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テラ・コクメイが見た帝国の実態

テラ・コクメイは見た。


帝都ガリウス建設のために働かされる人々の実態を。


「おらおらーっ!働け働けーっ!」


帝国兵か、いや帝国に金で雇われた、ならず者たちが、奴隷たちをムチで叩く。


ムチで叩く音だけが、大きく響き渡る。


闇仮面カイル・ハミルスが視察に来た。


帝国兵「カイル・ハミルス閣下。帝都ガリウスの工事の方は順調に進んでおります。」


カイル「うむ。見事である。

帝都ガリウスを、帝国の都にふさわしい、天下一立派な都に築き上げるのだ!」


この時はまだ、逃げ帰るわけにもいかなかった。


大方、アクダム神の銅像がそこらじゅうに建設されるものと思っていたのだが、どういうわけか、帝都ガリウスにはそれらしき銅像が一つも無い。


カイル「ご存知なかったか、テラ・コクメイ殿。

我らが神、アクダム神は唯一絶対の神にして、なおかつ、我らの教義においては、偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)を禁じておるのだよ。

したがって、アクダム神を型どった銅像などは、存在しないのだよ。」


邪宗教でありながら、なぜか偶像崇拝(ぐうぞうすうはい)を禁じているという。


テラ・コクメイは、これ以上ここにいるのは危険と悟り、気づかれないうちに帝国領を去っていった。しかしなぜか追っ手なども差し向けられなかった。


代わりの行商人など、いくらでもいるということなのかと思った。


それか、よほど軍資金に恵まれているのかと悟った。


宛もなく逃げ延びたテラ・コクメイたちだったが、これからどうしようと考えるうちに、気がついたら長城の手前までたどり着いていた。


長城の見張りの兵士が、テラ・コクメイたちの一行の存在に気づき、それとともに、テラ・コクメイは声を張り上げる。


「私は、敵ではない、行商人のテラ・コクメイと申す者だ!」


「なんと、テラ・コクメイ殿か。」


テラ・コクメイは、かなり有名な行商人であり、兵士たちにも顔が通っていた。


「お頼み申す。軍師オビワン・ヨーダ・キタオオジ殿に会わせていただきたい!」


「わかり申した。軍師オビワン・ヨーダ・キタオオジ殿と、その一行の者たちであれば、長城の向こう側におられる。」


さっそく兵士たちに案内されるテラ・コクメイとその一行。


とにかく帝国の実態を、一刻も早く彼らに伝えなければと、いてもたってもいられず、ここまで来たのだった。


「さあ、こちらです。」


兵士たちに案内されるがままに、たどり着いた先は、長城の近くにある集落だった。


そして、テラ・コクメイたちの一行の目の前には、軍師オビワン・ヨーダ・キタオオジと、その仲間である6人、計7人がいた。


キタオオジ「おお、これはこれは、行商人として名を馳せる、テラ・コクメイ殿か。」


テラ・コクメイ「お久しぶりです、キタオオジ殿。」


この2人は古くからの知り合いのようだ。そして軍師キタオオジは、他の6人を1人1人、紹介していく。


キタオオジ「こちらが、マーク・ハミルス。

以下、私の供の者たちだ。よろしく頼む。」


もとをただせば全く面識の無い者同士。


しかしただ一つ共通しているのは、現実世界では不必要な人間たちと判断され、こちらの世界に飛ばされてきた、ということだけだ。


マーク・ハミルス「おや、テラ・コクメイ殿といいましたか。

俺は、魔法戦士のマーク・ハミルス。とはいっても、魔法はファイアボール以外は使用できないんだけどね。」


「俺はハッサン・ガントフ。武闘家だ。」


「私はエルザ・マリーシア、回復役のシスターよ。」


「私は学者のアイラクです。」


「ワタシは商人ハン。」


「私は踊り子のクラリスよ。」


「そして、この6人を率いるのが、このキタオオジというわけだ。

安心したまえ。彼らは君の味方になってくれる。」


「ありがたい。このテラ・コクメイ、感謝いたしますぞ。」


そしてテラ・コクメイは、帝国の恐ろしい実態を、次々と伝えた。


「まず、帝都ガリウスの建設のために、大勢の奴隷が連れてこられ、ムチで打たれ、働かされているということです。

それから、おそらくはその帝都ガリウスが完成した暁には、奴隷たちを用済みで皆殺しにするつもりのようです。

アクダム神の真の復活のための、イケニエにでもするつもりでしょう。」


キタオオジ「なるほどな、それで、いまだにその大勢のイケニエが必要だということは、アクダム神の力はまだ不完全ということなのか。」


テラ・コクメイ「いや、そもそも眠りから覚めてもいない、封印も解かれていない模様だということです。

アクダム神が封印されたのは、以前の帝国が滅びた時。

ですから、封印されていた期間があまりにも長すぎて、力を取り戻すことができていない。

ですから、配下となる者たちが帝国を再興することで、アクダム神の力を取り戻させようとしているものと思われます。」


マーク・ハミルスは2人の話をえんえんと聞いていたが、この時のマーク・ハミルスは、軍師キタオオジのお供の一人という扱いに過ぎなかった。



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