第七話 戦略
「はぁ、はぁ」
俺は全力で敵から逃げてきた。あの熊、意外と早く、追いつかれそうになった。が、流石に曲り道を大量に通ったので、大丈夫だろう。
それよりも今は対処法だ。
今のところ【火属性魔術】だけが、攻撃として恐らく有効な手段だろう。剣とかそこらへんにあったら、どれほどいいか。まぁ、そんな夢を言っててもしょうがない。
でも、まずは能力の詳細を知ることが最初だ。
「【火属性魔術】詳細欄」
【火属性魔術】Ⅰ
【分類】基本属性
【希少度】通常
【説明】火属性の魔術が使えるようになる。ただ、適正を持つだけなので、完全に使いこなすまでには至らない。
【使用可能】
【火球】
ウィンドウが現れる。
【魔術】は項目が少し違うようだ。特に【使用可能】といった項目が増えている。
「でも、どうやって使うんだ?」
俺は軽く、唱えてみる。
「【火球】!」
すると、俺の脳裏に無数の式が浮かび上がり、頭の中で渦巻いた。そして、それが終わると、体内から何かが抜け落ちるような感じがした。
抜け落ちた瞬間、それは火を生み出し、球体を生み出した。何となく、操れる感じがする。
俺はクルクルと手を動かしてみる。すると、火の球…【火球】はクルクルと回った。手と全く同じ動きだ。手で操れるのかな? だけど、この世界、念じてみたり、唱えてみたりという起動方が多いから、それでも動かせるのかな?
「回れ」
俺はそう言ってみる。すると、さっきのようにクルクルと回った。
それと同時に火の球が消えた。
時間経過で消えるのかもしれない。俺はもう一度、【火球】を出す。
今度は「穿て」と言ってみる。なんとなく、厨二病になった気分だ。
すると、火の玉は飛んでいき、壁にぶつかって時に軽い爆発を起こして消えた。壁の方に行ってみると、微妙に抉れている。
「でも、これだけじゃ、戦える気がしてこないな」
壁を抉るのだ。確かに威力はあるのだろう。だが、スピードが遅すぎる。これじゃ、超至近戦になった時や相手が油断している時にしか使えないだろう。
俺は使える技能がないか、ステータス欄を見て、詳細欄を開いていく。途中、【幻視】の詳細欄を見る。
【幻視】Ⅰ
【分類】精神系
【希少度】通常
【説明】対象に幻を見せることができる。相手が精神系の耐性を持っていると発動しない。
なるほどな。うん? あれ? これ結構使えるじゃんか……
熊に幻影を見せながら、【火球】を当て続ければ、意外といけるんじゃね? 【幻視】で架空の敵を見せて攻撃させれば、敵はその攻撃を回避するために移動し、それで大きな隙ができる。
もし、弱ってきたら、それで倒せばいいし、弱らなくても、最悪なんかの幻影見せて逃げればいいし、あれ、いける気がしてきた。
「まぁ、他の出口もあるかもだし」
闘わなくてもいい最善の方法を考えながら、洞穴の中を歩き始めた。