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冷戦状態~帝国兵に助けられた行商人~

その後、クルシュナ王国と神聖ベルザハーク・アクダム帝国の両国は、いつ戦争状態に入るとも知れないと言われながら、わずかな小競り合いすら行われず、にらみ合いの状況が続いていた。


いわゆるこれが、冷戦状態というやつだった。


クルシュナの長城の、あっちとこっちは、まるで違う世界。あっちは神聖ベルザハーク・アクダム帝国の広大な領土。

とはいえ、帝国に住む者たちは、全部が全部帝国の民ではなく、蛮族や、ならず者、野盗、それに帝国に征服された国々の民もいた。




そこに行商人のキャラバン隊が通りかかる。


人数は多いが、武器は短刀くらいしか持っていない。そのキャラバン隊を率いるのは、テラ・コクメイという行商人だ。


このあたりの道には、旅人の積み荷を狙った追いはぎや、馬に乗った野盗などが現れる。


野盗とは、もとはどこかの国の兵士だったのが、戦に敗れ、行く宛を無くした成れの果ての姿だった。


その野盗に取り囲まれていたキャラバン隊。


「何者だ!?」


「おい、その積み荷を、そっくりそのまま置いていきな。」


「ならん!」


「じゃあ、その(いのち)もらった!やっちまえ!」


野盗たち、そしてキャラバン隊も戦闘態勢に入った、その瞬間だった。


「ヒヒーン!」


馬の鳴き声。それとともに、馬の(ひづめ)の音がする。その音はだんだんとこちらに近づいてくる。


テラ・コクメイはすぐに気がついた。


「あ、あれは、あの邪教の神を称える旗は…。」


その音に、異様なものを感じたのはキャラバン隊ではなく、野盗の方だった。


「帝国兵だ!」


泣く子も黙る神聖ベルザハーク・アクダム帝国が誇る、騎馬隊が現れた。


「せいやっ!」


帝国兵は手投げ槍で野盗に攻撃、さらに後方には騎馬弓兵。弓矢で野盗を攻撃。


ヒュッ!ヒュッ!


「ぐわっ!」

「ぐえっ!」


さらに別の帝国兵が剣を抜くと、それを合図に、いっせいに帝国兵たちが野盗に斬りかかってくる。


カキン!キン!


ズガッ!ズバッ!ドスッ!ブシャッ!


「ぐわっ!」

「ぐえっ!」


帝国兵たちは次々と野盗たちを斬っていく。


野盗も元は兵士であったのだが、いかに野盗が、弱い者ばかりを狙って略奪や殺戮を繰り返してきたからとはいえ、帝国兵と野盗では、あまりにも戦闘能力に差がありすぎた。


帝国兵は、何かに取りつかれたかのように戦いを続け、死をも恐れない、不気味な戦いぶり。


野盗はなすすべもなく、多くの者が帝国兵の手にかかり、殺された。


生き残った数人の者たちは、もはや戦意を失い、逃げていく。


「残りの者も逃がすな。」


悪逆非道の帝国兵。逃げようとする者、戦意を喪失した者、命乞いをする者までも、一度敵とみなせば構わず惨殺するのが、神聖ベルザハーク・アクダム帝国の兵たちだった。


テラ・コクメイ「おかげで助かりもうした。私の名は行商人のテラ・コクメイと申す。」


帝国兵「テラ・コクメイ殿か。

それならば、我らが(あるじ)、カイル・ハミルス総統のもとへと参られよ。

道案内は我々がするゆえ、ついてまいれ。」


テラ・コクメイ自身も、最初は半信半疑。


なにしろここは悪の帝国の領内。


しかもその悪の帝国の、帝国兵に連れられて、彼らの大将であるカイル・ハミルス総統のもとへと連れていかれるのだから。


帝国兵に助けてもらって、本当に良かったのか、悪かったのかと、テラ・コクメイも思っていた。


帝国領内はとんでもなく広い。その広い領内を、騎馬隊をはじめ帝国兵たちは、くまなくパトロールをしているという。


「ようやく見えてきた。あれが帝国の都か。」


帝国の都が見えてきた、といってもあれは仮の都で、本当の都である帝都ガリウスと帝国城は、現在は征服した各地から集められた奴隷たちを使って建設しているという。


だから帝都ガリウスと帝国城が完成するまでの、仮の都だという。


そこでテラ・コクメイたちを出迎えたのが、闇仮面カイル・ハミルスだ。


カイル・ハミルスは元は正義の騎士だったのが、ダークサイドに堕ちたことにより、帝国の騎士となったという経緯がある。


そしてカイル・ハミルスを取り囲むようにして、レオパルト、ゲルニック、ガイガンの三将も姿を見せる。


カイル・ハミルス「ようこそ、我が帝国へ。

私はカイル・ハミルス。

そなたは行商人といったな、ちょうどよい。

それならば、我が帝国軍に対し、軍資金、武器、防具、食料、衣服、弾薬、その他必需品の供給を行ってくれないか。」


とどのつまり、そういうことのようだ。


「なるほど、それならば、わかりもうした…。」

カイル・ハミルス「うむ、頼んだぞ。」



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