プロローグ
今までプロット無しに何となく書いてましたが今回はプロットをきちんと作って書いていきます
下手な文章ですが読んで貰えると嬉しいです
「な、何だここは...」
俺が立ち尽くしていたそこは暗くてジメジメとしていて肌寒さを感じる空間だった。
遠くからは水の落ちるピチョンという音がえらく反響して聞こえる。
俺は暗闇とそこに響く水の音に言い知れぬ恐怖を感じていた、本音を言うと正直パニック寸前だ。それもそうだろう
なんたって俺はさっきまで自分が通う学校の自分の教室で友達達と何気ない会話をして帰り支度をする、そんなごく普通の日常の中にいたのだから.....
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「楓ー、今回の模試どうやったよ?」
俺があの真っ暗な空間で立ち尽くすこととなる少し前、帰りのHRで返却された模試の結果を手にして話しかけてきたのは高校1年の頃から同じクラスの野村 剛だった。
「Cだった、ちょっとまずいな」
「まぁたしかにこの時期だとBは欲しいよな」
そんな会話をする俺達は現在高校3年、その12月という受験本番まであまり時間の残されていない受験生だった。
俺の通う学校は一応地元では1番の進学校と言われ実際生徒の8割以上が毎年、国公立、もしくは私立の大学へと進学する。
何年かに一度K大やT大への合格者も出る、そんな学校である。
ただ進学校と言っても田舎である、県内の進学校をランキングしたら恐らく最下位なのではないだろうか?
それはさておき、俺も第一志望は国公立大学を目指す受験生である、今はなんとか模試の判定を上げるべくやりたくもない勉強に精を出している。
「で、剛はどうなんだよ」
「ふふ、俺か?」
そう言うと模試の結果が書かれた紙を俺の前に突き出してきた。
そこにはT大A判定の文字が
「まぁいつも通りだな(どやぁ)」
腹が立つことにこいつは非常に頭がいい、高校入試の時も県内の他の進学校から学費免除で推薦が来ていた位だ、それをこいつはこっちの方が行事が面白そう
などという理由で推薦を蹴って今の高校に通っているのだ。
剛とそんな会話をしながら俺は鞄に荷物を詰め帰り支度を整える、
「帰るか」
そう言って俺は剛と教室を出た。
否、出たはずだった...
俺は教室の出入口、特に何がある訳でもないそこで壁のようなものに弾かれた。
「痛っ!」
おでこをその壁らしきものにぶつけた俺がその痛さに小さな叫びを発した次の瞬間、
教室を満たす目を開けて居られないほどの光に包まれ俺の意識はそこで途切れた。
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そして先程の空間に話は戻るのだが俺は未だに平静を取り戻せないでいた。
平静を取り戻すのにどれくらいの時間を要しただろうか?
少なくとも10分以上は経っていただろう。
時間の助けを借りてようやく落ち着いた俺は辺りを見渡した。見渡したと言ってもその空間は暗く何も見えない。
唯一聞こえてくる音といえば水の落ちるピチョンという音、かなり響いていることからそれなりに大きい空間だろうか、恐らくだが高速道路のトンネルのような通路になっているのではないだろうか。
しゃがんで床を触ればゴツゴツとしているが真っ直ぐなその床は石畳か何かだろうか?
そんな考察をしていると不意に水以外の音が聞こえてきた。まるで鉄パイプを引きずるような音、しかしそれよりも重いものを引きずるかのような音、そしてその音はどんどんと近づいてくる。
俺はハッとするとポケットに入れていたスマホを取り出しそのライトを音のする方へ向けた...
そこに居たのは体長2メートルを軽く超える化け物だった、人型のそれに牛の頭、神話に出てくるミノタウロスを連想させる、というかまんまイメージ通りのミノタウロスに俺は固まった、そいつが身の丈ほどもある巨大な斧を引きずりながらこちらに近づいていたのだ。
背中は汗でびっしょりである、額にも脂汗が滲み足が震え歯は情けなくガタガタと音を立てている。本能が逃げろと警鐘を鳴らすが身体が言うことを聞かない。
「ブモォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
ライトを当てたことで刺激してしまったのだろうか、ミノタウロスの咆哮が響き渡る。
その叫び声で金縛りの解けた俺は一目散にミノタウロスとは反対へと駆け出した。
当然ミノタウロスもその俺を追いかけてくる。
走っているのか先程の斧を引きずる音の代わりにドスドスという足音が聞こえる。
ライトを消したい、ライトがついている限り向こうにこちらの位置は丸見えだ。
しかし思ったよりも足場の悪いこの石畳の床、ライトを消そうものなら直ぐに足を取られ転んでしまうだろう。
そんな思考を巡らせている間にも足音が距離を縮めてくる。
ライトを消さずともこのままでは追いつかれて俺は命を散らすのだろう。
「ハ、ハハ」
思わず乾いた笑いが漏れる。思えばつまらない人生だった。
勉強も部活も中途半端、終わっていない課題が気になって遊びも中途半端、特に夢がある訳でもなく親に勧められた大学を惰性で目指す、勉強も運動も人並み以上には出来た、しかし今まで生きてきた18年、自分の意思で行動を起こしたことが何回あっただろうか?
何か必死になって取り組んだものはあっただろうか?
もうすぐ死ぬという時になって適当に生きてきた今までを酷く後悔した。
ミノタウロスはすぐそこまで迫っている、既にミノタウロスの息の音まで聞えその距離は2メートルそこらだろう。
あぁ、死にたくないな...
そう思った時、結局消していなかったライトが視界の端にあるものを捉えた
それは高さが50センチほど、幅も1メートルしかない横穴だった、あの大きさならミノタウロスは入ってこれないだろう、もし穴がそこまで深くなかったら捕まって死ぬだろうがこのままではどうせ死ぬ、俺は意を決すると横穴に向かって頭から飛び込んだ。
それと同時にミノタウロスの振りかぶった斧が振り下ろされ一瞬前まで俺のいた場所を叩いた、斧が石畳を打つ甲高い音と両者の間で散る火花、ミノタウロスは獲物を仕留め損なったと知ると再び咆哮し俺の逃げ込んだ穴に腕を突っ込み俺を捕まえようとした。
俺は捕まるまいと必死でその穴を奥へと進んだ、幸いにしてその穴は深くミノタウロスの腕が俺を捕らえることはなかった。
ミノタウロスの腕が届かないところまで来ても俺は更に穴の奥へと進んだ。
ミノタウロスの叫び声が少し前遠くに聞こえるところまで進んで俺は止まった。
一命を取り留めた俺はそこでやっと息をつけた
落ち着くにつれて俺は身体中の痛みに気付いた、穴に飛び込んだ時にぶつけた肘
ここまで這って進んできた為に破れた制服のズボン、そこから除く膝は血が滲んでいる。
また無理に進んできた為か脇腹などの筋が痛い。
何はともあれ無事だった俺は狭い穴の中で器用に身体を転がし、仰向けに転がった、
「なんなんだよ、ここは」
先程まで恐怖やらなんやらで吹き飛んでいた疑問が湧いてくる。
つい先程まで居た教室、気付いたら居たこの空間、
「異世界転移ってか?まさかな」
まるで冗談を言うかのようにそう呟くと俺はまだ先のある穴の先を見つめた。
まだミノタウロスの鳴き声は聞こえる、戻ることは出来ないだろう、それにこのままここにいても何も事態は進まない、俺は自分の中で結論を出すとさらに続くその穴の先へと進んで行った。
およそ10分、その穴を進み続けたが未だに行き止まりになることは無くどこかに繋がることも無い。
どうする?このまま進むか?
進む以外無いと分かっていてもついそんな事を考えてしまう。
そんな事を何度か繰り返しながら進んだ、どれだけの時間がたっただろうか、スマホの充電はとうに切れ(元から20%しか残ってなかったが)時間を確認することも出来ない、ポケットに入っていた飴玉で飢えを誤魔化し進み続けた。
途中何度も曲がり既に自分がどの方向を向いているのかすら分からない。
このままどこにも辿り着かずに死ぬのだろうか、
ミノタウロスから逃げることが出来ても結局は死ぬのか
そう思った矢先、今までの狭い横穴が終わり少し広い空間に出た。
そこは8畳程の何も無い部屋、天井は3メートル程あり十分に立ち上がれる、数時間か数日かぶりに立ち上がることの出来た俺の身体はそれはもう心地よいくらいに全身の関節が音を立てた。
最後に首の骨を鳴らすと俺は部屋を見渡す、何も無いその部屋、しかしそこは今まで俺のいた穴とは違い薄ぼんやりと明るく歩き回らずとも部屋の端まで見ることが出来た。不思議なことに何か照明がある訳でも壁が光っているという訳でもない、ただ何故かその部屋は明るかった。
そしてこの部屋、何も無いも言っただろうか?そう、何も無い、つまりは行き止まりである。
今からさっきの穴を戻る体力など俺には残っていない、
何か抜け道はないかと俺は部屋の壁や床を調べた。
すると部屋のちょうど真ん中の床、そこを踏んだ時に石畳がズズっと少し沈みこんだ
キィィィィィィィィィィィィン
「あれ?」
何か起こると思ったが耳鳴りのような音がするばかりで何も起こらない。
何か変化は無いかと部屋を見渡すもその薄暗い部屋は何も変わらずそこにあった。
肩透かしを食らった俺が足元に視線を戻すと突然地面が発光しそこでまた俺の意識は途切れた。
不定期更新ですが月に1本は最低でも書きたいです。