pretender
好きな食べ物は焼き鳥
コケコッコぉ
31――影
人は情報を得るために、まず視覚から入ると言われている。そして判断するのにも視野から取り入れた情報が80%を超えることも分かっている。次々聴覚、嗅覚、触覚、味覚となる。情報を得た目はどうなるか?それは信号となり脳に届いて処理をする。大脳皮質というところで判断や思考するのだ。俺は大脳皮質がイカれちまったのか?とアノンは思考する。
「なぁ、天?俺のマシンは時速400キロは出せるそりゃやべぇマシンなんだけどよ…。」
「あぁ、アノン。それは乗っててやべぇと思ったよ。でもそれよりやべぇことが今起きているってことだよな…。」
アノンたちはアムアスの気配を追って捜索を開始しようとしたところ謎の影に襲われたのであったのだ。影はマシンにまたがる2人を狙ってゆっくり近づいてくる。
「こいつは…一体なんだ?」
アノンが言った。そしてその問に答えるかのように、影は答えた。
「殺してあげるよ…アノンひひ。」
すると影は素早くアノンたちの後ろへ回り込み、首筋へナイフのようなものを突き立てた。だか、アノンは反射的に身を交わし攻撃を避けた。どうやら標的は天ではなく、アノンだけ狙っているということは理解できる。
「っ!あっぶねぇ!何しやがる!」
「アノン…この影はまさかとは思うが、そんなどうして…。」
影の鋭い刃物はギターを模していて、見た目は到底武器には見えず、そしてどこか見覚えのあるギターであった。天とアノンが目を交わす。アノンの目は緑色であり、ミトコンドリアがたっぷりいそうな色合いである。その瞳は悲しみを表しているようだった。アノンが顎に手を当てて唸る。
「どうしてこうなって俺たちを襲う理由が見当もつかないが、見当はつく。」
「どっちだよ。んで、影はあいつ本人なのかってところなんだよ。似ているはいるけど、あいつはそういうことするやつではないってことはお前が1番知ってるんじゃないんか?」
「あぁ、だとしたら…あれがこうなって…うん、これならなぜ俺らが襲われ、なぜあいつに似ているか合点がいくなぁ。」
「!分かったのなら早く言えよ。」
「その前にとりあえずこいつを倒す。話はそれからだ。」
「よく分からないけど、戦うんだな!頑張れ!俺はマシンを見守ってるから!」
「……。」
影は2人のやり取りを黙って聞いていた。そしてぶつぶつと何かを呟いていた。話が終わったあとに合わせて影はタイミングよく襲い掛かってきた。なんて優しい敵なんだと、アノンは思った。奇襲みたいな姑息な手を絶対に使わないその魂はあいつしかいないと改めて理解した。
「ギターの影さんよぉ、どうして俺を狙うんだ!?一体なにが目的だい?」
影はアノンの話に耳を傾けることもなく、必要にギター型のナイフを振り回している。アノンはすかさず、「錬金」で対応する。そこで、目の前を高速で何かが走り去るのが見えた。
「やべぇアノン。このマシン止め方わかんねぇ。」
「ちょ…え?天s…。うぉ!あぶねぇ!」
その高速で移動した物はそう言い残し、暴れ馬のようにアノンの周りをぐるぐる周回し、遠くへ走り去るった。
「ちょ…え?天s…。うぉ!あぶねぇ!って台詞2回言っちゃったよ!現状カオス過ぎて俺までおかしくなるわ!」
「アノン…君は僕が殺さなければいけない…ひひ。さぁ、おいでよ。」
アノンがポカンと口を開いていることに目もくれずに、影は背後から襲い掛かる。
「死神の踊り…!」
32――お姉さん
ブォン!
「なんで止まんねぇんだよ!こいつ!ブレーキ引っ張ってるのに!うわぁ!」
砂漠地帯を獲物を狩るチーターのように走り去るマシンにまたがる異世界へ迷い込んだ男 天はそこにいた。チーターという比喩は些か間違いではないかと思ったが後から思うと正しかったと言えた。爆速で暴れ回るマシンから見える景色は格別だった。
天は普段は乗り物酔いをし、車に乗る際には酔い止めを欠かさず飲まなくては吐いてしまうほど弱い体質だった。しかし、このマシンは全くといいほど酔わない。むしろ歩いているより気分がいいと思った。ボディから伝わるエンジンの駆動音が心臓の心拍と共鳴するかのようだった。
周りの景色は紅い太陽が照らす夕焼けで自分の影がとても伸びていた。所々草木があり、小動物のようなものが見え隠れしているのもハッキリわかった。天はイカれたように走るマシンに文句を言ったが、少し反省した。
ボッ!ブォォォ…
少しするとマシンの調子がおかしくなった。逆に謂うと暴れなくなり平常運転になった。一体こいつにとって平常なのはどっちなのかと思った。すると目の前に1つの集落が遠くへ見えた。どこか見覚えのある町であった。
「あっ…!あそこは!!」
風変わりな町ではアノンの情報によれば年に一度の大きな大会が開かれているとのことだった。バイクのカーナビ的な地図が目的地を示している。あの双子悪魔に連れ去られたところである。少し記憶が混濁しているが、辛うじて覚えていた。そして気が付くと拷問されていたことを、振り返りながら徐々に思い出していった。
町の入口では賑わっていてどうやら大会が開かれているそうだ。やれー!そこだー!と歓声が町の外まで聞こえてきた。天は町の前でバイクを降りた。マシンはたちまち変形して、腕時計型に戻った。ホント質量保存の法則ガン無視やんか!と思う天であったが、目の前の光景を見て法則なんて関係ないことを悟った。
「ふっふっ…あーっはっはっはぁー!」
とってもお胸が大きいお姉さんが闘技場のてっぺんで踊っていたのだ。そして、高らかに笑っている。町の住人がお互いに殴り合い、血だらけになりながらも勝利を掴もうと相手を倒している情景が天の目に写ったのだ。一応断っておくがお胸が大きいお姉さんに惹かれた訳ではない。
こんな大会があるのかと息を飲んでいるとお胸が大きいお姉さんと目があった。こちらに気づいたらしくお姉さんは黒い美しい翼を広げ、天のところへ音速で飛んできた。そして背後に回り込まれで耳元で囁いた。
「おや、こんなところに坊やが1人…貴方ちょっと祭りに興味ない?今丁度真っ最中なのよ…いいかしら?」
「お、お姉さんはど、ど、どうして祭りに参加してるの…ですか…?」
男、天はお姉さんに弱いのである。もう一度言おう、天はお姉さんに弱いのである。ドキドキして心臓が飛び出そうだ。
「どうしてって…戦いってこう、ゾクゾクするじゃない?しかも命がかかった戦いなら尚更、その生命が生きてるって感じがするじゃない?それを見るのが本当にだぁい好きなの。」
「…ッ! お姉さん、いい趣味してますね…。ちょっと質問いいですか?」
天は怒りを堪えた。唇を歯で噛み、血が少し出た。鉄分の味がしたが、状況を整理しなけばと思い脳をフル回転させて、お姉さんの目的を考えた。パッと闘技場を見ると。周りより人一倍身体が大きく、強そうな人が2人いた。
「あそこにいる2人って…?」
「あぁ、あれは私の下僕よ。私の力で操作してるの。」
「へぇ…じゃあ来る時に会った黒い影でギター持ってるのって?」
「…それも私の下僕よ…。なにが言いたいのよ?」
「俺の仲間のアムアスを何処へやった!!?!」
「貴方のような勘のいいガキは嫌いよ。」
最近、忙しくて更新できなくて申し訳ございませんでした。
しかし、ストーリーは止まりません。
なので、これからもやってくので応援よろしくお願いします。
PS冨樫病ではない。