chair
―――5契約
「ちょっ、ちょっとまってください!」
俺の名前は黒谷天 えっと今どういう状況かというと
怪しい人(悪魔)に殺されかけてます
なぜそのような悲劇が起きたのか
僕はなにも覚えていませんと言ったから(?)です
「覚えてないだと?そんな嘘通じるとでも思ってんのか?」
「嘘じゃないです 本当に覚えてなくて…」
「どこからきたとか 好きな食べ物とかもか?」
「好きな食べ物はメロンパンです…」
「おお!俺はどら焼き派だ!」
なんの流派か知らんが最低限ドラえもんは知っているようだ
ひょんなことで意気投合とはこのことである
「今年のドラえもんの映画は泣いたよなー
奇跡の島ってやつで結局は昔のお父さんと冒険してたって話!
いや〜それに気づいてない感じだけどまぁ過去に戻っての
大冒険だからタイムパラドックスが生じて…ペラペラ」
どうやらこの大男は何年か前にやっていたドラえもんの事を言っているらしい それにしても俺も見ていたから知っているが予備知識だけが増えて自分のことが何も覚えていない事実と凄くあいつがおしゃべりなのに驚いている かなり掘り下げると帰り際にドラえもんがひみつ道具で記憶を消したから曖昧にしか覚えてないんだっけ
記憶を消した?
待てよここにいるのは俺以外人外だ…何を考えているかわからない
人間もそうだが尚更わからぬ なにかをしでかすかもしれぬ
「オホン! そんな事よりお前の素性についてだったな」
勝手に喋っておいて自分でレールを脱線しといて直した
ガチャッ キィーッ
突然扉が外から空いたのだ 閉ざされた希望のドアが開いた瞬間だったすかさず男(悪魔)は鷲掴みしているライトをドアに向けて吠える
「おい まだ終わってねぇぞ!」
「ベレトル副隊長、隊長が読んでまっせ」
希望の扉を開けたのはさまに俺を助けてくれた恩人
アノンだった
「おお、そうか なんで隊長が?なんか言ってたか?」
副隊長のベレトルがさっきまでの威勢とは反対にすごく怯えている額にはキラリとひかる汗も見えた
身体はでかいくせに肝は小さいんだなまぁ人の事言えないが
「俺はよくわかんねぇよ とにかく至急だ 早う!」
「おお さんきゅう アノン」
ベレトルは手で小刀を切って取調室を去っていった
駆け足で行ったのか部屋がガタガタ揺れた
不意にアノンと目が合った
潰れた机を避けてこちらに近づいてくる
「お前は…!あの時の!あの後探しに行ったんだけどいなくて
心配したんだぜ?無事でよかったぜー」
どうやら心配してくれているようだおちゃらけてはいるが
かなり心配性な性格なのだろう
「この間はありがとう 君が来なきゃ俺どうなっていたか…」
「んまぁ 帝国で身体をいじくられてたかな」
アノンは真顔でいった 左手で鼻をほじりながら
「いじくられてた!?なんで?こわこわこわ」
「詳しい話は後だ それとひとつ提案がある」
アノンは人差し指を立ていった ちなみにぼじった指ではない
「俺と契約を結ぼうぜ」
俺は目が点になった 悪魔との契約 よくは知らないが欲しいものを手にする代わりに凄い代償を払わなければならないとかいう
逸話でしか聞いたことのない伝説の?
まてまてまて鼻ほじった悪魔からまさかそんな提案がくるなど誰が予想したでしょう度肝を抜いた瞬間だった
「け、契約って…」
「そんな身構えなくて大事だぜ?これは取引ともいうかもね」
アノンは続けた
「話は少し聞かせてもらったがお前記憶がねぇんだろ?
記憶喪失ってやつだなこのままじゃ素直に帝国へ連れてかれて
ENDだそこで俺がお前と契約するんだ」
「お前は記憶がなくて困ってるそして狙われてるだから俺が守ることにする!」
「要するに俺の安全を君がいれば保証するってこと?」
「24時間365日いるぜ?」ドーン
そこまではいいかなという台詞を俺は飲みこんだ
ここまで俺に優しくしてくれる悪魔は初めてだからだそしてなによりこいつといると楽しそうだ
「わかった!契約するよ!頼むぜSP!」
「おう!よろしくな!っとまだ名前聞いてなかったぜ?」
「黒谷天 天ってかいてそらって読むんだ」
「天か…よし天!行くぞ!」
アノンは俺の肩を掴みいった
「どこに?」
「決まってんだろ? 記憶を取り戻すんだろ?」
「お、おう」
俺は悪魔と契約した しかしその選択肢が正しかったのか
過ちだったのか その時はまだ知らなかった
悪魔の本当の本性を…
――――6本
「あー!クソったれ!」
ガタガタと反乱軍〈oneness〉の基地が揺れている
原因は明白ベレトルが暴れているからだ
「どうしたの副隊長? アノンにでも騙されたとか?」
「…!? 何故知っているリベア!言ってくれたら騙されなかったのにーー!」
ガタガタよりグラグラになり観葉植物も泣いている
ケラケラ笑うリベア
彼女は天が寝ていた部屋ではなく広いミーティングルームで
パソコンのような通信デバイスを使い作業していた
まるで見た目はOLサラリーウーマンである
「言ったら騙されなかったのはおかしいわ」
「なんだと?」
「だから私はアノンがなにかを企んでるのをわかっただけで
なにをするかは知らなかったもの 言ったって伝わらないわ」
「……」
さっきまで大地震のように揺れていた基地は止まり揺れは収まった
「ふふふ それでなんで騙されたの?」
「隊長が呼んでるから来いって行ったら隊長は今日は出掛けてるって聞いて…」
「あははっおかしい アノンは嘘はついてないわ」
「どういうことだ?実際に出掛けていたんだ!俺は目で見て耳で
聞いた!」
「いや丁度アノンがベレトルを呼びに行った時司令から連絡があってね隊長が大急ぎで出て行っちゃったの」
「(うわ隊長も俺と同じ境遇だったなって…)」
「本当 間が悪いねぇ」
ベレトルはリベアの同情を背中で受け部屋を去った
すれ違いざまに手首が光った
リベアは腕時計型通信デバイスを取り出した
「ちょっとアノン!取り調べは終わったの?」
小型機から声が届く
「ちょっくら冒険してくるわー」
「え?」
ブツッ プーップーッ
「全く世話が焼けるわこっちはもう事件が山のようにあるのに
…」
アノンの机の上には1冊の本となにかをまとめたレポートが
置いてあった
「仕事はちゃんとするのね…」
呆れるままレポートに手を伸ばすとその横にあった本に目がいった その本のタイトルは汚れていてみえない
「汚い本と捕食森の戦いって…なにを考えているのかしら?」
ペラペラと資料に目を通すリベア
そこにはこの間の捕食森にて起きた
誘拐事件と記されている
そこにいたのは老人の悪魔に人間それと帝国の悪魔
人間に森のつるを操り縛り付け拷問したあげく老人に危害を加えた
悪しき悪魔を捕まえ人間を開放し保護した
「こう見ると(ちゃんと仕事しました)感じがでてるけど
絶対なにかしらやらかしたわね…帝国に刃向かったって…」
リベアは重いため息をついたそして思った
「やるじゃないあいつ」
本はうっすらとchairの文字が様子を伺っていた
〈oneness〉それは過去に深い傷をおった者達の集まり
やつらに復讐するための集団
そして誰よりも己の正義の為に戦う
明日の為 未来の為 信じる為…