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あとがき その他

あとがき


「鬼狩り紅蓮隊/鬼哭冥道」をご覧いただきまして、まことにありがとうございます。ペンネームより本名の方が芸名っぽいと噂の南 群星と申します。本作品は2016年に「劇団オグオブ」が上演した舞台演劇「鬼狩り愚連隊、参上!〜偽典・酒呑童子絵巻〜」と言う作品をウェブ小説の形にノベライズしたものです。本作品を執筆するにあたり、元ネタとも言うべき舞台用台本版を・・・一回も読み返しませんでした(笑)。覚えているコンセプトだけを借用し、舞台版とは全く違う作品に仕上がっております。いずれ折を見て「戯曲版・鬼狩り愚連隊、参上!」の方もアップしたいと思いますので、その時には戯曲版と小説版の違いをお楽しみいただければ幸いです。


今回初めて「小説家になろう」さん上にて「ウェブ小説」というジャンルにチャレンジしてみたわけですが、まずその「フットワークの軽さ」に大変驚かされました。通常、一旦書き上げて上梓された作品は、後で「あの設定無しにしたい」とか「あのキャラの名前変えたい」とか思い立っても後の祭り、運良く重版が決まって改定できるチャンスが訪れるまで書き直すことは不可能です。それがウェブ小説上においては、思い立ったら即その場でちゃっちゃと改定ができる、この柔軟さが実に快適でした。本作の中でも最初にアップされていたシーンを後になって(こっそり)書き直したことが多々ありました。


例を挙げると、住吉大社放火の疑いで投獄されていた紅蓮隊一行を助けに来たのは、最初は惟任これとう上総介ではなく、全く別の人物でした。惟任の初登場はもっと後の予定でしたが、アップした後「あ、ここでサッサと出しとけば話がすっきりしていいじゃん」と思い立ち、スナック感覚でチャチャっと改定しました。哀れ没になった登場人物は、彼は彼でまた物語世界における重要人物の一人なのでいつか続編を書く機会があったら晴れて日の目を見るときもあるでしょう、合掌。


主人公である「源 頼義」と言う人物にも少し触れておきます。当然ながら史実では男性であるこの平安時代の武者貴族の名は、叔父頼光に比べればいささか・・・というかほとんどの方は耳にされたこともないかと思われます。ただ、彼が所領を引き継いだ「河内源氏」という一党、及び彼の四人の息子たちが広げた関東、東北地方における血脈は凄まじく、直系の子孫である源頼朝、義経兄弟をはじめ、新田義貞、足利尊氏、武田信玄、佐竹義重、南部晴政といった、まさに綺羅、星のごとき名門武将を後の時代に排出しています。江戸幕府の開祖、徳川家康も「河内源氏」の血統を自称していました。その人物像はやや怒りっぽい、豪放磊落な弓の名手として知られ、父頼信と共に「平忠常の乱」を平定し、後に「前九年の役」と呼ばれる奥州安倍氏との死闘を繰り広げる当代きっての英雄です。


そんな頼義の英雄譚は、遠く新潟は佐渡島に伝わる伝統芸能「金平浄瑠璃」という形で脈々と伝えられて行きました。享保年間に上方の影響を受けて興ったとされるこの古式ゆかしい人形芝居では、「のろま人形」と呼ばれる独自の発展を遂げた仕掛けの人形芝居として地元の人々に長く愛され続けて来ました。その「金平浄瑠璃」の中でも特に好んで上演されたものが頼義と彼の配下である「子四天王」の活躍を描いた「子四天王もの」と呼ばれる作品群です。源頼光と「四天王」の物語だけでなく、その子供達の活躍する話が流行った背景には大変興味深いものがあります。江戸時代にも二世ブームがあったのです(笑)


平安時代という(正しくは平安時代に似たどこかの世界)、それも貴族社会から武家社会へと移行する過渡期の難しい時代背景を舞台とする物語はあまり多くありません(書いて見てわかった、こりゃ大変だ)。この作品をみて、一千年前の日本の世界に少しでもご興味をお持ちいただき、これを機に「源氏物語」や「今昔物語」といった古典作品に触れていただける機会が少しでもございましたら、この作品を書き上げた「意味」があったと自己満足できる次第です。


次回作品はしばらくお休み(取材とお勉強)をはさんで、また近いうちに発表して行こうと予定しております。「鬼狩り紅蓮隊」の続編を書くか、また別の新作を書こうかまだ決めかねていますが、その時にまた皆様と再びお会いできることを楽しみにしております。


2018年 10月中旬 南群星





作品解説(のようなもの?)


本作品はフィクションであり、登場する人物、団体、歴史的事件等は全て史実を元にした架空のものである。以上を踏まえて、物語の構成上史実と相違のある点を解説していく。


・物語の時代設定は長保ちょうほう年間 (西暦999年〜1003年)を想定している。その間に起こった出来事(藤原道長の内覧就任、頼通の元服など)で、別の年に起こった出来事を同年に書いたり、事象が前後している箇所(頼義の元服、左馬介就任など)が存在する。また、この期間に都、住吉大社等が火災により消失したという事実はない。


・平安期律令制に「衛士小隊」という部署は無い。また「御陵衛士」とは幕末に新撰組から分派した浪士集団から名を拝借した架空の役職である。従ってこれらに関する記述は皆架空の設定である。


・作中源頼義が「左近衛大将」の役を授かり「左近頼義」を名乗るが、史実では頼義が左近衛大将に就任したことは無い。また「不動将軍」という呼称も架空のものである。


・息長氏に関する設定は作者独自のものである。ただし、息長氏が近江の伊吹山周辺を所領とし、製鉄に関わっていた氏族であった事はその名前からも推察される。また、息長氏が管理していた近江六郡のうちのひとつは「坂田」という。


・金太郎こと坂田金時のモデルとされた下毛野公時しもつけぬのきみときは実在の人物だが、18歳の若さで夭逝している。


・その他、史実と違う箇所、誤認識は作者の不勉強のなせるものであるものとしてご容赦いただきたい。





参考文献一覧(順不同・敬称略)


「源 頼義」元木泰雄 日本歴史学会編集 吉川弘文

「国史大辞典4」 吉川弘文館

「日本歴史大事典1」 小学館

「神道の本」 Books Esoterica 学研

「道教の本」 Books Esoterica 学研

「加持祈祷秘密大全」 小野清秀 大文館書店

「今昔物語集一〜五」 新日本古典文学大系 岩波書店

「今昔物語集索引」 新日本古典文学大系 岩波書店

「謡曲百番」 新日本古典文学大系 岩波書店

「大鏡」 日本古典文学全集 小学館

「藤原道長の日常生活」 倉本一宏 講談社現代新書

「藤原道長『御堂関白記』上・中・下 全現代語訳 倉本一宏 講談社学術文庫

「全現代語訳 小右記」1〜7 倉本一宏 講談社学術文庫

「日本史総合図録 増補版」 山川出版社

「朝日百科 日本の歴史3 古代から中世へ 平安京 都市の成立」 朝日新聞社

「戦乱の日本史[合戦と人物]」2 平安王朝の武士 第一法規出版

「京女 (きょうおんな)そのなりわいの歴史」 高取正男編 中公新書

「鬼の風土記」 服部邦夫 青弓社

「エミシはなぜ天皇に差別されたか 前九年の役と後三年の役」 林 順治 彩流社

「日本食物史〈上〉古代から中世」 桜井 秀 足立 勇 雄山閣

「新国史大年表 第二巻 日置秀剛編 国書刊行会

「平安時代史事典 本編上・下」 角川書店

「東北の古代史5 前九年・後三年合戦と(つわもの)の時代」 樋口智志編 吉川弘文館

「やまとなでしこの性愛史 古代から近代へ」 和田好子 ミネルヴァ書房

「岩手の古地名物語」 大正十三造 熊谷印刷出版部

「日本家系・系図大事典」 奥富敬之 東京堂出版

「日本の歴史06道長と宮廷社会」 大津 透 講談社学術文庫

「殷 中国最古の王朝」 落合淳思 中公新書

「邪視」 F・T・エルワージ 奥西峻介 訳 リブロポート

「日本お伽集1・2」 森 林太郎、鈴木三重吉ほか 東洋文庫

「遊女Ⅰ・Ⅱ」 中野栄三 雄山閣アーカイブス

「日本の古典芸能7 浄瑠璃」 平凡社

「図説 岩手県の歴史」 河出書房新社

「図説 秋田県の歴史」 河出書房新社

「図説 京都府の歴史」 河出書房新社

「捕鯨〈1〉〈2〉 (ものと人間の文化史)」 山下渉登 法政大学出版局

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