第三十二話 特訓
久しぶりです。最近忙しくて、更新が全然できませんでした。これからはかなり不定期になると思いますがよろしくお願いします。
「では、聖フラン王国騎士団の訓練に来てくださったこの二人と一緒に訓練を始める」
そう言って、午後の訓練が始まった。
「いやー、久しぶりだね。僕も鍛錬しなきゃだしね」
笑いつつ、アルが手元の剣を振るう。ブンと風切り音が鳴る。
「アルって、剣はできるの?」
「うーん。何となくで振ってるからわかんない」
何となくで剣って使えるのか……覚えておこう。絶対、非常識だろうが……
すると、王国兵の人がひそひそと話しているのが聞こえてきた。
「アル様ってやっぱ異常じゃね」
「今更何を……もうあの人に敵う人って世界に十人もいないだろ」
「確かにそうだが……」
よし。今までの内容を聞かなかったことにしよう。アルが聞いた瞬間、怒りだしそうだ。
「さて、じゃあ、君も剣を練習しなきゃだね。まずは素振りからだね。エクスカリバーを持って、振ってみて」
素振りをしている王国兵たちの姿を見る。縦に一振り、横に一振りというのが一セット。それを繰り返しているように見える。
俺もその動作を真似て、剣を振ってみる。それっぽくなってるだろうか?
縦に一振り。横に一振り。
「うーん。なんか、いまいちな感じがするね。余分な動作が多いね。【技能】ゴリ押しで相手を倒せるけどスマートに倒すのは難しいだろうなー」
とアルから言葉をかけられる。
「ちょっとさ、君こっち来て」
アルが王国兵の一人へ手招きをする。
「ハイッ!」
と勢いよく返事をした後、その王国兵の隣から哀れみの言葉が掛けられる。
「……終わったね」
「なんとか、生きて帰ってくるように頑張るよ」
「まぁ、頑張れ」
短い言葉の掛け合いに深い言葉を感じた。
「じゃあ、君、袈裟に【強漸】を使って、僕に斬りかかってきて」
「わかりました」
王国兵が手に力を込め、【技能】を使う。
「【強漸】!」
素早い斬撃はアルの肩に当たり、切り裂いた……ように思われた。
「甘い。ハッ!」
アルは基本的な斬撃。【技能】を使わずに、相手を肩を斬った。
途端、血が王国兵の肩から流れ出し、地面を紅く染める。アルの剣は血を吸収しているように見えた。
流石にこれ以上の流血は危ないと思ったのか、アルは薬瓶を出して、中の液体を素早く王国兵の肩にかけ、魔術を唱えた。
「【回復】」
すると、緑色の液体が肩を戻していって、何事もなかったかのようにした。
「さぁ、もう行っていいよ」
「ありがとうございます」
そう言って、王国兵は地獄で蜘蛛の糸を見つけたような顔になり、逃げるようにして、その場を離れた。
「取りあえずはあの王国兵を余裕で倒せるレベルにはならないと。まずは基本的な素振りと体力作りをメインに頑張っていこうか」
練習内容は決まった。が、サラサラと紙に書かれていく内容はとことんおかしかった。
素振り千回
訓練場百周
腕立て伏せ五百回
腹筋五百回
背筋五百回
…
「アルってさ、常識はずれとか言われない?」
「皆から言われるよ」
「そっか。そうなんだ。練習内容って書き間違えてない?」
「無いと思うよ。ただ、僕が考えたから変かもしれないけど大丈夫?」
「……うん。明日からそのメニューでいこっか」
「そうだね」
もうどうなってもいいやって考えさえ浮かんでくる。
どうやら地獄が始まるみたいです。




