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オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ

オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ


詠唱が、聞こえる。


オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ

オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ


永劫ともつかぬ時をかけ、女はひたすらに真言を唱える。幾千、幾万、どれほどの回数の真言を、この女は唱え続けているのか。


オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ

オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ


女の前にはこんもりと積み上げられた小山があった。否、小山ではない、それは・・・


女の亡骸であった。


何百人と知れぬ若い女の死骸が無造作に、それでいてどこかうやうやしくもあるような規則的な並びで積み上げられていた。


そのうず高く積み上げられた女どもの青黒い死骸のその頂点には、切り落とされた男の生首が緋色の織物の上に鎮座していた。この尋常ならざる景色の中にただ一人存在する男のその首級は、すでにいかほどの風雪にさらされていたのか、肌は乾き、半開きに固まった唇はすでに崩れかけて黄色い前歯をのぞかせている。


その生首に向かって、女はもう幾日も真言を詠唱し続けていた。かつては艶やかに輝いていたであろう黒髪はもはやくすみ縮れて、波際に打ち捨てられた海藻のようになり、長いこと一歩も動かず、自ら垂れ流した排泄物にまみれ青黒く荒れ果てた肌は、彼女自身もまた目の前の女たち同様死に腐れているかのようだった。


それでもなお、女は詠唱を続ける。


オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ

オン キリキリ カク ソワカ オン キリキリ カク ソワカ


そして


生首の両眼がゆっくりと開いた。

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