クルシュナ王国(1)
クルシュナ王国は、建国の祖、クルシュナ1世が建国し、歴代の国王及びその後継者は代々、クルシュナと名乗ってきた。
クルシュナ王家は代々、男系男子が続いてきた家系だったが、先代のクルシュナ王には男子が生まれず、たった一人生まれた男子も、幼少の時に死んでしまう。
その後生まれた子供は、女の子だった。それが今のクルシュナ姫である。
しかしこのままでは、女子が後を継ぐことになると、代々続いてきた男系が、そこで途絶えてしまうということになってしまう。
女の王を擁立することに反対する一派の者たちが、分家から新たな王を擁立し、男系男子を維持することを画策していた。
それに対して、国民は、特に女性たちは女系でも構わないと考えていた。
「別に女王でもいいじゃない、今のクルシュナ姫様は、先王の第一子なんだし、男女を問わず第一子が後を継ぐのは当然のことよ。
たとえ女王を立てたとしても、クルシュナ姫様に男の子が生まれたら、その男の子が後を継いで、またそこから男系ということにすれば、それでおさまるじゃない。」
しかし女王擁立に反対する一派は、このような言い分だった。
「もしも姫に女の子が生まれて、またその子が後を継ぐことになったら、
二代後も、三代後も、四代後も、五代後も、その後もずーーーっと、女王が続くなんてことにもなりかねない。」
この論争は、男系の維持をとるか、直系の維持をとるかという論争でもあった。まさに究極の選択でもあった。
「いずれの答えになるにしろ、このままこの論争に決着が着かなければ、いずれ王家は断絶ということになってしまう。
そうなったら大統領制になるか、あるいは他国がこれ見よがしに攻め込んできて、他国の属領にされてしまうことも、無いとはいえない。」
まるで、どこかの国の国王の跡取り論争を見ているかのようだ。
ここからは、
マーク・ハミルス=マーク
エルザ・マリーシア=マリーシア
マリーシア「まあ、そんなことになっているんですか、クルシュナ姫様の国は。」
マーク「クルシュナ姫を擁立しようとする擁立派と、それに反対して実権を取ろうとたくらんでいる反対派とが、対立しているらしい。
まったく、どっちもどっちで、都合のいいことばかり言いやがって。」
一方、パーティーの7人は、あの山賊と称した革命軍のことが気になっていた。
「しかし、山賊と称した革命軍の連中は、結局何が目的だったのだろうな。
どうもただ単に、自分たちの置かれた身分、境遇に不満があるから、あのようなことをしたとしか思えぬのだが。」
キタオオジ軍師は言う。
マークはこの際、尋ねてみることにした。
マーク「キタオオジ軍師。ところで、旧アクダム帝国の残党といわれる、『ヒューマン・ファースト』という組織の名前に、心当たりはありますか?」
キタオオジ「ヒューマン・ファースト?
なぜお前がその『ヒューマン・ファースト』の名前を知っている?
それに、旧アクダム帝国の残党であるということも。
どこからそんな話を聞いた?」
マーク「実は、テス村で情報収集をした結果、なんとそのような名前が出てきたんですよ。
もしかしたら、例の山賊と称した革命軍とも、何らかの関係があるのではと。」
キタオオジ「ああ、例の山賊と称した革命軍か。
革命軍は、身分格差解消を訴えるため、世界各地で活動を続けているとか。
対して『ヒューマン・ファースト』は、貴族や上級民以外の者を、人とも思わない、自分たちこそが選ばれた人間たちだという選民思想のもと活動している。
あの革命軍たちが要求していることとは、まるで真逆の、敵対する考えの持ち主たちだ。」
マーク「ヒューマン・ファーストと、革命軍は敵対する同士か…。」
引き続き、例の山賊のカシラの取り調べも続けることにした。
その外では何やら怪しげな男たちが、噂話をしていた。
「おい、あのパーティーの7人の中に、クラリスという、スンゲー色っぽい踊り子がいるらしいぜ。」
「そうなのか、一目見てみたいもんだな、ぐへへ。」
何のことはない、この男たちはクラリス目当ての変態男たちだった。
一方でマーク・ハミルスは、引き続き山賊のカシラ、いや革命軍の部隊長の取り調べを行い、革命軍を裏で操っている首謀者の名前を聞き出し、そして革命の動機、目的についても聞き出すことにした。
「お前たちの革命の本当の目的は誰だ!?
首謀者は誰なんだ!?名前は?どこのどんな身分のヤツなんだ、言え!」
マーク・ハミルスは尋問を行う。すると山賊のカシラ=革命軍の部隊長は、思いもよらぬことを口にした。
「エルフレッド!思想家のエルフレッド・カマーチョさ。」
「思想家のエルフレッド・カマーチョ?」
マーク・ハミルスは、そのエルフレッド・カマーチョという人物について、軍師キタオオジに聞いてみた。
「わしも詳しいことは知らないが、優秀な人物であるということはよく耳にするのう。
思想家とはいうが、まあいわゆる革命思想というやつだ。
なにしろ革命を起こすことを考えるくらいだからのう。
他にも、政治、軍事、身分格差、歴史、芸術、医療と、幅広い知識を持ち、自ら神学大学で教鞭を振るうこともあるとか。
仲間内からは、夢想家、理想主義者などと言われ、煙たがる者もいるそうな。
そのような人物が革命軍の首謀者となると、相当手強いな、あるいは自らの思想を革命軍の構成員たちに振りまいて、洗脳している可能性もあるぞ。」




