仲間たちとの出会い
俺はマーク・ハミルス。魔法戦士だ。
だがどうしてだろう、なぜこの世界にいるのか、そしてどういう経緯があってこの世界に来たのか、それが全く、記憶に無い。
それを思い出そうとするのだが、しかしそれを思い出そうとすると、頭が痛くなる、何も頭に思い浮かばないのだ。
まるで頭の中に、霧がかかったかのように…。
「よお、お前がマーク・ハミルスか。」
どこからか声がした。
最初に出会った仲間は、ハッサン・ガントフという、見た感じいかにも筋肉隆々の力持ちの格闘家といった感じだ。
「俺はハッサン・ガントフという武闘家だ。
マーク・ハミルスか、いい名前だな。
ところで、お前の職業は?」
「魔法戦士だ。」
そして、もう一人の仲間も姿を現す。いかにも可愛らしい、シスターのようだ。
「マーク・ハミルスさんですね、初めまして、私はエルザ・マリーシアといいます!
職業はシスター、つまり回復役です!」
「マーク・ハミルスだ。職業は魔法戦士だ。」
俺の素っ気ないあいさつに対して、ハッサン・ガントフがツッコミを入れた。
「おいおい、お前、無愛想だな。
それとな、これからパーティーを組んで冒険する、パーティーのメンバーの名前くらい覚えとけよ。」
さっそくツッコまれた。
「あ、俺のことは、マークでも、ハミルスでも、呼びやすい方でいいよ。」
まずハッサンが答える。ハッサン・ガントフのことは『ハッサン』と呼ぶことにした。
「それじゃあ俺はお前のことを『マーク』と呼ばせてもらうぜ。よろしくな、マーク。」
続いてエルザ・マリーシア。彼女のことは『マリーシア』と呼ぶことにした。
別に『エルザ』でも、どっちでもよかったんだが、ここはあえて『マリーシア』と呼ぶことにした。
「それじゃあ、マークさん、ケガをした時や、毒におかされた時、マヒした時などの回復は、私におまかせくださいね。」
「よろしく、マリーシア。」
このシスターのエルザ・マリーシアは、前世では『早川ひな』と名乗っていた、卓球では将来を嘱望されていたエースだったのだが、学校で壮絶ないじめに逢い、絶望した彼女は学校の屋上から飛び降りて、それで、こっちの世界に飛ばされて来たのだという。
可愛い顔と声で、実はそんな壮絶体験をしていたんだなと、改めて思った。
「さてと、あとは俺たちのパーティーのボスである、例のじいさんが来るはずなんだけどな。」
気がついたら、パーティーの人数は俺たち3人も含めて、6人になっていた。そしてそれぞれ自己紹介を行うことになった。
まずは、学者のようだ。
「皆さん、初めまして。
私は学者のアイラクといいます。
私は戦闘能力よりも頭脳でパーティーに貢献するタイプですので、どうかよろしくお願いいたします。」
続いて、商人と遊び人を兼任しているのだという。
しかし何で、商人と遊び人を兼任しているんだ?
全然違う職業であるはずなのに…。
「私は、旅の商人でもあり、遊び人でもあるハンという者です。
このハンは、武器や防具、その他アイテムなどの品定めをしたり、また、お金を稼ぐのが得意なのであります。
どうかこのハンを、よろしくお願いいたします。」
他にも、とある商人の町として建設させたという『ハンバーグ』の町の代表になっているという。
町の創設者の名前をとって、『ハンバーグ』と名付けたという。
そして6人目は、こちらもまた、踊り子と盗賊を兼任しているのだという。
「私は踊り子兼盗賊の、クラリスです。
私の特技は踊ることで敵を混乱させたり、MPを吸い取るような踊りなの。
あとは、敵からアイテムを盗んだり、複雑な鍵穴でも簡単に開けたりできるのよ。」
以上、ここまで6人の仲間たちを紹介したが、肝心要の7人目、パーティーのボスの紹介がまだ行われていない。
その時、扉が開いた。
「遅くなってすまなかった。」
そこに一人の白髪の老人が入ってきた。
まさか、この白髪の老人が、パーティーのボスだというのか!?
「ああ、申し遅れた。
みんなもう集まっていたのだね。
私は、このパーティーの老軍師、オビワン・ヨーダ・キタオオジという。」
ここで改めて、メンバー構成を確認することになった。
魔法戦士
マーク・ハミルス
武闘家
ハッサン・ガントフ
シスター
エルザ・マリーシア
学者
アイラク
商人兼遊び人
ハン
踊り子兼盗賊
クラリス
老軍師
オビワン・ヨーダ・キタオオジ
最初から最後まで、この7人のパーティーで行動を共にするという。
オビワン・ヨーダ・キタオオジが、俺、マーク・ハミルスの顔を見て、何か考え込み、そしてうなづくような仕草を見せた。
「そなたがマーク・ハミルスか。
んんー、なるほどな。」
どうやら老軍師キタオオジには、人の顔を見ただけで、その人がどういう能力や人格の持ち主かを、一瞬で判断する能力を持っているようだ。
ちなみに俺らが現在いる、この国はどこの国なのかというと、エスペラント王国という、人間と亜種族が共存する国だという。
クルシュナ王国や、旧アクダム帝国地域とも隣接しているという。
さて、これでひとまず、仲間の7人が全員揃ったところで、最初の作戦会議となった。
真ん中に長方形の机が縦に置いてある。
その正面の位置に老軍師のオビワン・ヨーダ・キタオオジが座る。
机の左右には、椅子が3つずつある。それらの椅子に他のメンバーたちが座る。
軍師キタオオジを中心として、右側の3つの椅子には、前方からマーク、ハッサン、ハンが座り、左側の3つの椅子には、前方からマリーシア、クラリス、アイラクが座るという形になった。
マークとマリーシア、ハッサンとクラリス、ハンとアイラクが向かい合う形だ。
部屋にはなぜか、ライオンの頭を型どった彫像が飾られている。
キタオオジ「それではさっそく、我々が最初に攻略するダンジョンについて話す。
ダンジョンの入口はここだが、周辺には山賊どもがうろついているエリアがある。」
山賊がいるということは、ダンジョンの入口は、山の中だな。
用語解説
エスペラント王国
人間と亜種、つまり亜人間の種族とが共存共栄している国。
『エスペラント』という国名自体、共存共栄という意味がある。
旧アクダム帝国を滅ぼし、その後に平和な世界を築いた。
クルシュナ王国
こちらは亜種、つまり亜人間の種族が治めている国。
国王となっているのは、エルフの女王で、他にもケンタウロス族や犬人族、ネコ耳族などがいる。
エスペラント王国とともに、旧アクダム帝国を倒すための戦いに参戦していた。
旧アクダム帝国
以前はアクダム帝国という国があった。
こちらは人間界を征服しようとしていた悪の帝国。
いちおうは人間の国だが、悪人の国とも呼ばれ、極端な純血思想のもとに、帝国民以外の民族や亜種を排斥しようとしていた。
また帝国内の貴族、上級民以外の下級民は対等に扱われなかった。
しかしエスペラント王国とクルシュナ王国の連合軍に敗れ、皇帝は戦死、それと同時にアクダム帝国も滅亡した。
エスペラント王国からクルシュナ王国にかけて、アクモベア平原という広大な平野が広がる。
その平原の肥沃な土地を耕し、エスペラント王国とクルシュナ王国は成り立ってきた。
最初に攻略するダンジョンの入口は、平原から山岳地域に入り、しばらく行った先のテス村の近くにある。
魔物はスライムやゴブリン、ファーラット、大ミミズ、耳飛びねずみくらいしかいないが、なぜかこのダンジョンを占領しているのは、山賊の一団だという。
マーク・ハミルスたち7人のパーティーは、さっそく向かうことになる。
が、しかし、マーク・ハミルスには致命的な弱点があった。なんと魔法戦士でありながら、剣の腕はそこそこでも、魔法に関しては、ファイアボール以外使えないという。
「そういうわけなんだよ、というわけで、みんな申し訳ない。」
そう言って謝るマーク・ハミルスだった。
エルザ・マリーシアが、老軍師キタオオジに尋ねる。
「本当なんですか?キタオオジ軍師。」
「年をとるとなぜか、その人の顔を見るだけで、
その人の能力がわかるようになるんじゃよ。
体力や腕力では若者にはかなわないが、その分、豊富な知識と人生経験があるからな。
しかしな、最近思うのは時代の移り変わりによって、
昔の知識や人生経験が、陳腐化してしまい、
全く役に立たなくなってしまっていると思うことがあるのじゃ。
これでは豊富な知識も、長い人生経験も、宝の持ち腐れということになってしまう。
やはり、こういう時に役に立つのは、若さということなのか…。」
キタオオジ軍師の長い話だ。とにかく年寄りだからなのか、キタオオジ軍師は、やたらと長い話をしたがる。
そして、目的のテス村に到着した。
「ここが、テス村か…。」
まずはテス村というところに到着した。
一見何の特徴も無さそうな村だと思ったが、とりあえず泊まれる宿はあるようだ。




