラスをイメージする。

ああ、アーデンに言われたからつい小さいグラスを思い浮かべてしまった。



「いいか、本来肉体には自分が持って産まれた魔力がある。

大体コップの半分くらいで、あー、赤色にでもしといてくれ。

イメージ出来ているか?」

「はい」



ショットグラスに半分くらい赤色の水を注ぐ。



「よし。

ウェルト・ヴィレから注がれる魔力は青色の水だ。

それらは決して混ざらない。

水と油みたいな物だな。

本来なら魔法の種類で赤と青、どちらかの魔力を消費するかが決まっているんだが、それはややこしくなるから今はいい。

で、何が言いたいかっていうとだな、俺達人間は、魔力が少なくなり過ぎても死ぬんだ」

「はい?」



新事実にも程がある。

今までは溢れる事ばかり気になっていたけれど、無くなっても死ぬ?

え、どういう事?



「個人差もあるが、分かりやすく話すと魔力の総量がコップの約五分の一を切ると症状が出始める。

十分の一で生命器官に深刻なダメージが残って、完全に水がなくなると死に至る」

「えぇ、と、どうして死に至るんですか?」

「知りたければクリスに聞け。

今はそうなるって事実だけ知っておけばいい」



質問を挟んだら酷く面倒臭そうなアーデンの声が返ってきた。

いや、まぁ、確かに聞いてもわからないし、ご尤もです。

私は大人しく口を継ぐんでアーデンの言葉を待つ。



「で、その兵器だが、技術局が目指したのは青色の水を着用者自分の意思で吸い上げて銀を操る物だ。

だが、出来上がったのは赤も青も見境無い上に勝手に吸い続ける。

そうすると、コップに水が無くなる。

ということは?」

「着用者は死んでしまう?」

「そうだ」



満足そうに口角を上げるアーデン。

しかし、と、いうことはだ。



「これ、つけ続けてたら私も死ぬんじゃ…」



そう口にすると今度は酷く不愉快そうにアーデンは顔を歪める。

何て言うか、凄く分かりやすい人だな。



「さっき言ったろうが、お前には魔力が無い。

本来なら産まれた時に持ってる赤色の魔力がな。

つまり、どういう原理かは知らんがお前はコップが空でも生きていられるんだ。

寧ろショットグラス程度しか許容量が無いからウェルト・ヴィレで水を注がれる端から全て飲みきってしまわないと直ぐに死ぬぞ」



アーデンの言葉に、ようやく応急措置の理由が分かった。

私はアーデン達と違って常にコップを空にしなくてはいけない。

だがコップの水を飲む事が出来ないから、別の何かで水を吸い上げなくてはならず、その吸い上げる方法に欠陥品の兵器が最適だったって事か。


ははーんと納得しているのが伝わったのか、アーデンはまた満足そうにしている。

この人、説明するのが好きなのか。

しかもイメージしやすいから有難い。


だけど気になることもある。

何故、欠陥品とはいえ不審者である私にこんな貴重な物を持たせるのか。

何故、こんなに懇切丁寧に魔法の事を教えてくれるのか。

何故、私を生かそうとしてくれるのか。



「私に何をさせたいんですか?」



さっき彼は拒否権がないと言った。

だけど、今のところ何かを要求されているわけではない。

だがタダ程怖いものはない。

何かがあるはず。


そう思ってアーデンを見るとアーデンはもう一度ニヤリと凶悪に笑う。



「お前はこれからザフキエル公国軍の新規入隊者、並びに新型兵器、マジックノイドの着用被験者だ。

お前が望んだ通りに、お前の生活は軍が担保してやるから安心しろ」



数秒後、アーデンの言葉がやっと脳みそに染み渡った。

近所迷惑上等です。

クリスの家に、私の絶叫が響き渡った。

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