第三十一話 王女の講義 常識編
「地理は大体、わかったと思うので、次は常識面ですね。まずはお金です」
そういうと、王女は袋から金、銀、銅の硬貨を取り出した。
「聖フラン金貨、聖フラン銀貨、聖フラン銅貨です。王国内では、金貨、銀貨、銅貨と呼ばれていますが、他国で扱う場合は聖フラン金貨と言わなければいけません」
さらに王女は袋から硬貨を取り出す。
「さて、こちらの硬貨が主に帝国で使われている帝国金貨と呼ばれるものです。これも、銀貨、銅貨があります」
取り出された硬貨を比べてみると、違う人が彫られていることに気付いた。王国の方はおじさんで、帝国の方は若い女の人だった。
「これ以上の硬貨もあるのですが、あまり使われないので、省きます」
「質問をいいですか?」
「はい。どうぞ」
「この聖フラン金貨と帝国金貨って、同じ価値を持った硬貨なんですか?」
そう尋ねると、うーんと少し困った顔になる。
「……そうですね。商売の間では、聖フラン金貨を一とした時に、帝国金貨が二とされています。ただ、王国内では、聖フラン硬貨が、帝国内では、帝国硬貨が優遇されています」
「そうなんですか」
「はい」
そして、続ける。
「では、続けましょう。次はステータスについてです。この世界には万物にステータスが宿っています。それは岩でも、草でも、魔獣でも同じことです。【称号】【ランク】【天職】【技能】で基本構築されているステータスですが、中には【種族技能】【特殊技能】【固有技】【固有職】などなど、オリジナルな物もあります」
「じゃあ、僕の【特殊技能】でもそうですね」
「はい。そうです。特に【異界勇者】の【天職】は【固有職】も得られますから、項目が増えることになると思います。他にも隠し項目などもあるとされていますが、現在、どのように見るのかはわかっていません」
「でも、実際、あるとされているということは、見れた人がいるんですよね?」
「えぇ。居るは居るんですが、その方法が奇怪すぎて、誰も試せないんですよ」
「奇怪な方法?」
「なんでも、深夜に森精族の女子と精霊族の長が契約する瞬間に、自分に分析をかけるそうです。意味がわかりません」
……なんなんだ。その意味不明な方法は……
「さて、ある程度のことはわかってきたでしょうか?」
「はい。ただ、文化的なことはまだ全然わかりませんけど……」
「じゃあ、明日、文化と魔術について話しましょうか」
「わかりました」
そう言って、彼女は図書室から出ていった。
「はぁ」
俺は溜息をつく。なんかどっと疲れた。




