第六話 熊
「洞穴だ」
俺は歩いていると、洞穴らしき場所を見つけた。森の中にちょっとした洞穴みたいな場所があり、パッと見た感じ、住めそうな場所だ。
「行ってみるか」
俺は再び歩き出した。
「住めるといいな」
そう思いながら森を歩いていくと、目的の洞穴が見つかった。洞穴の入り口は人一人が入れるぐらいの大きさしかなかった。住めるには住めるが、不便な生活になりそうだ。
「でも、仕方ないな」
俺は呟いて、中に入ってみる。中は意外と広く洞穴の中では住めそうだった。奥にいくらでも続いているようだった。ただ、一つ問題があった。
――大きな熊がいた。
熊です。そう、熊。超巨大な熊。三メートルぐらいはあった。えぇ、どうしましょうかね……とか言ってても仕方ない。
「ここには住めないか」
俺は愚痴りながら、洞穴から出ようとした。でも、一歩遅かったらしい。
後ろから異様な殺気がする。思わず後ろを振り向く。
熊がこちらを見ていた。憎悪を滲ました両目で……
「えっ!?」
「グオォオオオ」
それは熊なのかという声で叫び、いきなり攻撃してきた。
「グォォ!」
鋭い爪で、引裂こうとしてくる。間一髪、バックステップで避ける。
危ねぇ! 即死するところだった。
逃げ切る。あの巨体から逃げ切るのは多分簡単……かもしれない。
俺はバックステップで避けながら洞穴の外へ逃げ出そう。そう考えながら、奇跡的にも一撃も当たる事なく逃げ切れそうだ。
が、それは甘かった。
鋭い攻撃を振るってくる。巨体に似合わないスピードだ。後ろにはねながら、入口から光が漏れ出てるのを見つけた。入口までもうすぐだ。
でも、熊は賢かった。
「ガウォオオ!!!」
熊が叫び声をあげながら、腕を振り回す。そして、天井を壊した。
「えぇええええええええ!」
俺は思わず叫ぶ。
ガラガラガラ
岩が落ちてくる。俺は寸前で避けた。あんなのに押しつぶされたら、一生の終わりだ。そう考えながら、必死に逃げ惑っていると、瓦礫で入口が塞がってしまったことに気付いた。
何て最悪なやつだ。瓦礫の山のせいで、俺は逃げ切れなくなった。
「となると、あいつを倒すしかないのか」
呟きながら、不可能だなと考えていた。だって、あの大きさの熊が普通に倒せるとは思えない。
俺に唯一ある攻撃的な手段としたら、【火属性魔術】しかない。
「奥に逃げれば、まだ可能性はある…のか」
俺は少しでも逃げようと巨大な熊が元々いた奥の方に走った。