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最終決戦・大内裏大極殿 風雲、急を告げるの事

凍りついたような、長い沈黙が続いた。



「坊や、だと……?」



金平の独り言のような問いかけに白面童子もまた独り言で答える。



「ふふ、昔なあ、産まれたばかりの赤ちゃんを己の不注意で死なせてしまった愚かな王妃がおったんよ。王妃は泣いて泣いて、それでも死んだ赤ちゃんを諦める事ができずにとうとう禁忌とされていた『反魂(はんごん)の術』をその子供に使うたんよ」



白面童子は愛おしそうに幼児の頭蓋骨を撫でる。



「けどなあ、あんじょうよう赤ちゃんを生き返らせる事はできたものの、本職の術者でもない未熟なその女の施した儀式で黄泉(よみ)(がえ)った赤子は()()()が欠けておってなあ。結局その子はヒトに育たず、恐ろしい『鬼』になってしもうたん。それでも母親は必死になってその子をかばってかばって……とうとう自分自身を『鬼』に墜としてまでその子供を守り続けた。鬼となった二人は逃げて、どこまでも逃げて、それでもその土地の土地神や英雄に追い立てられて、とうとうこぉんな果ての島国にまで流れてきてもうた」



頼義は瞑った目のまま、静かに白面の独白を聞いている。



「でも、もうそれも終わりやね。こんな(ひな)びた所で終わるのは不本意かも知れへんけど……もう、いいのよ坊や。坊やは何もかも忘れてお休みなさい。母様は()()()()ご用を済ませて、それから坊やの元に参りますからね。だから、それまで……」



最愛の子の骨に最後に優しく口づけをする。そして……



「そうだ、貴様らも聞けい!!」



突然白面童子が頼義たちに向き直って怨嗟の声を上げた。白じみかけていた空が急速に分厚い雲に覆われて行き、三人の間を恐ろしいほどの速度で風が吹き荒れ始めた。



「我が名は妲己(だっき)、我こそは辛帝紂王の寵姫(ちょうき)にしてこの世全てに悪徳と怨念を撒き散らす白面金毛九尾の荼枳尼天(ダーキニー)なるぞ!!人間どもよ、八幡神よ、愛しい我が子を殺した貴様らへのこの恨み、この憎しみ、貴様程度の祈りで浄化できると思うな!!我は必ずや現世(うつしよ)に蘇り、再び人間どもに災いとなって死を、不幸を振りまいてやる!!たとえ、何百年かかろうと!!!!」



突風がさらに勢いを増し、頼義たちの視界を奪う。金平は吹き飛ばされないように頼義の小さな身体をしっかりと抱きしめ、地面に深々と突き刺した剣鉾にしがみついて踏ん張った。



「吹けよ風、其は我が呪いの舞ぞ。大地を砕け雷撃、其れこそは我が憎しみの歌ぞ。滅べ!死ね!この世全ての人間どもに我は永久(とこしえ)に消え果てぬ呪詛の楔を打ち込もうぞ!!オン キリキリ カク ソワカ、オン キリキリ カク ソワカ、オン キリキリ……ははははは、はははははははは!!!!!!!!!!!!」



白面童子が怨嗟の荼枳尼天真言を唱えながら影の中に溶け込んで行く。最後にかすかに映ったその影法師は、いくつもの尾を振りかざした狼か狐のようにも見えた。やがてその突風もおさまり


全ての戦いが終了した。

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