第四十九話 創造神
一糸纏わぬ姿は非常に目のやりどころに困った。無毛の下半身、立派な双丘。まさに美を体現していた。
「ちょ、服は?」
俺は思わずテンパって声を出してしまう。
「衣服など必要ありません」
そして、胸を張って言う。
「私は羞恥という無駄な思考を持っていないのです」
もう意味がわかんない。何なんだ。この女は……
混乱した俺は思わず、悪魔を睨み付ける。
ゴホンッとわざとらしい咳をして、悪魔は説明した。
「彼女は元、管理者である神であり、現在はその殆どの権限を没収され、魂を世界樹に封印されています。だが、強大な魂のせいで、亡霊として、世界樹の封印を抜け出すことができるのです」
はえー、すごい。神のレベルの封印を抜け出すなんて。
「まぁ、そこまでしても、この巨大迷宮【世界樹】内しか移動できないわけですが」
【【世界樹】とは巨大な迷宮、『アースガルズ』『ヴァナヘイム』『ミズガルズ』『ヨトゥンヘイム』『アールヴヘイム』『スヴァルトアールヴヘイム』『ニダヴェリール』『ムスペルヘイム』『ニブルヘイム』の九つの迷宮から成る超巨大複合迷宮。現在地は『ミズガルズ』】
【叡智】から補足が入った。
元の世界で言うと、確か、【世界樹】って北欧神話だったよな。確か、ミズガルズが人の国だった気がする。まぁ、いいか。
「あなたがこの世界に来る際に干渉したのですが、【理】にばれて、権限レベルを大幅に下げられまして」
うーん。記憶がないけど、そんなこと聞いたような……
「我々、悪魔たちは彼女に魅了されています。昔の世界に戻ってほしいというのが願いです。先程、お前と戦った【姫】もその一人なのです」
あー、そうだったのか。道理で強いわけだ。魔王クラスならそれも当然だな。魔王より上の【神祖】だった気がしたが、まぁ、出鱈目に強かった。暴風之龍王の力を奪った俺なら、戦えるかな?
俺と王女様二人がかりでも苦戦したし、やっぱり、難しいか……
……ん? 何か忘れているんような?
……!
王女様!?
「俺と一緒にいた王女様はどうなった!?」
「うん? お前が去った後、【姫】も撤退したから、多分、自力で帰ったと思われますが?」
一応、確認しておこう。
「【龍眼】」
【龍眼】には沢山の眼に関係する能力が内包さえている。勿論、【千里眼】の能力も内包されている。俺はそれを使って、【透視】も発動させて迷宮内から地上を見る。
「王宮にいるのか……なら大丈夫か」
俺は一安心した。とりあえず、次の質問を悪魔に尋ねる。
「ちなみに彼我の戦力はどうなんだ?」
もし、こちらの味方した時、戦力差が激しいなら、俺も死ぬだけだろう。
「創造の権能を持っているので、相手は理論上、無限の戦力を持っています。だけど、軍にいる【堕天使】の一人が、広範囲殲滅魔術で一掃するから構わないわ」
ふむ。創造の権能ね。どっかで聞いたことがある名前だな。
俺の【特殊技能】の中でも目立っていた名前だな。うん。言わないでおこう。
元、創造神は続ける。
「恐ろしい権能だが、君の【技能奪取】で強奪すれば可能性はある」
「【王権】までは大丈夫かもしれませんが、【権能】クラスは奪えませんよ。たぶん」
一応、【特殊技能】の欄に表示されるが、実際は【王権】よりも上のランクの技能だ。
「大丈夫だ。技能を昇華させればいい」
そう言って、虚空に黒い穴をあけて、中から小さなものを取り出す。
「【美徳と大罪の種】。この世界の中でも屈指の能力、【美徳】と【大罪】へと昇華させるための能力さ」
元、創造神の手には小さな種が二つ置かれていた。




